第3話 浮気はしない
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――胸に意識がいっているうちに、どうやら目的地に着いたようだ。大きな扉を後ろに、ルスに下ろしてもらって白いマットレスの上に立つ。
壁一面真っ白で、マットレスの上には眠っている人が多いのでとても静か。ということは、まだ行ったことないあの場所か。
「宿泊施設だな? あ、あの隅にあるトイレマークの場所がトイレの場所か。なんか、日本と変わりないんだな」
「当たり前じゃん、ほとんどが日本人なんだから。ガチャバトルの世界にいる男達は誘拐ガチャから来た人達だよ?」
その言葉を聞き、顔が火照ってきたのが自分でもわかった。俺はさっきパルスに、自分が日本から来た特別の人間的な感じで言ってしまった。
全てを知ったうえでパルスがあんな事を言っていたとすると――ただの恥さらしじゃないか!
「もうトイレいいや、恥に負けて勃起が治ま……ぶふっ!」
顔に何か柔らかいものが当たった。これはまさか……? いや、流石にルスも常識ぐらい考えるだろ。
「気持ちいい? タッキー……鼻息が荒くて……もう私……イってしまいそ」
「ふぁいふぉまへいわへはいほ!? (最後まで言わせないぞ!?)」
やはりこれは……この顔に埋まるような柔らかい感触は……男性の憧れ、おっぱいか!
揉んでしまおうか悩んでいると、当初の目的であるトイレに駆け込みたくなった。まあ当たり前だよね、胸に顔を挟まった場合アソコが大きくなるのは健康的という捉え方でいいよね? だけど。
「前にも言った通り、俺には椎名神子という名の彼女がいるんだ。だから、そういったエロい系の事はしないし、出来ないんだよ」
「関係ない」
「あるよ!? あれ、話聞いてたよね? 彼女がいる身として、そんな浮ついた行為を行うなんて……」
「関係ない」
ルスの胸から顔を離した俺は、自分の思いを正直に伝えた。が、ルスは聞く耳を持たず、ルス自身の意見を突き通そうとしてくる。
自分の意見が絶対ということはない、人間である限り。しかし、この件に関しては俺の言ってることがただしいはず。
「ルス、お前は俺の奴隷だろ? じゃあ命令に従って頂こうか」
「はい」
俺の言葉に反応して目に生気が無くなったルスが、敬語で返事をした。どこか様子がおかしいが、気にせず命令を下す。
「トイレに行ってくるからそこで待っててな。んじゃ、失敬……」
「待ってください」
「何か用事が?」
「ここのトイレって男女兼用なんですよ。ですから……私が自慰行為のお手伝いを!」
急に目に生気が戻ったルスが明るく話し始めた。
……というか、こいつは奴隷で、俺に歯向かうこと普通しないんじゃないのか?
と、過去に無いほどの目の輝きを魅せるルスが、喋り方も戻ったことにより神子を思い出させてくる。大好きな神子。
俺は心に決めている、浮気をしないと。
正直エロゲーは専門外だ。今はエロゲーあるある展開に走っているかもしれないが、どう立ち回ればいいかがさっぱりだ。ルスに愛想つかされてもしょうがないと思いながら、ルスに言葉を返さずトイレに無言で歩いて行った。
「――付いてこなかったな」
個室に入り。ルスの胸を思い出しながらアソコを擦る。正直過去に無いくらいに気持ちいい。
が、やはりルスが気になってしまう。気持ちよくやり終えた俺は、手を洗って急いでルスの元へ駆け寄った。
「――やめて! 私はタッキーのものなの、汚らわしい手で触らないで!」
「おいおい、女が男に対してそんな態度をとっていいのかな? ん?」
「そうだぞ、女なんて男にヤられるだけの生物なんだからよっ!」
急いで駆け寄ると、ルスは知らない男二人組に絡まれていた。一人は金髪で、もう一人は茶髪のリーゼント姿。
絵に描いたような不良姿に俺は、足が竦んでしまう。ルスも発情しているし、このままあの二人にヤられるのを遠くで見るってのも悪くないんじゃないか?
「なんて、あまっちょろいこと言ってんじゃねーよ、俺! はしたないことばっかり言う、女子とは思えないヤツだが、それでも俺の事を思って行動しているって事は伝わってるんだよ! てめーらみたいなクズ野郎共が、気軽に触っていい女じゃないんだよおおおおおお!!」
静まり返った宿泊施設。そんな中、俺は大声をあげて金髪男に右ストレートを食らわしてやった。
……いってー、殴るのってやられる側だけじゃなく、殴る側もダメージ食らうんだな……。ゲームでは痛そうにしないくせに……リアリティがねーな、ゲームは。
殴られて吐血している金髪男を庇うように前に立つリーゼント。周りの人たちも何だ何だと起き上がる中、リーゼントは声を荒らげる。
「てめぇ! いきなり人をぶっ飛ばすとか、頭イカレてるのか!? 公衆の面前で女庇って、ただで済むと思うなよ!?」
「あ!? そいつは俺の奴隷であり、俺と共に旅をする大切な仲間なんだよ! 人が大切にしてるもんを簡単に奪おうなんて、考えてるんじゃねーよ!」
「タッキー……!」
歓喜の声を上げるルスに向けて軽くウインクをし、自分の中にある恐怖を忘れようとしている。
正直今、超絶怖い。ゲームやアニメが好きだから、異世界に来たらヒーローになれる……っていう風に世の中が出来ていればビビることもないだろう。
だが、金髪男の顔面を殴った時に自分の手を痛めるような雑魚が、リーゼント男まで都合よく倒せるはずがない。
さっきからずっと心の中で祈っている、最強の男が現れてくれと。
祈ってはいるが、やはり女を庇ったことは吉と出なかったようで、誰一人として立ち上がって俺を助けようとしてくれない。
周りを見回して自分の勝ちを確信したのか、リーゼント男が俺の方に右手に拳を作りながら走って来た!
――クソ、クソ、クソ、クソ、クソ!
こんなにも呆気なく俺の異世界生活が終わっちまうのかよ!!
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