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第一章 オハヨウゴザイマス

「オハヨウ……ゴザイマス」


機械的な、わずかに途切れる声だった。


洞窟の静寂の中に、その言葉は妙にくっきりと響いた。


「……」


運び屋は、しばらく瞬きをした。


目の前にあるのは、

瓦礫のように積み上がった鉄の山。


歯車、装甲板、折れた腕。


地殻変動に押し流されてきたのか、

古びた機械人形の残骸が、

通路の奥いっぱいに積み重なっている。


その山の中の一体。


凹んだ胴体に、歪んだ肩。

腕は銅線が見え、脚も半分埋まっている。


――だが、頭部だけは、こちらを向いていた。


淡い光を灯した二つのセンサーが、

ゆっくりと瞬く。


「……」


運び屋は軽く息を吸った。

そして、困惑しながらも。


「……おはよう……ございます」


一拍。


洞窟の空気が、妙に静まり返る。


セレストは思わず胸の内で息を呑んだ。


(……受け入れた……!)


目の前の状況は、どう考えても奇妙だった。


崩れた機械の山。


その中で、壊れかけの人形が挨拶をしている。


普通なら、驚くか、警戒するか、あるいは悲鳴のひとつでも上がる場面だ。


それなのに。


運び屋は、ただ普通に挨拶を返した。


まるで、朝の道端で誰かとすれ違ったかのように。


セレストは小さく息を吐いた。


(……やっぱり、この人は)


少し、変わっている。


洞窟の奥からは、金属が擦れるような音が微かに響いていた。


地下通路に漂う空気は、先ほどまでの岩の匂いとは違う。


乾いた鉄の匂い。


油と埃の混じった、どこか人工的な気配。


ドワーフ王国から機械都市へ続く地下通路。


崩れた機械の山の中で――


そのロボットは。


まだ、こちらを見ている。


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