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悔悟・教訓
男たる者は、決しておれの真似をしないがいい。
孫や曽孫が出来たなら、よくよくこの書物を見せて、身の戒めにするがいい。今はこんな事を書くのも気恥ずかしい。
これというのも、無学で物を書けるでもなく、二十あまりになってようやく手前の小用が出来る程度しかしてこなかった事にある。
良い友達はなく、悪友ばかりと交わったから、良い事には少しも気づかない。だからこのような法外な事を英雄豪傑のようだなどと勘違いした。
そんな心得違いをした者だから、親類・父母・妻子に至るまで幾ら苦労をかけたか知れぬ。
肝心の旦那様へは不忠の至極にあり、頭取様へも普段から敵対した。そんなだからとうとう今の如くの身になった。
幸いに息子は良く孝行の道を行ってくれて、また娘もよく支えてくれる。
女房がおれに背かないから満足で、今年まで無難に過ごしたのだ。
人の倫理の道、かつは君父に仕える事。諸親類をむつみまたは妻子下人への仁愛への道。
四十二になって始めて、それらの道の入り口に立ったら、これまでの所業が恐ろしくなった。
よく読んで、よく味わうべし。
子々孫々まで、あなかしこ(注1)。
干時天保十四年寅年初冬 於鶯谷書ス
夢酔道人
【注釈】
注1 … 文末の文言。謹んで親愛を表すの意。




