地味子のユートピア
1
七月。
街を濡らし続けていた梅雨の雨は唐突に上がり、代わりに容赦のない凶悪な太陽の光が、東京のコンクリートジャングルをジリジリと焼き焦がしていた。
1年B組の教室。エアコンの冷気すらも打ち消すほどの、異様な熱気と息詰まるような沈黙が、そこには満ちていた。
私は自分の席に深く腰掛け、椅子の背もたれに体を預けて堂々と足を組んでいた。
周囲からは、私の「中学時代のデブ眼鏡の写真」を見た生徒たちからの、軽蔑と好奇の視線が突き刺さる。神崎蓮も、小林も、私という「高校デビューの化け物」に騙されていた屈辱から、死人のような目で私を睨みつけていた。
(あはは。みんな、私の過去を笑いながら、本当は私のこの身体のことが気になって仕方ないんだ)
私は唇の端を吊り上げ、ポケットからスマートフォンを取り出した。
相手が私を完全にハブにし、嘲笑っていたはずの**『1年B組・全生徒グループLINE』**の画面を開いた。
一瞬の躊躇いもない。私は、その画面に、学校中を永遠に揺るがすことになる最悪で最強のメッセージを打ち込み、送信ボタンをタップした。
『吉岡繭:高校デビューの私とヤりたい男子は全員、今日の放課後、駅前のレンタルルーム203号室に集合。来た人全員に、生でヤラセてあげる。』
メッセージが送信された瞬間、教室中の男子たちのポケットや机の上で、一斉に通知音が鳴り響いた。
ピコん、ピコん、ピコん――。
奇妙な合唱のように響く通知音。次の瞬間、スマホの画面を見た男子たちの顔が、一斉に硬直した。
「おい、これ……マジかよ……っ」
「吉岡のやつ、頭おかしくなったのか!?」
ざわめきが教室を包み込む。女子たちは嫌悪感を剥き出しにして私を睨み、男子たちは互いに顔を見合わせながら、強烈な動労と、それ以上に隠しきれない「剥き出しの欲情」で目をギラつかせ始めた。
私は立ち上がり、スクールバッグを肩にかけると、凍りついた教室のメンバーに向かって、これ以上ないほど妖艶で、底冷えするような笑顔を浮かべて見せた。
「待ってるね。みんな」
それだけを言い残し、私は教室を後にした。
私の後ろ姿を見送る男子たちの呼吸が、一気に荒くなっていくのが分かった。彼らは私の過去を笑っていた。でも、春休みに死に物狂いで8キロ痩せて、毎日鏡の前で血を吐く思いで作り上げた、この「圧倒的にエロい身体」を前にして、理性を保てる男なんて、この学校に一人もいないことを、私は確信していた。
2
放課後。駅前の雑居ビルにある、狭く薄暗いレンタルルーム203号室。
フローリングの床に、安っぽいマットレスが何枚も敷き詰められたその空間で、私は制服のブラウスのボタンをすべて外し、下着姿のままで待っていた。
トントン、と、ドアが控えめに叩かれた。
鍵を開けると、そこに立っていたのは――驚いたことに、クラスの男子のほぼ全員だった。
サッカー部のエースだった小林も、心を折られたはずの神崎蓮も、普段は真面目ぶっている宮本くんも、クラスの男子という男子が、まるで行列を作るようにして廊下にひしめき合っていた。彼らの目は、恐怖と、それ以上に隠しきれない凶悪な肉欲で完全に濁りきっていた。
そして、その行列の中には、学校で「おしどりカップル」として有名だった男子たちの姿も、ハッキリと混ざっていた。
クラスの清楚系女子・美咲と付き合っているはずの、陸上部の優等生・拓海くん。
そして、さっきまで教室で私を一番激しく汚物のように罵っていた一軍女子・由香の彼氏である、健人くん。
彼らは自分の彼女のことなんて、その脳内から一瞬で消し去ったかのような、獣そのものの卑俗な目で私の下着姿を凝視していた。
「本当に……全員来たんだ。あはは、ウケる。拓海くんも、健人くんも、自分の彼女より、この高校デビューの化け物の方がいいんだ?」
私は狂ったように笑い声を上げた。
「私の過去の写真を笑って、ハズレの地味子って罵ってたのに、結局はみんな、私のこの身体が欲しくて堪らないんだね」
「吉岡……お前が誘ったんだからな……っ! 文句言うなよ……っ!」
小林が獣のような声を上げて、最初に部屋へと踏み込んできた。
続いて、蓮が、拓海が、健人が、クラスの男子たちが、雪崩のように狭い部屋へと押し寄せてくる。
ドアが閉められ、鍵がガチャリと音を立てて回った。
高校デビューのメッキが剥がれた私の、本当の、自由で最高にメチャクチャな復讐劇が、今ここで幕を開けた。
3
「あ、は、っ……ん、あぁぁぁぁぁ……っ!!」
狭いレンタルルームの中に、何十人もの男たちの荒い息遣いと、肉体と肉体が激しくぶつかり合う、生々しくドロドロとした水音が響き渡る。
マットレスの上に押し倒された私の身体に、クラスの男子たちが次から次へと群がり、その剥き出しの質量を容赦なく突き刺してきた。
ゴムなんて、誰も使っていない。全員が、私の言葉通り、生のままで私の奥深くへと侵入してくる。
「う、うわ……吉岡、マジで最高だ……っ、デブ眼鏡のくせに、なんでこんなに気持ちいいんだよ……っ!」
普段は大人しい宮本くんが、私の髪を乱暴に掴みながら、激しく腰を打ち付けてくる。
そして、小林や蓮のピストンが終わるやいなや、私を貪るように覆いかぶさってきたのは、美咲の彼氏である拓海くんだった。
「吉岡……繭、ヤバい、美咲なんかより、お前の方が何倍もエロい……っ!」
学校では美咲を大事そうにエスコートしていた優等生の拓海くんが、今は生のまま私の奥深くまでその質量を突き入れ、理性を失って激しく腰を打ち付けている。その背徳感に、私の身体はゾクゾクとするような最高の蜜を分泌して彼を締め付けた。
さらに、由香の彼氏の健人くんも、私の太ももを乱暴に割り、拓海くんが引き抜いたばかりの熱い粘膜へと、自らの硬い質量を勢いよく挿入してきた。
「あ、は、っ……健人くん……っ、由香さんに言っちゃうよ……? こんな高校デビューの私に、生のまま挿入して、めちゃくちゃにしてるって……っ!」
「うるせえ……っ! あんな女どうでもいい……っ、お前のこの身体が、頭から離れなかったんだよ……っ!」
健人くんは私のウエストを折れそうなほど強く掴み、狂暴なピストンを繰り返す。
学校の人間関係も、カップルの絆も、カーストも、私のこの8キロ痩せて作り上げた肉体の前では、ただのゴミ屑のように瓦解していく。
部屋の中は、汗と、男たちの体液、そして私の身体から溢れ出る淫らな蜜の匂いで完全に満たされ、サウナのように熱く淀んでいた。
「繭……っ、繭! お前は俺のもんだ……っ、あぁぁ、他の奴に見せんじゃねえ……っ!」
神崎蓮が、プライドも何もかもを失った無様な顔で、私の首筋に歯を立てて泣き叫びながら、何度も、何度も壊すようなピストンを繰り返す。
「あはは、蓮くん……! 諦めなよ、私はもう、クラスのみんなのオモチャなんだから……っ!」
上目遣いで彼らを挑発しながら、私は何度も、何度も絶頂の波に飲み込まれていった。
生のまま突き入れられるたびに、脳髄がパチパチと弾けるような、強烈な快感が全身を駆け巡る。精神は限界まで擦り切れているはずなのに、私の肉体は、この過激すぎる状況に「過剰に適応」し、より多くの男を受け入れるために、熱く、締め付けを強めていく。
(ほら、見てよ。私を笑った世界。カースト一軍の男も、底辺の男も、他の女子の彼氏も、みんな私のこの身体の前に跪いて、生のまま汁をぶちまけてる)
消費されているんじゃない。私が、このクラスの男子全員の人生と理性を、この狭い部屋で一斉に捕食し、私の自尊心の肥やしにしているのだ。
これが私の、世界への、最もメチャクチャで完璧な復讐。
「――っ、くそ、出る、吉岡……っ! 生で、ぜんぶ出すぞ……っ!!」
男子たちが次々と限界を迎え、私の身体の最も奥深い場所に、ドクドクと大量の熱い質量を生のまま注ぎ込んでいった。
一人が果てれば、次の男子がすぐに私の身体を奪い、また生のまま突き入れてくる。
終わりのない肉欲の輪廻の中で、私もまた、何度も、何度も高い悲鳴を上げながら、絶頂の奈落へと堕ちていった。
「あ、ん、っ……は、あぁぁぁぁぁぁ……っ!!」
部屋の中に、果てしない水音と、男たちの獣のような咆哮が、夜が更けるまで響き渡り続けた。
4
深夜。すべての男子が疲れ果て、泥のように眠るか、あるいは現実に戻って怯えた顔で逃げ去った後。
私は一人、静まり返ったレンタルルームの床で、衣服を身に付けずに横たわっていた。
私の身体のあちこちには、何十人もの男たちにつけられた生々しい痕跡が残り、太ももを伝って、彼らが生のまま吐き出していった大量の体液が床に滴り落ちていた。
部屋の中は、完全に壊滅していた。学校のカーストも、カップルの秩序も、道徳も、すべてが私のこの身体の中で溶けて消え去ったのだ。
スマートフォンを見ると、学校の裏掲示板は、もはやお祭り騒ぎを通り越して、恐怖と狂気の書き込みで埋め尽くされていた。
『1年B組の男子が全員、吉岡繭にハメられて全滅したらしい。美咲の彼氏も由香の彼氏も全員行ったってマジ?』
私はゆっくりと立ち上がり、窓ガラスに映る自分の姿を見つめた。
メイクは完全にドロドロに崩れ、髪はボサボサで、身体は傷だらけ。
そこに映っていたのは、完璧な美少女ではない。
でも、もう不細工なデブ眼鏡の私でもない。
男たちの欲望をすべて貪り尽くし、クラスそのものを肉欲で支配してしまった、本物の『怪物の女王』だった。
「あはは……。完璧。これが、私の過剰適応の答え」
私の心の中にあった暗い穴は、クラス全員の生の欲望を注ぎ込まれたことで、完全に満たされ、誰も届かない深淵へと進化していた。
学校でのメッキは剥がれ、世界はメチャクチャになった。
でも、だからこそ、私は誰にも負けない無敵の存在になれたのだ。
明日から、学校の男子たちは誰も、私の前で大きな顔をすることはできない。彼らは全員、彼女を裏切って私の身体の虜になり、私の奴隷になったのだから。
私は崩れたメイクのままで、ゾクゾクとするほど美しく、妖しい笑みを浮かべた。
擬態JK・吉岡繭の過剰適応は、この狭い学校を完全に破壊し、これからもっと、もっと広い大人の世界へと、どこまでも侵食していく。
(『―第一部・完全大結末)
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
人気次第で続きを作成します。
ご期待下さいませ。




