第14話 再会そして新たな出会い(前編)
本当に長い時間更新止めてしまい申し訳ないです。
毎日更新されている皆さんに敬意を賞します。
新府城で父と別れておよそ二月。ようやく目標の地にたどり着いた。
転生してまた即死を避けるために、そして武田の血を残す為にひたすら北へやってきた。目の前には虎哉和尚がいるであろう資福寺が見えてる。そしてその先には米沢城も見える。
ただ、このまま資福寺に信勝が行っても、気づいてもらえる自信は無い。信勝は16歳である。虎哉和尚が甲斐を離れ奥州に向かったのは10年前。何度も勉強の為、恵林寺に快川和尚の元に通い、その弟子である虎哉和尚にも相手してもらったとはいえ、6歳の面影を16歳の信勝を見て思い出してくれるなんて甘い見通しである。
一方、一緒にここまで来てくれた土屋昌恒は26歳。何度か信勝を連れて恵林寺に来て、虎哉和尚とも面識があった。16歳が26歳なら思い出してくれそうだ。
「マサ、先に寺に入り、虎哉和尚に思い出して貰いそのあと、俺を呼び出せ」
「はっ」
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正直困った。虎哉和尚と会ったのは両手があれば足りるような回数しかない。
回数だけなら信勝様には敵わない。ただ、6歳の幼い顔しか和尚の記憶には残ってないはず。やはり一縷望みを掛けるしかないのだろう。
「どちら様でしょうか」
「私、甲斐の武田家遺臣の土屋昌恒と申す。快川和尚にお世話になり、また虎哉和尚にも恵林寺でお世話になりました。お会いしたくもう1名と米沢まで参りました。何卒、お取り次ぎをお願い致す」
「分かりました。虎哉和尚に用件を伝えてまいります」
昌恒は、寺の小坊主に用件を伝えた。もし、警戒して武装した僧兵や伊達の兵士が斬りかかって来たらそれまでだ。信勝様が逃げる時間を稼ぐしか手はない。
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「和尚、甲斐の恵林寺でお世話になったと、武田の遺臣を名乗る者が見えられております。如何いたしましょうか」
小坊主から声を掛けられびっくりした。と同時にその言葉を疑った。甲斐からわざわざ来たのは何故か。そもそも武田家滅亡に際して、いま生きているということは武田家を裏切った者かもしれない。そんな奴を匿うなど有り得ない。ただ、快川和尚の最期について話を聞けるかもしれないという思いが虎哉宗乙の中で渦巻いた。
「小十郎。一緒に来て頂けますか」
「若っ」
「わしはここで大人しく書を読んでいるので、虎哉和尚の護衛につきなさい」
「はっ」
虎哉宗乙は、片倉小十郎と共に境内で待っているという武田の遺臣の元に向かった。
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「虎哉和尚、ご無沙汰にしております。恵林寺では信勝様と共にお会い致しました土屋昌恒にございます」
虎哉宗乙は思い出した。10年ほど前、師である快川招喜は長年武田家の嫡子達の教育係も長年務めており、勝頼殿から嫡男信勝の教育も頼まれていた。
恵林寺には幼い信勝とその警護も兼ねて一緒に来ていた若武者が幾名かいたが、その中の1人が目の前にいる土屋昌恒であった。当時は10代半ばであどけなさも残っていたが、10年の時を経て立派な武士となっていた。
「思い出したぞ。土屋昌恒殿。しかし、何故この地に参られた」
この地に今居るということは武田家と命運を共にしなかったという事である。武田家を裏切ったなら、帰って頂くかこの場で命を奪わなければならない。
「私も勝頼様と命運を共にしたかったのですが、もっと大切な任を受け、生き恥を晒しております」
「その任とは」
「それをお話するには人払いをお願いしたい」
「うむ。分かり申した。されど、私の後ろに立つは伊達輝宗様の嫡男伊達政宗様の傅役である片倉小十郎殿だ。この者以外は人払いさせて貰う」
「それで構いません」
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周囲から人が去り、虎哉が口を開こうとした瞬間だった。
「では、私も1人呼びたい。しばし待って頂きたい」
「わかりました」
昌恒は信勝の元に戻った。
「していかがだった?」
「虎哉和尚には私のことを思い出して頂きましたが、信勝様を思い出して貰えるかは自信がございませぬ」
「なるほどそうであったか。やはり父から頂いたこの書を持っていくしか無いであろうな」
信勝はあの日、勝頼より預かった書を持ち、境内に向かった。
長くなりそうなのでここで一旦切り、後編をなるべく早く書きます。




