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「小太郎物語」の巻
「むっ。曲者の気配!?」
その井戸神は鋭かった。
城内の井戸に近づく曲者は忍者であった。
井戸に毒を入れ、城内の兵士たちが弱ったところで、城攻めをしようという、北条氏直の計略である。
(あの、闇夜を利用して近づいて来る黒装束は、紛う事なき忍者)
(ふん。察するに井戸に毒を入れようと言う魂胆であろう)
(何のためにワシが士官したと思っておるのだ)
井戸神は、こんな事もあろうかと、隠し持っていた桶で、滴り落ちてきた毒液をすべて受けた。
(後はこの毒を石垣の隅に捨てるだけだ)
「どっこいしょ」
と言いながら桶を抱え、井戸から出る井戸神。
(念のために)
と、物陰に隠れて井戸の様子を見ていた忍者は驚いたが、
(ひょっとすると、毒をすべて受けられたのかも知れん)
と思い、再び毒を投入するために、井戸神のいなくなった井戸に近づいて行った。
風魔小太郎の初手柄であった。
(鋭い井戸留守)
するどいいど、るす!
お読みくださった方、ありがとうございます。
明日も気まぐれに、ゲリラ投稿の予定。
時間は、決めていた方が良いらしいけど、予定が難しいので、出たとこ勝負でまた明日。