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秋 その九

 とはいえ、山の上のくねくね道も、もうそろそろ走れなくなる。

 山の上は雪が積もる。オレの住む地方は比較的温暖とはいえ、冬はしっかり寒い。標高の高いところはなおさらだ。雪も積もる。

 だから、山の上の道は冬季は通行止めとなる。

 岩槌山の天空の道も、今年行けるのは今日が最後だろう。

 まあ、雪の積もった冬山で通行止めになっていようがお構いないガチなドライバーやバイカーもいるが。

 オレはそこまでガチじゃないから、おとなしく冬眠して、春を待つ。

 

 それとは別の日。

 オレとミライースはある山中の、ダム湖沿いの道を走っていた。大きなダム湖で、そのダム湖沿いの県道を一周するドライブをしてた。

 ある平日の昼下がり。晴れの日。

 ダム湖沿いの道は県道だが、センターラインのない狭いくねくね道だった。ただダム湖沿いの集落と集落をつなぐ生活道でもあるので、整備はされ走りやすかった。

 ところどころにダム湖の上をまたぐ鉄橋もあり、見晴らしよく陽光に照らされ輝くダム湖を眺められる。

 そんな道をミライースでとことこ走らせていた。

 というとき。

 この世のものとも思えない轟音が鳴り響いた。

 くうどころかこの世そのものが激しく轟音をがなり立て。まるで山崩れでも起こっているかのようなほど、それはひどく何もかもを揺らした。

 何事だと車を停めて、ドアを開け社外に出れば。

「!!」

 あろうことか、ジェット戦闘機のどてっぱらが頭上に見えるじゃないか。

 ジェット戦闘機は轟音をがなり立て、どてっぱらを見せたかと思えば。急上昇して、あっというまに見えなくなっていった。

 オレは時が止まったかのように茫然と、魂が抜けたようになっていた。

「……」

 オレはめちゃくちゃ複雑な気持ちになって、眉をひそめた。

 もしこれが戦争だったらオレはとうに死んでいたんだ。

 訓練飛行なのはわかっていたが、それにしても低空すぎやしなかったか。もし操作ミスによるものだったら。そして、そのまま墜落をしていたら。

 オレは巻き込まれて、死んでいたかもしれない……。

「馬鹿野郎」

 オレはひとりごちながら車内に戻って、再発進させた。

 ぶるっと身体が震えた。

 思った以上にビビってた。

 このことに対し、謝罪をしてくれる軍関係者もいるんだろうが。それでもやっぱりめちゃくちゃ複雑な気持ちだった。

 山を彩る紅葉も、心を慰めることはならず。

 どうにも複雑な気持ちになって興覚めしたオレは、Uターンして、ダム湖沿いの道一周をせずに帰ることにしたのだった……。


秋 おわり

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