表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽善者は宴に酔いしれる  作者: 星胤ヒカル
第淕章 運命と人生を包括し支える虹色の糸
PR
36/36

移し顔の仮面を被った欺瞞の異端児



 宮島(みやじま)政哉(まさや)は我が耳を思わず疑った。政哉の知る限り、佐野(さの)雄輝(ゆうき)はこんな発言をするなどとは思えない人物だった。驚きを隠せないまま玄関に突っ立っていると、中から1人の男性が出てきた。年齢は40歳前後だろうか。身なりや仕草が高級感を感じさせるが、負のオーラは隠し切れていない様子である。政哉の顔を見ると罰が悪そうにそそくさと去っていった。




「まだいんのか!?さっさと帰れ…と…」




 続くように雄輝が出てきた。普段は飄々とした態度を崩さない彼とは似ても似つかぬ雰囲気に、政哉は思わず圧倒される。

 が、雄輝はそこにいるのが政哉であると気づくと、しまった、とでも言うような表情となった。そして少し無言の間が生まれる。話を切り出したのは政哉だった。




「今日休んだだろ、ほれプリント」




 そう言ってプリントが複数枚入ったクリアファイルを手渡す。雄輝は




「あ、ありがとな」




 と言い受け取った。少しぎこちない。が、雄輝は深呼吸すると政哉に言った。





「ごめんな、あんなとこ見せて」




「いや、まあ…こっちこそすまん」




「なんで政哉が謝るんだよ」





 雄輝の知らない一面を知ったことに対する、罪悪感というか何というか、とにかく複雑な感情が政哉を巡り巡る。

 再び沈黙が訪れる。それを打ち破ったのは政哉でも雄輝でも無かった。




「あらあら、政哉君じゃないかい。中でお菓子でも食べたくかい?」



 雄輝の後ろから出てきた雄輝の祖母…八重(やえ)によってその場は収束した。





 政哉は雄輝と共に居間に通され、机の前に座らされた。八重はお菓子とお茶を持ってくると、開口一番こう言った。




「雄輝や、例の話のこと、政哉君にも話してなかったのかい」




 雄輝は何も反応しない。が、無言を是と受け取った八重は語り続ける。




「あんな場所を見られちゃもう黙っていられないだろうに。雄輝が言わないならおばあちゃんから説明するよ」




「…!」




 雄輝は複雑な表情をしながら八重の方を向く。すると雄輝はとうとうその重い口を開いた。






「いや、俺から説明する」






 雄輝は確かにそう言った。




「そうかい、じゃあ邪魔者は失礼するよ」



 八重はそう言うと立ち上がり、他の部屋へ行ってしまった。八重がいなくなると雄輝は恐る恐る口にした。




「政哉、俺が両親と揉めてるって話はしたよな?」




「だいぶ前に、な」




「さっき政哉が見たのが俺の父親だよ」




 政哉はさっき玄関で見た男性を思い浮かべる。何処となく飄々として明るい雄輝とは対照的な、どこまでも生真面目で厳格な人物、という印象を受けた。




「俺の父親はとある高貴な家で執事として働いているんだ。その家と俺の家は代々続く当主と補佐役の家柄らしくてさ、俺にもその道を絶やさぬよう厳しく言ってきたんだ」




「…まさか、揉めてるってことは」





「まあ、俺がやりたくないってことだ」





 一族の当主にされそうな政哉とは似て異なる、複雑な運命の糸が垣間見えようとしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ