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偽善者は宴に酔いしれる  作者: ホシタネ
第弍章 翼の堕ちた天使の手を取り巡る
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亀裂走る裏で暗躍する影


 一体、どういうことだ。驚きで、口をパクパクさせることしか出来なかった。


「ど、どういうことだよ!説明、説明!」


 先に口を開いたのは、意外なことに雄輝だった。詳細の説明を室長・山江敬人に求める。


「それが…」


 敬人が言おうとした、その時。


 渦中にいる百合奈が来た。全員の視線が一直線に同じ方向を向く。一斉に見つめられ若干怯えた表情を見せた百合奈だったが、間もなく深呼吸をすると、一言。


「…さよなら」


 そう言うと廊下を走り去ってしまった。ほとんどの生徒がポカーンと口を開けていた。俺もまた、そうするしかなかった。無言の時間が過ぎていく。


 沈黙を破ったのは、敬人だった。


「…説明するぞ」


 それが合図であったかのように全員が敬人に視線を向ける。


「俺が学校に来て職員室の近くを通った時だ。偶然聞こえたんだよ。砂川さんが、南条先生に退学したいって言ってるのを」


 南条先生と言うのは、このクラスの担任の女の先生だ。非常勤でも無いのにずっと同じ学年を持っていて、不思議がられている。個人的見解ではあるけど、飴と鞭を巧妙に使い分けることが出来る人だ。


「南条先生も止めようとしてたみたいなんだ。これからの展望とかしつこく聞いて、なんとか思いとどまらせようとしていたみたいだった。けど、結局最後は本当に良いんですね?って聞いてたから、これはヤバいと思って慌てて言いに来たんだ」


 …まさか。俺が原因だろうか。俺に本心をぶちまけたから、合わせる顔が無いのではないか。或いは、俺にそのことを公開されると思ったのだろうか。


「やっぱり俺は…」


 どうしようもないクズだ、と自認した。



 どうしよう、と思った。何故こんなことをしたんだろう。

 百合奈は誰もいない廊下にいた。移動教室へ繋がる場所だから、普段はほぼ人のいない場所だ。


 百合奈は後悔していた。南条先生にあんなことを言ったのを。

 南条先生に言った時は、それで良いと思っていた。何故なら、それが自分と彼にとって良いことだと思ったからだ。だが、


「政哉…」


 いざ彼を見た時、全てを後悔した。理由はわからないが、彼と会えなくなるという事を自覚した瞬間、途方もない絶望感に包まれたのだ。思わず逃げ出してしまった。何故だろうか。百合奈は分からなかった。


「うう…」


 百合奈は泣いていた。何故泣いているのか自分で理解していなかった。何故心臓がさっきからバクバクするのだろうか。これは一体…。


「何をしているの」

「ひゃ!?」


 思わず変な声を出して、慌てて声のした方を向くと、南条先生がいた。


「…だから言ったでしょ。後悔するって」


 百合奈は何も言えなかった。


「退学は取り消し。と言うか、書類の準備してなかったけど。取り敢えず


宮島に謝って来なさい」


「…え?」


 百合奈は困惑していた。何故そんなことを…。


「…砂川、この学校だって監視カメラくらい付いてるわよ。宮島に打ち上げてたところ、バッチリ映ってたわ。まあ、私が見た後消したけど」


 先生は、気づいていたんだ。だから、後悔すると警告していた。


「行きなさい。貴方が立ち直る最後のチャンスよ」


 私は立ち上がって、先生に言った。


「私は…

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― 新着の感想 ―
[良い点] 百合奈、泣いてる場合じゃないよ!頑張れ!٩(* ゜Д゜)و
[良い点] 一話一話がコンパクトに纏っているのでとても読みやすいです。 それに各話が続きが読みたくなるような締め方をされているので、次へ次へとページを進めてしまうのもこの作品の強みだなと思いました。 …
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