閑話その2 家康、岡谷城にて
色々時間取れず申し訳ないです。
信長の甲州征伐に呼応し、浜松から軍を動かして駿河を手中に収め甲斐に侵入しようとしたところで武田家は天目山で散った。正直言えばもう少し領土を広げたかったという思いもあるが、大きな犠牲なく駿河を手中に入れたのは大きかった。
正直言えば親類を裏切るなど個人的には好かん部分はあるのだが、徳川家に従い武田家に精神的に大きな打撃を与えた穴山梅雪を従えて今後の話と御礼を申し上げるために諏訪に向かっていた。
「梅雪、貴殿は諏訪の土地に明るいだろう。今より信長殿や信忠殿と話をしてくる。その間、手勢で周囲よりそれを邪魔する者が現れぬように見張っておれ」
「はっ。ただ私も本領安堵のお礼と武田家当主を名乗る許可を頂きたく信長殿にお目通りしたいのですが」
「うむ。次回機会を持てるように話をしておこう。ただ、今回は今後の東国への対応を話すので、その時間は作れぬ」
「致し方ありませぬ。今回はしっかりと警備いたします」
「頼んだぞ」
家康は梅雪と別れ、翌日の会談に備えて岡谷城に入った。そこには護衛も兼ねている服部正成が既に入っていた。家康が梅雪といるときにも周囲では服部正成の配下の者が見守っていた。
「して、信長殿は」
「本日は諏訪大社にてお休みになられるとの事。明日、殿や信長殿の家臣も上原城に来るようにとのこと。おそらくそこで今回の甲州征伐に対する領土割譲などの評定があるとの事。その晩に諏訪大社に来て頂き労をねぎらいたいと使者が申しておりました」
「使者に見えたのは誰であったか」
「森成利(蘭丸)殿にございます」
「森殿は明日の夜、諏訪大社で我のねぎらいの担当をされるのか」
「いえ、何でも明日の評定で森長可殿に信濃川中島に新たに領が与えられるとの事で、信長殿から兄弟でゆっくりと時間を過ごすようにと言われたので評定後、他の弟たちと川中島に向かわれるそうです。その代わりに明日の仕切りは明智殿がされるとの事」
「明智殿ならぬかりないだろう」
家康は正成と酒を酌み交わした。
「やはり駿河一国かの。何とか南信濃は頂きたかったが」
「いえ、現在の最前線である甲信と尾張、美濃との交通路の一部を当家に握られるのは信長殿も良い顔はされないでしょうな」
「だろうな」
暫く取り留めない会話が続いた。
「信長殿も今回の武田信勝失踪には頭を抱えているようだの」
「服部の手の者を使い行方を探りましたが、なかなか分かりませぬ」
「甲斐の民にもかなり知れ渡ってしまったようだの」
「武田の旧臣から漏れてしまい、恵林寺焼き討ちで甲斐で織田家への求心も損ないましたからな」
「しかし、武田勝頼は息子を逃がすことが出来たのか・・・」
「殿・・・」
「ダメだな、考えないようにしてるが信康とついつい重ねてしまうな」
「申し訳ありません」
「いや、正成を責めてる訳ではない」
数年前、信長より家康の嫡男である信康は武田家との内通を疑われ、その結果家康は信康を手に掛けなければならなくなり、信康は自刃した。その時介錯をしたのが服部正成であった。
その時、部屋の外から声が掛かった。
「殿、信忠様がお見えになってます」




