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3・6・9 (2)

 石棺の地下三十六メートル。

 コンクリートと鉛の壁に囲まれたドーム状の空間は、外の世界から切り離された小宇宙だった。廃炉の廃熱が岩盤からじわりと滲み出し、壁を微かに温めている。無数のケーブルが天井を這い、その先に鎮座する物体には大きな布が掛けられていた。それらはまるで寄せ集められた怪物のように見えた。


 アーリン・ミナカタは、その機械の傍らに置かれた折り畳み机の前に立っていた。

 机の上には、一冊のノートが開かれている。

 テスラのノートだ。


 原本ではない。FBIが没収し、秘匿し続けた資料群を、エレナが電子的に回収した複製物だ。ページは黄変し、インクが滲み、あちこちに走り書きの数式が散乱している。だが今、アーリンの目は一点に釘付けになっていた。

 七十一ページ。テスラの自筆。


 If you knew the magnificence of the 3, 6 and 9, then you would have a key to the universe.


「もし3、6、9の素晴らしさを知っていれば、あなたは宇宙への鍵を手にしたことになるだろう。」


 その言葉の下に、走り書きの注釈が添えられていた。


 The alphabet is not a sequence. It is a spiral. Reduce each letter to its essence. What remains is the heartbeat.


「アルファベットは単なる並びではない。それは螺旋なのだ。それぞれの文字をその本質にまで削ぎ落とせば、残るのは鼓動だけだ。」


「……博士」


 アーリンは振り返った。

 エレナは、部屋の中央に設置されたメイン端末の前に座り、ホログラムで展開された文書を凝視していた。その文書の出所は、アークから脱出する際にエレナとサキが強奪した機密アーカイブだ。大沈黙の直前、ある情報分析官が残した遺書。


 そして、その遺書の最後の一語。


 LIGELED.


 エレナの指が止まっていた。端末の前でこれほど長く動きを止めるエレナを、アーリンはこれまで一度も見たことがなかった。

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