思ひ出の懐中時計
上着が濡れてしまったため、滑稽な格好で韓国を放浪するという羞恥プレイを行っている訳だ。
今回の旅の為に10万円を貰ったんだが、現在92万ウォンが余っている。
俺の足は何故なのか、すぐそこの服屋へと向かっていた。
店に入ると多種多様な服が並んでいた。
見た感じメンズのコーナーへいくと黒のジャケットと青いシャツの活かしたコンビを見つけた。
一目惚れだ。
16万500ウォンでその活けてる服を買うことにした。
買い物を終え、駅へ向かった。
するとそこには、あの時の女性がいた。何故か嬉しかった。
向こうはこちらに気づいてない様だ。
今度こそはまともな服で・・・
そう思い、彼女の元へ向かった。
残り2mのところで大柄な何かに吹き飛ばされ、彼女の足元へダイブしてしまった。
ピンク色と肌色の絶景が見える。
やっちまった、今度こそ嫌われただろう。
そう思っていたが、彼女の優しい笑顔に救われた。
立ち上がって横を向く、肥えたアジア系の男性がゆっくり改札に走っていた。
心の中で『ありがとう』を呟く。
改札を潜り、4両編成の電車に乗車した。
4両目が空いており、向かい合ってる二人席に並んで座った。
向かいの席の通路側には文学少女のような学生(?)が本を何冊も抱え、そのうち一冊を読んでいた。
窓側にはお婆さんがちょこんと座っている。
そして俺の隣にはあの娘が・・・
まてよ、この空間は俺以外が女性ではないか・・・つまり、これはハーレム状態!!
などと見知らぬ文学少女やお婆さんを巻き込んだ想像をしてると、電車が出発した。
やがて・・・いや、直ぐに目のやり場に困った。
回りは女性だらけだ、どこを見てても不審者に見えるんじゃ・・・
などと思っていると、お婆さんが懐中時計を握りしめているのに気付いた。
俺にとって懐中時計は、妹との唯一の思いでの品だ。
懐中時計を懐かしそうに眺めていると、例のあの娘が喋りかけてきた。
「あの、自己紹介がまだでしたよね?私、『坂牧 綾』っていいます。どうかなされたんですか?」
俺は視線を彼女の方へと向けた。
「俺には妹がいたんだ・・・が、もう何処に居るのか・・・生きてるのかさえ分からないんだ。」
段々と視線がさがっていった。
「此はその妹との写真が入った、大事な時計なんだ。」
そう言いながらポケットから懐中時計を取り出した。
「その思い・・・痛いくらい分かります。」
そう述べた彼女の顔を見ると、どこかもの悲しそうだった。
すると彼女が立ち上がった。
「すいません、少々お手洗いに」
そう言って後ろの個室のて洗い場に向かっていった。
気まずい話をしたなと思い、自分の発言を振り返ると彼女の質問に合った返答をしていないことに気付いた。
「引きこもりがでたな」と1人恥じていると、
前の車両から、頭の天辺から爪先まで武装した兵隊がはいってきた。
その手には、6kh2銃剣をつけた『AK-47 II型』が。
こいつは、1949年にソ連が正式採用した自動小銃だ。
ミハイル・カラシニコフが設計したこの『AK-47』は全世界に普及し、『世界で最も多く使われた軍用銃』としてギネス世界記録に登録されたことで有名だ。
だが、なぜこんなところにAKなんて・・・
そう思っているとその男は急に天井に銃を乱射した。
パラパラと鉄屑の小雨が降ると同時に、乗客の顔が強ばる。
「Freeze!」
そう叫ぶ男の腰にはM92とダガーナイフが。
M92はイタリアのピエトロベレッタが作った、これまた有名な拳銃だ。
こんなに有名な装備でテロ行為を行うようだ。
覆面を被っているので顔は見えないが、ぎこちない英語からアメリカ系ではなさそうだ。
そんな事を思っていると此方に歩いてきた。
こんなに恐怖を覚えたのは久しぶりだ、手足が震えている。
その恐怖を圧し殺すかのように思い出の懐中時計を握りしめる。
そんな俺の横をテロリストが通過した時だった、目の前の文学少女が持っていた大量の本を落としたのだ。
テロリストはその音に反応して少女に銃を向けて近寄ってきた。
そしてこう呟いたのだ「Goodbye.」




