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『俺だけが知っているこの世界の「あらすじ」~モブ志望の俺は、神(作者)の死亡フラグをへし折る~』  作者:
王都激震!狙われた王女と……モブの俺

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『商品』のお披露目と究極の責任転嫁


俺が王城の執務室に戻った時、そこにはアリシアだけでなく、騎士団長をはじめとする国の重鎮たちが集結し、緊迫した空気に包まれていた。俺の帰りを待ち、スタンピード対策会議を開く寸前だったのだろう。

全員の視線が、俺に集中する。

俺は、そんな視線をものともせず、堂々と部屋の中央に進み出た。そして、俺の後ろに、おずおずとついてこさせていた『それ』を、皆の前に押し出した。

「――斥候任務、ただいま完了いたしました。アリシア殿下」

俺の背後から姿を現したのは、例の角と翼を持つ、魔族の少女。俺の脅迫じみた契約書に、半ばヤケクソでサインさせられた、俺の新たな『商品』だ。

部屋中が、息を呑む音で満たされる。

「ま、魔族だと!?」

「なぜ、王城にそのような穢れたものを!」

騎士たちが、一斉に剣に手をかける。

だが、それを制したのは、意外にもアリシアだった。彼女は驚きながらも、その瞳に強い興味の色を浮かべて、俺と少女を交互に見ている。

「……ミナセ。これは、どういうことだ。説明せよ」

「はっ。こちら、道中で『保護』いたしました、俺の『商品』にございます」

「……商品?」

アリシアの眉が、怪訝そうにひそめられる。

俺は、懐からスタンピードの証拠として持ち帰った『魔石のかけら』を数個、机の上に並べた。

「まず、ご報告を。予言通り、迷宮の魔石は活性化しておりました。スタンピードの発生は、もはや避けられません。放置すれば、王都は三日で壊滅するでしょう」

その言葉に、重鎮たちがゴクリと喉を鳴らす。

俺は、そこで一呼吸置くと、衝撃的な事実を、さも当然のように告げた。

「ですが、ご安心を。対策は、すでに俺が済ませておきました」

「……何?」

「来るべきスタンピードに備え、敵戦力を大幅に削っておきました。具体的に言うと、迷宮の奥でスタンピードを率いるはずだったボスキャラや、厄介な中ボス級の魔物は、俺の独断で、あらかた『掃除』しておきました。なので、実際に地上に溢れ出してくるのは、ゴブリンやコボルトといった、騎士団の方々の訓練にもならないような、雑魚ばかりです」

シーン……。

執務室は、先ほどとは比べ物にならないほどの静寂に包まれた。

全員が、俺が何を言っているのか理解できず、完全に思考を停止させている。

やがて、騎士団長が我に返り、わなわなと震えながら叫んだ。

「き、貴様! それがどれほど危険な行為か、分かっているのか! 一歩間違えば、スタンピードの発生を早め、王都を危険に晒していたやもしれんのだぞ!」

「ええ、分かっていますとも。だからこそ、俺は危険を冒したのです」

俺は、悲壮感と自己犠牲の精神に満ちた、完璧な役者の顔で言い放った。

「スタンピードで、民が、兵士が、一人でも死ぬのは耐えられない。だから、俺は、俺一人の命を危険に晒し、敵の大将を討ち取ったのです! これも全て、王都を、アリシア殿下をお守りするため……!」

俺の熱弁に、何人かの騎士が「おお……」と感銘を受けたような声を漏らす。馬鹿な奴らだ。

だが、俺の本当の狙いは、ここからだ。

俺は、おずおずと俺の服の裾を掴んでいる魔族の少女の頭に、ポン、と優しく手を置いた。

「しかし、その結果、見ての通り、俺は貧乏になってしまいました」

「……は?」

話の急展開に、アリシアが素っ頓狂な声を上げる。

「ボスを倒すために、俺は、なけなしの財産をはたいて購入した、高価な爆薬や、先祖代々伝わる秘伝の毒を、全て使い果たしてしまったのです! おかげで、俺の財布はスッカラカン! 明日のパンを買う金もない! これでは、ルナと二人、路頭に迷ってしまいます!」

俺は、涙ながらに(もちろん演技だ)窮状を訴える。

「だから! 俺は、この魔族の子を売って、金に換えるしかないのです! 俺が、身を挺して王都を救ったというのに、その結果がこれでは、あまりに理不尽だ! あんまりだ!」

俺の理不尽な逆ギレに、全員が呆気に取られている。

「この子の希少価値は計り知れませんぞ! 貴族の観賞用にも、魔法研究の実験体にも、何にでも使える! さあ、アリシア殿下! あなたが、俺のこの忠義心に報いてくださるというのなら! どうか、この不憫な魔族の子を、高く! 高く買い取ってはいただけないでしょうか!」

俺は、堂々と、王女に対して商品のセールスを始めた。

自分の無謀な行いの正当性を、「王都のため」という大義名分で主張し、その結果生じた金銭的損失の補填を、魔族の少女の売買によって賄わせようという、究極の責任転嫁。

ボスを勝手に倒したのも、魔物を連れてきたのも、全ては金のため。

作者が俺の良心を試すために用意した『慈悲の罠』は、俺が自分の行いを正当化し、金儲けをするための、最高の『言い訳(道具)』に成り下がったのだ。

アリシアは、あまりのことに頭が追いつかないのか、扇子で口元を隠したまま、ぷるぷると震えている。

それは、怒りか、呆れか、それとも――。

《エラー!エラー!エラー!》

《物語の根幹に関わる論理矛盾です! 登場人物が、自らの行いの正当化のために、作者の意図したプロットを逆利用しています!》

《助けて! 誰か助けて!》

脳内で、作者の魂の叫びが木霊した。

ざまあみろ。これが、お前の物語の登場人物モブに、自由意志を与えた報いだ。

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