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[現代語訳]夢酔独言  作者: 雪邑基
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十二歳のころ

 十二になった年、兄貴(注1)の世話で学問をはじめた。

 手始めに林大学頭(注2)の所に連れて行かれ、そこで聖堂の寄宿部屋(注3)で学ぶ保木巳之吉と佐野郡左衛門というきもいりを紹介された。

大学(注4)を教えて貰ったのだが、学問は嫌いだから毎日毎日さくらの馬場(注5)への垣根をくぐり、馬にばかり乗っていた。すると当然大学の五、六枚も覚えやしない。両人が匙を投げて教えるのを断ってきたので、嬉しかった。


 馬にばかり乗っているから、しまいには銭がなくなって困った。おふくろの小遣いや蓄えていた金を盗んで使った。


 兄貴が御代官を勤めるとなって、信州へ五年間つめきりとなった。だが三年目にご機嫌窺いで江戸へやってきた時、おれが馬ばかりにかかりきりで銭金を使ったのを知って、馬の稽古はやめさせるために先生にも断りの手紙をやった。

 その上でおれをひどくしかって、禁足(注6)しろと言いおった。それから当分は兄貴が家にいたが、実にこまったよ。


【注釈】

注1 … 男谷彦四郎(1777~1840年)のことだと思われる。

注2 … 林羅山(1583~1658年)にはじまる江戸時代の儒学・朱子学者の最高学府、昌平学問所の長官。林家が世襲。

注3 … 儒学の始祖である孔子を祀った湯島の堂。徳川幕府直轄の学問所である昌平学問所があり、多くの優秀な学生が学んだ。

注4 … 儒学の経書の一つ。

注5 … 湯島の聖堂に隣接する馬場。

注6 … 外出を禁止すること。


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