冬 その三
入ったのは国道百九十何号。東の山へと向かうコースだ。
平地の海岸線コースもいいけど、やっぱりオレは山が好きだった。
進むにつれて道は上りとなってゆく。雨はしとしとからざーざーになり、ミライースのルーフに雨が当たる音がよくするようになった。
国道百九十何号は、山や峠を越えて進めば東端の海岸線にたどり着き。別の国道となり。そこから南へと進めばぐるりと時計回りのコース取りで帰れるドライブコースを楽しめる。
こないだ雪がないときに、そのコースを走った。高速道路がなく、使わないので比較的お金を掛けずに済むドライブコースでもある。
北へは前にも書いた通り、高速道路がある。使わなくてもいいけど、疲労度がやっぱり違うんだよなあ。お金で疲労の蓄積を避けられると思えば。
それはともかく、雨にけぶる景色も、やっぱりいいもんだ。水墨画的な渋さというか。
車内はエアコンの暖房を効かせている。エアコンを効かせればウィンドウは曇らないが、完全ではない。どうしても端っこが少し曇ったりする。が、それも冬のドライブの風情だと思っている。
もちろん万一に備え曇り止めスプレーは常備している。
ざーざーばたばたとことこ、とことこ。
冬の雨の中をミライースは進む。
県境の四本足トンネル手前のくねくね道を登り、トンネルに入った。
雨音はやむ。
県境のお地蔵さんをちらっと眺め、隣県に入り。トンネル出口の明かりが見えてきた。
……が。
「ええ?」
トンネルから出て、オレは驚かされた。
トンネルを出たオレを出迎えてくれたのは、オレの県とは打って変わっての雪景色。
空は白く、しんしんと雪が降る。
静かだ。
さっきまで屋根をたたく雨音を耳にしていたのに。オレはトンネルを通じて異世界に飛ばされたのか? などと一瞬考えてしまった。
しかし、見覚えのあるなじみの道、山、空。それらが白くおしろいを塗ったように化粧をし。
しんしんと雪が降る。
トンネルを出てすぐの左側に脇道がある。その脇道でミライースをUターンさせ。トンネルに戻り、オレの県に出てみる。
ざーざーばたばたと、屋根をたたく雨の音。
待避所でまたUターンし、トンネルを通る。
出てみれば、しんしんと静かな雪景色。
「こんなことがあるのか」
初めてのことに、オレは驚かされまくりだ。同時に、この変わりようが好もしく思えた。
こういうサプライズがあるから、ドライブはやめられない。
とはいえ……。さらに進みたいところではあるが、道路は完全に雪が積もって、ノーマルタイヤでは危ない。
凍結だってしていそうだ。
「こんなことがあるんだなあ~」
オレはこの先から進むことをあきらめて。脇道の少し広いところにミライースを停めて、缶コーヒーをすすりながら、しばらくのんびり雪景色を眺めていた。
おわり




