第十三話
早めに更新と言いつつ、一ヶ月経ちました……。
どうも一ヶ月ぶりです。久しぶりに書いたため色々と思い出しながら書いております。それに加え、非常に書きにくい部分だったため難産……。
読みづらい部分もあるかも……。
では、どうぞー!
盗賊達を拘束し終えた後、俺達は盗賊達をどうするのかという話をし始めた。
「普通に考えれば、アリシアの警備隊に引き渡すってことになるよね」
「ま、そうだよな」
キリカのごもっともな意見に全員頷いた。
なんせ、盗賊被害はアリシア近郊で起こっていたのだ。当然、アリシアの警備隊に引き渡すことになるだろう。
盗賊を引き渡す先は決まったものの、ここで問題がもう一つ出てきた。
「とは言うものの、どうやって運んだものか」
そう。もう一つの問題は、盗賊達の輸送をどうするかということである。
そのことで悩んでいるとクレアが案を出してきた。
「じゃあ、私が運ぶよ。キリカちゃん達は依頼途中でしょ?」
「そうですけど……」
「私のことは気にしなくていいよ。三日四日グランに帰るのが遅くなっても、特に問題ないしさ」
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます。ありがとうございます」
「いいよいいよー」
と、クレアは手をヒラヒラさせながら盗賊達の方へと向かっていく。
気絶している盗賊達を自分の馬車へと移動させるのに担ごうとしているのだろうが、担ごうとした男の体格がいいせいで上手く担げていなかった。
「手伝うよ」
「ん?あー、ありがと。やっぱ男の子だねぇ、ユリィ君って」
「褒めてるのか?それ」
「褒めてるよー」
クレアが担ごうとしていた盗賊を軽々と担いだところ、何故か感心された。
キリカ達の手伝いあり、盗賊達のすぐ積み込みは終わった。俺が切り落とした右腕も忘れず回収しておいた。この右腕は魔法庁に持っていけば詳しく調べてくれるかも知れないという意見が出たからである。
「じゃあ、私は行くね」
「ちょっと待った」
「ん?」
クレアが早速馬車を走らせようとしたところに、俺が待ったをかけた。
「俺もアリシアに行く」
「へ?」
「盗賊達の見張りが必要だろ?」
「ま、まぁ確かにそうだけどさ、ユリィ君は依頼途中でしょ?」
「つってもな。せっかく捕まえた盗賊達を見張りがいないせいで逃すのも問題だろ」
俺の言った事に反論が出来ないのか、クレアは困った顔をしていた。キリカ達も同じような顔をしていたが、今は置いておこう。
確かに、依頼を途中で投げるのは問題である。しかし、今回の場合は仕方ないだろう。まぁ、依頼放棄という形になってしまい、報酬はもらえないだろうが。
「カシャンさん、俺の分の報酬は差し引いて、キリカ達に渡してください。俺は依頼放棄という形になっちゃいますので」
「いえいえ、そんなことはしませんよ。ユリィさんの言う通り監視はいるでしょうし、今回は仕方ありませんよ。報酬はキリカさんの方に渡しておきますので、後日受け取ってください」
「いいんですか?」
「ええ。盗賊達から守ってくれたではありませんか。これで報酬を払わないのはおかしいでしょう」
「……ありがとうございます」
「いえ、気にしないでください」
ニッコリと笑うカシャンさん。本当にいい人である。
「じゃあ、行くか」
「う、うん」
こうして、俺はキリカ達と別れてアリシアに引き返すことになった。
†
あれから少し経ったあと、俺達は野営に入った。
すでに日は暮れており、空を見上げれば満月が真上にある。クレアには先に寝てもらい、あとで交代することになっている。
「……」
することもなく、燃え続ける薪を見つめる。
盗賊達は未だに目を覚まさない。
「ん……」
と、静寂を破るように聞こえてきた声は、盗賊達が乗っている馬車から聞こえてきた。
馬車の中を覗くと、一人体を起こしていた。俺が相対した女だった。
「目が覚めたか」
「ん……?アンタは……」
まだ意識がはっきりとしてないのか、俺の方をぼんやりとした目で見つめていた。
「……そうか、失敗しだんだな、私達は……」
「あん?」
唐突にそう呟いた女。
「随分と落ち着いてるな」
「自分でも不思議なくらいな……」
「……痛みはあるか?」
「痛み?……あぁ、これのことか」
女は失った右腕の方を見て、特に驚きもせず淡々と答えた。
「痛みはない。加えて言うなら、何故右腕がないかもある程度は理解している」
「どういうことだ?」
どうやら、あの暴走状態の時もかろうじて意識が残っていたらしく、俺が右腕を切り落とした事を理解しているようだった。
「むしろ、あの状態で右腕だけで済んでるのは奇跡だと思ってるよ」
「そうかい。なんであんな状態になったとかは分かるか?」
そう問いかけると、女は思案顔になった。
「……あるといえばある」
女が語ったことを要約すると、自分達は全員奴隷であり自分達を買った奴に渡された指輪が原因だと考えられるらしい。
「何故その指輪が原因だと思うんだ?」
「その指輪は私だけに渡してきたんだが、その時「実験の一環だ」と言われてな」
「なるほど……」
つまり、その指輪はある条件を満たすと、あのような暴走状態に陥るようになっているカースアイテムということか。カースアイテムはゲーム内にも実際にあった物で、ステータス上昇幅だけ見れば最高級なのだが、『呪い』がかかっている装備品の事を指し示す。『呪い』は様々な状態異常を引き起こすのだ。ということは、先程の暴走はバーサク状態だったわけだ。
『バーサク』はステータス上昇と引き換えに、知性を失うため回復行動等が一切できなくなる状態である。また、敵味方関係なく攻撃するという特徴もある。
「しかし、よくそんな危なそうな物を身につけていられたな」
「さっきも言ったが、私達は奴隷。主人の命令には逆らえれない」
「逆らえれない、か……」
「あぁ。私達みたいに警備隊に捕まるのはまだマシさ。逃げるなんて事すれば、殺される」
女が言うには、新しく買われた奴隷達は初めて仕事に行く前に逃げた奴隷達の末路を見せられるらしいのだ。仕事に失敗した場合、どうなるのかを教え込むために。
「つい最近見たばかりだからな、鮮明に覚えている。恐怖による支配っていうのはなかなかどうして、よく効くものさ」
その言葉を最後に、女は黙り込み沈黙が辺りを支配した。
俺は特に口を開くでもなく、馬車の淵に腰掛け夜空を見上げていた。
「……なぁ」
突然、女が口を開いた。
「なんだ?」
「なんで、私を殺さなかった?」
「はぁ?」
「暴走していた時の話だ。右腕を切り落とすなんてことを考えず、心臓を一突きすれば終わりだったんじゃないのか?」
「……まるであの時死にたかったような口振りだな」
そう言うと、女は小さく笑いこう続けた。
「そうだな、私は死にたかったのかもしれないな」
「……」
何故かその言葉を聞いた途端、無性にイラついてきた。
「……もう疲れたんだよ、生きることに。借金を抱えた父親に売られて幼い頃に奴隷となり、今まで散々な目にあってきた。奴隷というだけで、罵詈雑言を浴びせられ、侮蔑の視線を向けられ、人として扱われたことなんて一度もない。挙句の果てには、実験体にされ右腕を失う。こんな人生に意味があるのか?」
堰を切ったように涙を流し言葉を吐き続ける女。
「もう、もう生きたくないんだ!例えここで生き残ったとしても、周囲からの視線、扱いが変わるわけじゃない!この先も、ずっと!ずっとずっと私は人としてじゃなくて、物として扱われていくんだ!」
「……だから、死にたいと?俺に殺して欲しかったと?」
「あぁ、そうだ!」
俺の体は勝手に動いていた。
「っ!」
「じゃあ、今ここで殺してやるよ」
俺は女を押し倒し馬乗りになって、短刀を女の首に添えた。
「……」
「……」
俺と女はお互いに言葉を発さず、動きを止めていた。
女は目をキツく閉じ、僅かにだが震えているのがわかった。
「……何が、死にたい、だ」
「え……」
俺は短刀をしまい、馬車から降りた。
「よくそんな事言えたもんだ。いざ死ぬという場面になったら、震えるなんてよ」
「ち、ちがっ」
女は勢いよく起き上がり、反論しようとした。
「違わないさ。本当は死にたくない、そういうことだろ」
「……」
「それでも死にたいってんなら、そこらへんの魔物にでもやられて野垂れ死にすればいい。都合よく自分を殺してくれそうだったからといって、俺に甘えるな」
「……」
女は俯き黙っている。
「……俺にはアンタが物には見えなかった」
「え……?」
「生きたい、死にたくない、そう思って震えるなんて、如何にも人間らしいじゃねーか」
俺は女の方に背を向けたまま、そろそろクレアと交代する時間だということに気がついた。
「ま、同情くらいはしてやるよ。いらないだろうかもしれないがな」
「……確かに、いらないな……」
「あっそ」
俺はそれだけ言うと、クレアを起こしに馬車を離れた。
†
次の日の夕方。
俺達はアリシアに到着していた。その頃には盗賊達は全員目を覚ましていた。
「じゃあ、早速警備隊に引き渡しますか」
「あぁ」
そう言ってクレアは警備隊を呼びに行った。俺はその場に残り、盗賊達の監視を続けた。その時、馬車の中から声をかけられた。
「なぁ、アンタ」
「あん?」
声をかけてきたのはあの女だった。
「……アンタ名前は?」
「急にどうした?」
「別に。ただ聞いておきたいと思っただけだ」
「なんだ?復讐でもする気か?」
おどけてそう答えると、女は否定してきた。
「違う違う。本当に興味本位で聞いているだけ」
「……ま、いいか。ユリィだ」
「ユリィ、か……。私はイヴール。イヴでいい」
「イヴ、ね」
そうこうしていると警備隊の人達が来て、イヴ達を連行していった。
イヴの右腕は状況を詳しく説明すると、警備隊の人達がすぐさま魔法庁アリシア支部へと持っていった。
後日聞いた話だが、盗賊達は全員奴隷であること、死傷者が出ていないこと、イヴはそれに加えて初犯であることを加味され、刑は軽くなったそうだ。刑は三ヶ月間の肉体労働らしく、その労働は結構なキツさらしい。内容は聞かされていない。
「おっし、これで仕事は終わりだね!もう夕方だし、今日はアリシアに泊まって帰ろうか」
「そうだな」
俺達はその日、アリシアでゆっくりと体を休めることにした。
†
深夜。
静まり返ったアリシアの街を一人の男が魔法庁アリシア支部へと歩みを進めていた。
支部には支部長と副支部長の二人だけが残っており、夕方に持ち込まれた盗賊の変異した右腕について調べを進めていた。
「うーむ……」
「おそらくですが、この指輪が原因と思われます」
「ふむ、そうだろうな……。その指輪から空気中のマナが右腕に過剰に供給された、といったところか?」
「なるほど、それで右腕の細胞が変異し、魔物のような状態になったと」
そして二人は右腕から取り出された指輪を見つめた。
「おそらく、変異が右腕だけで済んだのは、この指輪が壊れたおかげでしょうか」
「マナの過剰供給耐えられなかったのは、右腕の細胞だけでなく指輪も、ということか」
二人が立てた推測は間違っておらず、イヴがしていた指輪の性能を言い当てていた。
「ほう、なかなかどうして、いい推測を立てる」
「なっ!?」
「誰です!?」
二人しかいないはずの部屋に三人目の声が響いた。そのことに驚き声の主を確認する支部長達。
「そこまでバレてしまっては、あまり目立つなと言われているが致し方あるまい」
物騒な言葉を放つのは、先程支部へと歩みを進めていた男だった。
「だ、誰だ貴様!」
「答えによっては、容赦しませんよ!」
そう言って意気込む二人だったが、次の瞬間男から放たれる殺気にあてられ、完全に勢いを失ってしまった。
「ふん、つまらん奴らだ。頭脳の方はマシみたいだが」
その言葉を最後に二人の意識は暗転した。そして、二度と目を覚ますことはなかった。
何故なら男の両腕が刃物変わっており、その両腕で首を切り飛ばされていたからだ。
「さっさと回収して帰るとしよう」
男の両腕は一度、水銀のような液体に変わり元の人間の腕に戻った。
そして、男は壊れた指輪を手に取ると、その部屋を後にしたのだった。
イヴちゃんはヒロイン。
あと一人、もっと後ですがヒロインを出すつもりです。
ようやく一年の締めくくりの大行事が終わったので、少し四月まで暇ができました。
次の更新は早めにしようと思っております。では。




