エピローグ
「だからそう、緊張するな」
ブロン皇太子の細い指が私の頬に触れ、ドキッとしてしまう。突然、頬に触れられ、緊張するな……なんて! ここ、乙女ゲーの世界ですからね! ヒロインの攻略対象、揃いも揃ってハイスペックですから、こんなことされたら心臓止まるわーっ!
頭の中は完全に前世のノリです。
ちょっと待って、私。そんな浮かれている場合ではない。今は重要な局面。
「皇族だけに伝わる魔法。それをリアが知ったところで、何の問題がある?」
ありありだと思います!
「それは」「そうだったな」
突然立ち上がったと思ったブロン皇太子は、肩のマントをはらった。そして絨毯の上に片膝をつき、跪く。その上で綺麗な銀髪をサラリと揺らし、碧い瞳をこちらへ向けた。
「わたしが間違っていた。すまなかった。許して欲しい、リア。君が真意を話してくれず、わたしを信頼することができないと分かり……。感情のコントロールは、きちんとできる自信があったのに。相手がリアだと、どうもうまくいかない。暴走していた。もう二度とあんなことを言わないと、父と母の名にかけ、誓う」
「殿下……」
「わたしの横にいるのが、相応しいのかどうかなんて、考えないでくれ。むしろ、わたしがリアの隣にいるに相応しいのか……。不安になるぐらいだ」
これには驚き「そんなことは、殿下!」と思わず、手を伸ばしてしまう。それは何となく手が動いただけなのだ。でもブロン皇太子は、自身の両手で私の両手を包み込む。
またも心臓が止まりそうな状態になる。
「公の場に立つ時。わたしは皇太子であることを求められ、それに応える必要がある。私の隣に立てば、同じようなプレッシャーを受けることになるだろう。それに共に耐え、わたしを支えられるのは、リアしかない。ただ、二人きりの時は。ありのままのリアでいい。なぜなら二人なのだから。誰も見ていない」
「殿下、私との婚約破棄は……」
「リアが許してくれるなら、撤回させて欲しい」
婚約破棄は撤回……!
まさかそんな展開になるとは。まったくの想定外。
え、普通気が付く!? 何せ私はどこか抜けているから……。
これはどうしたらいいのかな。
ゲーム通りのシナリオでは、悪役令嬢であるリアが婚約破棄の上に断罪され、ヒロインとブロン皇太子が結ばれる。
でも今、私は……悪役令嬢は、婚約破棄はされていた。でもヒロインは自滅し、悪役令嬢である私に断罪はなく、さらには婚約破棄を白紙撤回したいと言われている。
大丈夫なのかな?
ただ、ブロン皇太子は「もう二度とあんなことを言わないと、父と母の名にかけ、誓う」と言っていた。それは、婚約破棄なんて二度と言わない、ということだろう。
それならば問題ないのでは?
「それにリア。わたしは戦略に長けているから」
「え」
「リアには申し訳ないが『ノー』の選択肢を与える気はない」
「!?」
婚約破棄を撤回する。これに同意するか、しないかで『ノー』の選択肢はない。
その理由をブロン皇太子はこう説明した。
私は……皇族だけに伝わる魔法の呪文を知ってしまった。もし抹殺されたくないならば、皇族の一員になるしかない……ということ。
まさかブロン皇太子って、ヤンデレでした……!?
で、でも、彼に絡めとられるなら、それこそリアにとっては本望?
「リア、答えを聞かせて欲しい」
ブロン皇太子が碧い瞳を甘く輝かせ、私のことを見上げ、微笑んだ。
~ fin. ~
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