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十三歳のころ
十三の年の秋、やっと兄が信州へ帰ったから、また外へ出歩いてのらくらできるようになった。
とにかくばばあ殿がやかましくって、おれの面を見るたびに小言をいいおるから、さすがにへきへきする。仕方ないので知恵を借りようと兄嫁に話すと、気の毒に思って親父に話してくれた。
そこで親父がばばあ殿に、
「小吉もだんだんと大人になる。小身者(注1)は煮炊きも自身で出来んとやっていけないから、今後は小吉が食う物などは本人のしたいようにさせてやってくれ」
と言ってくれた。
それからばばあ殿はおれのことは構わず、毎日自身の煮焼きをするようになった。だが、醤油に水を入れておくやら、様々なことをやらしてくれるようになり、心持ちが悪くてならなかった。
よそから菓子だとかをもらっても、おれには隠してくれない。おれが着物の一つもこしらえると、世間中にあることないこと吹聴する。おれの悪口ばかり言い散らすから、腹が立ってならなかった。
親父に言ってもおればかりしかるし、こんなにこまったことはなかったな。
【注釈】
注1 … 給金の少ない者。




