表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

LESSON*2 火曜日

「きょーちゃん、いらっしゃーい!」

「店長、おじゃまします」

「この子?」

「そう。野暮(やぼ)ったいでしょー」


 火曜日の放課後。

 恭介に連れていかれたのは、ガラス張りのおしゃれな美容院だった。

 

 三十代半ばの筋肉質な男性が、恭介とオネェ言葉で会話している

 見た目がイケメンなだけに、なんだかとっても残念だ。


「こんにちは。トップスタイリストの、藪野(やぶの)です」

「はじめまして。菅原有紗(すがわらありさ)です」

「あら、ちゃんと挨拶ができるのね。えらいわあ」

「店長、甘やかさないで」


 ピシャリと恭介が(いさ)める。

 今日も辛口だ。


「ふたりとも、お二階へどうぞ。お足元に気をつけてね」

「はい」


 おしゃれな内装に、ついきょろきょろしてしまう。


「アリサ、はしたないわよ。階段は、前を向いて登りなさい」

「はーい」


 恭介に叱られた。

 あわてて前を向いたのが、悪かったのか。

 次の階段にかけたはずの足が、ガクンと落ちた。


「アリサ!」


 二の腕を、強い力でひっぱられた。


「ケガは!?」


 色素の薄い瞳をめいっぱい開いて、必死の形相でつめよられる。


「……ない、です」


 恭介が、安堵(あんど)したようにため息をついて、キッと眉をつりあげた。


「だから言ったでしょ! 落ちたらどうするつもり!?」

「ひえっ、ごめんなさい」

「あやまればいいってもんじゃないでしょ!」


 美形が怒ると、迫力がありすぎて、もはやホラーだ。


「あらあら、だいじょうぶだった?」


 店長さんが、パタパタと走ってくる。


「だいじょうぶです、すみません」


 騒がせたことを謝ると、店長さんがにこにこと微笑んだ。


「いいのよ。それよりね」

「はい」

「あなたたち、いつまで抱き合っているのかしら?」


 とっさに離れようとする私を、恭介がさらに強い力で抱きしめた。


「え! ちょ、恭介!」

「だから、階段で急に動くなって言ってるの!」


 服越しに感じる恭介の体温や、おもったよりガッシリしている体つきに、心臓がバクバクと音を立てる。


「手を貸して」


 言うが早いか、恭介が私の手をつかむ。

 手をつなぐのなんて、何年ぶりだろう。


「あんたが落ちると、皆が迷惑するの。二階まで、このままで行くわよ」


 ほっこりできる理由ではなかった。


「……はい」


 階下で店長が笑っているのが聞こえたが、恭介の顔がこわかったので、言うことを聞くしかなかった。


「そんな()き古した靴だから、靴底(ソール)が滑るの! 明日、買いにいくわよ」

「……はい」


 恭介がこわいので、明日の放課後も空けておこう、と(きも)(めい)じる。


 ちなみに私のコケシヘアは、うるつやサラサラ、毛先内巻きの、モテ髪ミディアムボブに、変貌(へんぼう)()げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ