【第1話 女神様、俺のチート能力に致命的な欠陥があります】
俺の人生は、トラックに轢かれて終わった。
正確には、トラックに轢かれそうになった子どもを助けて、代わりに轢かれた。
目を覚ますと、目の前には金髪の女神がいた。
「ようこそ、死後の世界へ!」
「……俺、死んだんですか?」
「はい! 残念ながら!」
「言い方が軽い!」
女神によると、俺は人助けをして死んだため、特別に異世界へ転生できるらしい。しかも、好きな能力を一つもらえるという。
「能力の名前は『覚醒』! 絶体絶命のとき、限界を超えた力を発揮するわ!」
「それ、めちゃくちゃ強くないですか?」
「もちろん! ただし、一日一回しか使えません」
「まあ、一回でも十分です」
「それから、使い終わると身体が二歳から四歳くらいまで幼児化します。精神も三歳児程度に退行します」
「……はい?」
「泣き虫になったり、甘えん坊になったり、記憶が曖昧になったりします!」
「返品させろおおおおお!」
俺の叫びは虚しく響いた。
次の瞬間、俺は異世界の森に立っていた。
名前は神崎レン(かみさき れん)。十七歳。
そして、異世界生活初日。
俺は巨大な狼に襲われている少女を発見した。
「誰か、助けて!」
少女の声を聞いた瞬間、俺の身体は動いていた。
狼が飛びかかる。
俺は少女をかばい、覚醒を発動した。
身体の奥から力が溢れる。狼の動きが遅く見えた。
「うおおおおおお!」
拳を叩き込むと、狼は吹き飛んだ。
勝った。
異世界初戦、勝利。
俺は勝利の余韻に浸ろうとした。
《覚醒、終了》
力が消えた。
視界が低くなった。
手が小さくなった。
「……あれ?」
服がぶかぶかになり、言葉がうまく出なくなる。
頭の中から難しい考えが消えていく。
怖い。
知らない場所。
知らない音。
目の前には倒れた狼。
「ふえええええええん!」
俺は泣いた。
そこへ、栗色の髪の少女が駆け寄ってきた。
「大丈夫!? って、えっ、赤ちゃん!?」
少女は俺を抱き上げた。
「よしよし。もう大丈夫よ」
温かい腕に抱かれ、俺は少女の服をぎゅっと掴んだ。
「……まま」
「えっ!? 私はお母さんじゃないわよ!?」
こうして俺は、異世界最初の日に最強の力を手に入れ、同時に人生最大の恥をかいた。
少女の名前はミナ。
俺の冒険は、彼女との出会いから始まった。
2話、すぐ書きます




