第1話 ギルド
二話目の投稿です!
「――ここはどこだ?」
周りには人が何千人といた。場所は東京ドームより何倍も広い場所……ということは分かったが、それ以外は全く分からない。
「あ、目覚めた? 今日から貴方はここで過ごすことになったんだー。私が連れてきたけど、全てを私のせいにしないでね?」
「いきなり現れたと思ったら、ここに来たのはルスのせいかよ。……どこか教えてくれて、戻る方法教えてくれたら許してやるよ」
どこか上から目線の俺に対し、優しく微笑みながらルスは答えてくれた。……相変わらずの水着姿で。
「ここは『ガチャバトル』の世界で、ガチャで引いた美少女で闘うの。引いた美少女は奴隷として扱えるので、お好きなように。ですので、その股の膨らみも私がコスってあげるよ?」
「そ、そんな事しなくていいよ! 俺には彼女がいるからな、コスられたらそれはもう浮気だろ」
ジャージ姿であるが故に、股の膨らみが目立ってしまっていた。健全な男子という証拠ではなかろうか。
よく考えてみれば今は勃起なんて気にしている場合ではない。周りにいる男達の後ろには、いろんな姿の美少女がいた。つまり、今ルスが言っていた『闘う』というのが、100パーセントに近づいたということ。
……かっこつけるのはいいが、やはりトイレに行きたいな。このまま過ごすわけには行かないし……。
「なあルス、この世界がどういう所かわかったから、何がどこにあるっていう紹介してくれ」
「いいよ。まず、向かいにある大きな門を潜ると、魔王城へ続く道で、右手に見える大きなドアの向こうがギルドとなっていて、左手に見えるのが宿泊施設だよ」
情報量が多すぎて今にもパンクしそうな頭を抱える俺。それを見透かしてか否か、ルスはクスクス笑っている。
絶世の美女のルスと共にしているのに、周りの人たちは全く俺たちに見向きもしない。水着姿とサービス精神旺盛だが、他の老若人もやはり自分の奴隷美少女だけで充分なんだろうか。
「最後に……」
急に真剣な表情になったルスは、後ろにある人っ子一人分のドアを指さした。
「あれは通称『魔の扉』なんだよ。開ければ死ぬ、死んだ時に勝手に通らされてその先は――私にも分からない」
「何それ怖っ! トイレに行ってアレしようと思ってたけど、もう治まるくらい怖い! 」
「トイレ……あっ! 自慰行為がしたいんなら言ってくれればいいのに!」
「ばっ! 女の子がそういうこと言うんじゃない!」
こんなにはしたないセリフを言っていても誰一人振り向かない。つまるところ、この行為は日常茶飯事なのだろうか。
頭を振り、脳内をリセットさせた。頭の中がエロい妄想に支配される前に。リフレッシュさせた頭で考えた結果、ここは王道に行くことにした。
「ギルドへ行こうか。ギルドへ行けばどういう風に動けばいいかとか教えてくれるだろうし」
「そうだね、ギルドにはガチャをする場所も設けられているし、とりあえず行ってみよっか!」
この明るさ……どことなく神子に似ている。意識し出した途端この格好でいられると、股の部分が……!
勘づいたのか、ニヤニヤ笑いながらルスが膝をつき、俺の股の前に顔をやってきた。呼吸の生温かさがズボン越しに伝わってくる。
――ヤバい、ヤバい、ヤバい、ヤバい!
ただでさえさっきルスを神子と似てると思ったのに、今こんなことされたら俺の理性が……!
「命令がほしいな、ご主人様♡」
上目遣いで目を輝かせながら尋ねてくるルスが超絶可愛い。神子と付き合っていなければ理性が吹っ飛び、ヤれるところまでヤっただろう。だがしかし、神子という名のルスを上回る美少女と付き合っている俺には効かない攻撃。
俺はルスの腕を掴み上げて立たせてあげると、優しい表情で言ってやった。
「気持ちは嬉しいが、俺には彼女がいるんだ。だからルスにそんな事までやってもらう必要はないよ」
「……ご主人様、勃起した状態で言われても説得力ないよ」
俺は顔を赤面させたままギルドへ向かった。
――ギルド内はパチンコ店並に賑やかだった。扉が分厚いからか、全く声が漏れてなかったので気づかなかった。それよりも、
「なんだよあの扉、自動ドアとか先に言えってーの。張り切って腕まくりした俺が馬鹿みたいじゃん」
「確かにあれは恥ずかしいですよね。私たちの方を見向きもしなかった人たちでさえ、お腹を抱えて笑ってたからね」
扉が大きいこともあり、異世界に来た超絶パワーが試されるのかと腕まくりをしてラジオ体操までして準備万端の中、いざ扉に近づくと勝手に開いたのだ。
……過去の話は置いておいて、現在俺たちはギルドの中にいる。正面には十箇所に分かれた受け付けのお姉さんたちがいて、右手側と左手側には俺がここに来る前に引いたガチャが設置されていた。……綺麗になっているが。
一先ず、五番と書かれた場所にいるギルドのお姉さんの前に立った。優しく微笑みながらギルドのお姉さんのパルス(ネームプレートに書いてある)は、いらっしゃいませと言ってきた。
パルスの髪は蒼くて、座った姿勢でも長い髪だというのが分かる。目も蒼くて……とっても可愛らしい顔立ちだ。
「えっと……ギルドに来たらまず、何をすればいいかを教えてくれるかな、という安易な考えで来たんですが、失礼でしたか?」
わかりやすくデレデレする俺にジト目を向けるルス。だがパルスは、俺の態度に口を出さず、素敵な笑みで質問に答えてくれ――
「なるほど。では、先に情報料の100ネイトを貰えますか?」
「……もしかして、お金的なのを取るつもりですか?」
「おかね? その単語は知りませんが、100ネイト持っていないのであればお引き取り願います」
追い払われた俺たちは、もう詰みに近い状況だった。情報を訊くだけでお金を取られると思っていなかったし、ガチャバトルの世界に知り合いもいない。それに何より。
ネイトって幾らの事なんだよっ!
面白いと思っていただけるよう努力します。