Christmas Eveはクリスマス前夜じゃない
今夜はChristmas Eve
それだけです
冬休み初日と雖も受験生にはのんびりとしている暇は無い。
黒崎讃良と月見里千尋は千尋の家で午後から受験勉強をしていたのだが、現在は一息入れて休憩中だ。
千尋の母が陣中見舞いと言って差し入れしてくれたケーキを食べながら二人は雑談している。
「お母さんってば、イヴなのにクリスマス・ケーキってフライングだよね」
千尋の話に讃良は口に入っているケーキを咀嚼して、紅茶で飲み込んでから答えた。
「ちーちゃん今は未だChristmas Eveじゃないよ」
「え、何で? 今日は12月24日だからクリスマス・イヴだよね?」
讃良ってば何を言っているのだろう、と思わず聞き返した千尋だったが、自分が讃良の蘊蓄スイッチを押した事に気が付いてから『まぁ勉強の気分転換には良いか』と諦めた。
千尋の予想通り鼻を大きく膨らませた讃良は説明を始める。
「Eveはeveningの古語であるevenが短くなった言葉なので夕方って意味だよ。 だから『Christmas Eve』はクリスマス前日って意味じゃなくて、クリスマスの夜ってコトだヨん」
「えっ!? クリスマス・イヴはクリスマス当日の夜なの? じゃあ今日がクリスマスって事?」
驚いて聞き返した千尋の反応に気を良くした讃良は嬉々として説明を続ける。
「だから未だChristmasじゃないってば。 キリスト教はユダヤ教が基になっているって云うのは知ってるよね? 其れでね、ユダヤ暦では0時ではなくって日没を境に日付が変わるのよ。 だから“12月24日の夜”は、ユダヤ暦では“12月25日の始まり”で、ユダヤ暦を基にした教会暦もそうなんだよね」
ユダヤ歴やら教会歴やら初めて聞く話に感心している千尋を見て、讃良は満足そうにケーキを再び食べ始める。
そんな讃良を見ながら千尋はふと疑問に思った事を口にしてしまった。
「じゃあ、明日の夜じゃなくって、今夜がキリストの誕生日なの?」
しまった、と千尋が思った時にはもう遅く、讃良の蘊蓄スイッチが再び入った。
「ちーちゃん、Christmasはキリストの誕生日じゃないよ?」
「えぇっ!?」
驚きのあまりケーキが口に入っているのにも関わらず声を上げた千尋に讃良は黙ってウエットティッシュを差し出した。
讃良は口に残ったケーキを紅茶で流し込んでから徐に説明を始める。
「Christmasの『Chirist』はキリストでぇ『mas』はミサ、つまり礼拝って意味なのよ。 つまり、キリストのミサって意味でキリストの誕生日じゃあないんだヨん」
受け取ったウエットティッシュで自分が飛び散らせた汚れを拭きながら千尋は訊ねる。
「じゃあ、キリストの誕生日は何時なの?」
「うーん、聖書の何処にもキリストの誕生日についての記載はないんだよね。 紀元前6年から4年位で日にちも諸説あって何れも決定的じゃあないんだよね」
説明を終えて残して置いた苺を口に入れた讃良に向かって千尋は珍しく口に出して突っ込みを入れる。
「クリスマスがキリストの誕生日じゃないのも驚きだけど、紀元前6年から4年ってなんだよ! Before Christじゃないじゃん!」
キリストの誕生日は本当に諸説あるので割愛しました
興味がある方はググってください




