私の初めて
スケルトンが剣を振り上げる。狙いは、転んだまま立ち上がれない仲間だった。
誰もが、その死を確信した瞬間――
ひとつの影が、すっと割り込んだ。
「ニア!」
男の叫びが響く。
次の瞬間、剣が振り下ろされる。
肉が裂ける鈍い音。刃は少女の左肩から斜めに食い込み、そのまま容赦なく切り裂いた。鮮血が飛び散り、少女の体は力なく地面へ崩れ落ちる。
「よくも!」
助けられた男、ルークが剣を構え、スケルトンへと踏み込む。怒りに任せた一撃で、骨の体を叩き砕いた。砕けた骨が地面に散らばり、戦いはあっけなく終わる。
「……ニア?」
倒れたままの少女は、ぴくりとも動かない。仲間たちの間に、張り詰めた空気が流れる。
――数秒。
やがて、ニアの体を淡い光が包み込んだ。傷口がゆっくりと塞がっていく。
そして、少女は勢いよく上体を起こした。
「ぷはーっ!……あぁ、死ぬかと思った!」
「ニア……!」
ルークが駆け寄る。
「ごめんな、俺が弱いばっかりに……また、お前にこんなことさせて」
悔しそうに、拳を握りしめる。
ニアは軽く肩を回しながら、何でもないように笑った。
「いいよ別に。私、死んでも生き返るの知ってるでしょ?こんなことでしか役に立てないし」
「でも……辛いだろ」
男の声は、さっきより少しだけ弱かった。ニアは一瞬だけ言葉を止める。
それから、いつもの調子で笑った。
「慣れてるから平気だよ」
「よし!今日はここまでにしよう。」
このパーティのリーダー、カイルが手を叩いて合図した。
それからはギルドに帰って、ドロップアイテムの交換をし、酒場で夕食をとりそれぞれの自室へと向かった。自室の扉を開けようとした時、ルークに声をかけられた。
「今日は改めてありがとう!次はお前を守れるくらい強くなるから!」
「うん、ありがとう次は守ってね」
挨拶を交わし、自室の扉を閉め鍵をかける
「……はぁぁぁ……さいっこぉぉ」
深く、長い息が漏れた。
そのままベッドに倒れ込む。
―――――――――――――――――――――
視界の端でスケルトンが倒れたルーク目掛けて剣を振り上げている。
チャンス到来!何の迷いもなく私はルークとスケルトンの間に割って入った。
「ニア!」
後ろからルークが私の名前を叫んでいる。束の間、スケルトンが剣を振り下ろした。私の肩から腰までが切り裂かれ鮮血が吹き出す。立っていることができなくなり、その場に倒れ込んだ。
痛い痛い痛い痛い。言葉にならない激痛が全身を襲う。だがそれも少しの辛抱だ。徐々に脳がその痛みに耐えるようにアドレナリンを生成していく。
それも、ほんの一瞬。
脳が、勝手に反応していく。
痛みを塗り潰すように、別の感覚が広がる。
(……きた)
さっきまで確かにあった“痛み”が、
ゆっくりと、快楽に変わっていく。
血が止まらない。どんどん広がって、体の下を満たしていく。暖かい、まるで、お風呂みたいに。
(あぁ……)
意識が霞む。体はもう動かない。
それでも、内側だけはどんどん満たされていく。
まだ足りない。
こんなものじゃない。
もっと深く。
もっと強く。
(あと少し……)
呼吸が止まる。
心臓の鼓動が、弱くなる。
トクン――
トクン――
……トクン。
視界が、完全に閉ざされる。
そして。
最後の鼓動が、途切れたその瞬間――
全てが、一気に押し寄せる。
「エクスタシーーーーー!!!」
これ以上ないほど満たされて私は死んだのだった。




