劣等感
昔から、姉と比べられて生きてきた。
「美雪は本当にすごいね。」
「美雪先輩!さすがです!!」
「遥は、あともう一歩だったわね。」
「遥さんって美雪先輩にあまり似てないですよね。」
両親も同級生も、みんな姉のことばかりだった。
「ごめん。別れてほしい。」
「美雪さんの事を好きになっちゃったんだ。」
当時付き合っていた彼氏でさえも、初めて家に呼んでから姉に気持ちを移してしまった。
小学校、中学校は姉と同じ学校に通っていて、姉の成績とよく比べられていたからこそ、高校では絶対に姉と同じところにはいかないと決め込んでいた。
家を出て、一人暮らしを始めて、家族との関わりを極限まで経って過ごしていた。
一年生の時は親の仕送りとアルバイトで生活していたが、2年生にもなれば、余裕も出てきはじめてアルバイトのみでなんとか生活ができるようになっていたため、受け取っていた仕送りを止めた。少しづつ親にもらった分のお金を返して、少しでも、借りを無くそうとした。
3年生になった時は少し迷った。進学するか、就職するか。正直、将来自分が何をして、どんな生活がしたいのかは全く見つかっていない。
でも、学生を終わらせるのがなんだか惜しくて、だらだら学生を続けるためにそれなりの大学に進学した。
親には一切相談をせずに、すべて自分だけで話を進めたが、学校から親への連絡は止められず、少しもめた。
「なんであなたはいつもそうなの?美雪はこんなことしないわよ」
揉めた時に親から言われた言葉。
姉は両親と仲が良く、大事なことは親と相談していたのをよく見かけた。だから尚更、勝手に決める私のことを両親は理解ができなかったのだろう。
「それに、なんでこの大学?もっと上の大学に行けるでしょう。」
私が選んだ大学はそれなりに頭のいい大学だ。それでもまだ足りないというのか。いや、姉が国内最難関の大学に通っているせいで、姉よりいくらか出来が悪い妹であっても、もう少し上に行けるだろうと思っているのか。
「もう少し美雪を見習って頑張ってみたら?」
「美雪が高校生の時はもう少し成績が良かったわよ。」
いつまで、姉と比べられなければいけないんだろう。
家を出て、姉とは全く違う行動をとってみても、親の中での私の立ち位置は変わらない。
家を出て3年。ようやくそのことに気がついた。
「もう。いい加減にしてよ。」
「いつまで私とお姉ちゃんを比べれば気がすむの。何年、何度、同じことを言われてきたか分からない。でも、私はお姉ちゃんみたいにはなれないし、なりたいとも思わない!」
全てが嫌になってそう両親に叫んで実家を飛び出した。
それ以降は、親からの連絡を全て絶って1人で生きてきた。
大学に入ってからも、社会人になってからも。
何か問題が起きてしまっても絶対に親に相談なんかしなかったし、送られてくる連絡に既読をつけることも、返信をすることもしてこなった。
大学を卒業して、入社した先がブラックだった時は、流石にどうしようかと思ったけど、結局慣れて仕舞えば、どうってことないことを知っていたから、なんとか2年間続けていた。
もし召喚されたのが、私じゃなく姉だったなら。
きっと、器用に魔法を操って、なんの問題もなしに瘴気の問題を解決したんだろうな。
ここでなら、こんな私でも、なにものかになれるのかな。
こっちの世界に召喚されて、無様にも抱いてしまった、一抹の期待。
抱くだけ無駄な期待。
結局、どこの世界に行こうが、私はいまだに姉と両親の幻影に苦しめられている。
隣で、楽しそうに魔法を使う2人に目をやると、自分の中の惨めさが浮き彫りになる。
結局、どこに行ったって私の価値は変わらない。ないに等しいどころか、もはやマイナスだ。
この国の人には、期待だけをさせてしまった。
使い物にならないのなら早めにここを去ろう。
幸いにも、この世界に私を知っている人はいないし、姉を知っている人もいないから、比べられることもない。
なら、自由気ままに世界を旅してみるのもありかもしれない。
幸い、この世界では、住み込みのアルバイトも多いらしいし。
働き口さえ見つけられれば、なんとかなるような気もする。
「私は、どうなるんですかね。」
今は魔法の授業中。でも、魔法を使えない私には正直言ってなんの関係もない時間である。
「今日はとりあえず、いろいろ試してみましょうか」
言われた通り、いろいろな方法を試してみたが、やっぱり魔法は使えなかった。
双子たちは初めてとは思えないほどの上達ぶりを見せていて、魔法師団のみんなが嬉しそうにしていたのが印象的だった。
基礎的な魔法は問題なく上達していき、次回の授業では聖女しか使えない魔法の勉強を始めようという話だ。
次回までに、ここから去ろうかな。




