第5話 自分の能力
こんにちはウィングです。今回は龍樹の能力についてですので、お楽しみください。
「よっ、パルス元気か?」
「元気ですよ。さっきまで敬語使っていたのに、なぜ使われなくなってしまったのでしょうか……」
「初対面の人には使うけど、慣れると使わなくならないか? あ、パルス使ってたわ、ごめん」
「別に慣れてますので。……まさか龍樹さんもあの方達と同類何でしょうか」
「ん? 後半聞き取れなかった、もう一回言ってくれるか?」
「別に知らなくていいですよー。ギルドについて聞きに来たのでしょう? じゃんじゃん質問してください」
そう、俺は約束通りギルドやこの世界がどんなものかを聞きに来たのだ。……トイレで自慰行為するために場を空けたと知らないからか、真っ直ぐ俺を見つめてきた。
……その視線痛いです! 純粋な目はやめてください! と、心で呟きながら質問をした。
「なんて言うか……この世界? について全てを訊きたいんだけど、いい?」
「承りました。そうですね、この世界は……」
遠くを見つめるような目で、話し始めた――
――パルスの話を要約すると。
美少女の強さは星一~星五まであり、カプセルの色で強さが決められている。
赤→青→緑→黒→金の順で強くなっていく。つまりルスは星一キャラということ。星一でも日本のゲームのように星五まで進化させられる。
技は最大で三つまで覚えられるらしいが、ルスは一体何の技をおぼえているのだろうか。最大美少女は三人まで連れて行けるので、俺にはあと二人仲間が作れる。
どうやって闘うのかは知らないが、一人一人に冒険者カードのようなものがあり、技名とレベルとヒットポイントが表示されている。
その話はおいおいするとして、パルス曰く神子の居場所が分かるらしい。その場所は……。
「『魔王城』にいますね。彼氏だから彼女の事を盛って可愛いと言っているのかもしれませんが、本当に可愛いのであれば確実に魔王城にいます。助けるには大門を潜って向かってください」
「可愛いからいるのか? 魔王はなんだ、ロリコンか?」
「いえ、老若構わず、可愛ければ自分のモノにしてやりたい放題するのです。というか、女子はこの世界では男の方より下に見られているので、逆らうことが出来ません」
神子が、彼氏がいるのに魔王なんかにベタベタしないか不安になっていると、ルスについて気になった。
俺がルスの方を向き、まじまじと見たからか頬を赤くするルスに向かって質問をした。
「ルスは元々人間だったのか?」
俺の言葉にルスの表情が曇る。若しかしたら訊かれたくなかったのかも、と思い訂正をしようとすると。
「はい……」
重い口を開けて答えてくれた。敬語で顔が暗くなるルスを見て、自分のした質問が失言だったんだと思わされる。
後に訊くであろう事を今訊くのは、御門違いだったのかもしれない。それでも俺は笑顔で。
「答えてくれてありがとな。言いたくないことを訊いて悪かった、お詫びと言っちゃなんだが、俺に出来ることなら何かしよう」
「本当に!? なら、セック……いたっ! 何でもするって言ったじゃん」
「さっきまで暗かったのに、何でいきなり明るくなるんだよ。情緒不安定か」
目をキラキラ輝かせながら俺の童貞を奪おうとするルスに手刀を食らわせると、再びパルスの方を向いた。
「話が前後して悪いんだけどさ、強い美少女を手に入れるにはガチャを回せばいい事は分かった。たださ、回すためのネイトってどうやってゲットするんだ? かれこれ三時間くらいこの世界にいるが、全く手に入らないんだよ」
「そうですね、手っ取り早く獲得するなら旅に向かう前にスライム等を倒して私の元に持ってこれば、一体につき100ネイトあげます」
「なるほど、じゃあ闘いに行こうかな。……スライムってどう倒せば?」
指をポキポキ鳴らせて、やる気満々なルスを尻目にパルスに質問をする。
パルスは俺の質問に答える前に、サングラスのようなものを二つ用意しだした。それを俺とルスに渡し、付けてと促してきたので付けてみると。
「な、なんだこれ! 近未来的な感覚が味わえるなんてたの」
「お静かに願います」
目の前にVRのような光景が広がり、テンションが上がっている所をパルスに注意された。
10秒くらいデータダウンロードのような光景を見ていると、終わったと同時に一瞬激しい光が目に映った。
「はい、終わりました。こちらが御二方の冒険者カードです。名前とレベルと技が書いてあるかと思います」
「この右上の文字は?」
手のひらサイズの冒険者カードを手渡され、左上に名前、その下にレベル、そして横には『無』と書かれていた。
「右上の文字は男の方が持っている能力です。火、水、氷、土、光、闇があります。一番人気は氷属性ですかね、闘ってみれば分かることですが。龍樹さんは何を使えるのですか?」
「『無』」
俺の言葉にルスだけでなく、パルスまでもが喋らなくなった。目を丸くさせ、口をぱくぱくさせるパルスを見て俺は自分がしょぼいことを悟った。
異世界に来たイコール主人公最強と思い込んでいる自分がいる。日本にいる時にラノベが好きだったからかもしれない。
基本異世界転生主人公は皆最強で、かっこよくヒロインを守りながら敵を倒す。それに比べて俺はどうだ? ヒロインであるはずの神子が魔王に奪われ、もしかしたら処女じゃなくなっているかもしれない。
パルスが言う属性に当てはまらない俺が勝ち上がるには、パーティーに最強の子を置く必要がある。だが、最初に仲間になったルスはチート能力を持っていない星一雑魚。
瞬時に理解した。俺は異世界転移したが、主人公ではなくモブキャラであることを。いずれ出会う魔王を倒す主人公の手助けをするだけの、何の賞賛も浴びない人種であることを。
悄気る俺を見たルスが、話題を変えようと話を振ってきた。
「た、タッキー! 今からスライム狩りに行かない? 私が全力を出せばきっと何体も狩れるよ」
「慰めてくれるのは嬉しいんだけどさ、それは日本の言葉で傷口に塩を塗るっていうんだよ。うん、ものすごく痛い、心が」
涙が出そうになるくらい悲しくなってくると、歓喜の声を上げてパルスが身を乗り出して話し掛けてきた。
「何言ってるんですか! 『無』属性というのは、とても珍しく、とても強いんですよ!? 火を使われて火傷したのを治せたり、凍らされたのを治せたりと、かなり強いんです。龍樹さんが自分の事を俺TUEEEEとか言った時にはバカにしましたが、これはもしかするかもしれません」
冗談ではなく、本気で言っているのが伝わった。そうか、俺は弱くないのか!
さっきとは打って変わって満面の笑みと化した俺は、冒険者カードをニヤけながら見つめる。
そんな時、一人のごっつい男がパルスの元に来た。上半身裸でムキムキのその男は、とにかく風格があった。鎧男の時よりも恐怖を感じるくらいに。
ムキ男はパルスの顔に自分の顔を思いっきり近づけ一言。
「キスしろ」
唐突な言葉に一瞬理解が遅れた。
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