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2 あっつい!!

 

 目を覚ました時、そこは地獄だった。

 


 いや、正確には違うのだが、実際こんな目にあったら誰でもそう思うだろう。

 

 バチバチと爆ぜる薪の上で赤々と燃え盛る炎。

 そしてその上で、木に手足を縛り付けられ丸焼きにされそうな……変顔コアラ(俺)。



「うあっちいいいいっ! 熱い! 死ぬ! やめろコラ!」



 ええ、そりゃ必死に叫びましたとも。


 俺を縛り付けた木を持って火に焼べようとしてた革鎧姿のマッチョなスキンヘッドの男にね。

 誰なんだこいつは! なんて思ってる暇はない。

 めっちゃ熱いのだから。

 

 シュウウと背中の毛が焦げる臭いが漂ってくる。



「やめろ! 殺す気か!」


「お! しゃべったぞ!」



 男は言うと後ろを振り返った。

 すると、同じような革鎧に身を包んだ別の男性が二人こちらへやってくる。

 二人も、最初の男に負けず劣らず筋肉質。歩き方もガニマタで肩で風切って歩いてる。

 チンピラみたいで頭悪そう……。

 もし変顔コアラじゃなく、人間の姿だったとしても、あんまりお近づきにはなりたくないタイプだ。

 


「会話できるのか」


「じゃあ、本当に聖獣なのか」



 男たちの視線が俺に集まる。



「な、なんだ……って、だから熱いって!」


「おおっ!」


「すげえ!」


「なに関心してんだよ! 助けろよ!」



 だが、どうやら助ける気はないらしい。

 こっちはめっちゃ必死なのに、腕を組んでジーっとこちらを物珍しそうに眺めている。

 それどころか……。



「うまいのかな?」


「味は二の次だろ、喰えればいいんだから」


「食うのかよっ!」 



 絶対絶命である。


 

 人を探そうとは思っていたよ。ここはどこですか? とかいろいろ聞きたかったから。

 でもさあ、その相手がたまたま食人族って、なにその偶然!

 いや、今はコアラだよ。だけどさ言葉通じてるじゃん! 

 あらやだ、まぬけ顔のコアラ発見! おいしそう! そうれ丸焼き! あ、しゃべった! でも食べるのだーっ! ってなる?


 

「あっちいい! つうか、マジでやばいから!」


 

 そう言っている間にも火は着実に俺の毛を蝕んでいく。

 

 直火じゃないのは、薫製っぽくするのか? 長期保存か?

 って冷静に分析してる場合ではない。



「お、お前ら! いいかげんに──」



 その時だった。二度目の天使が舞い降りたのは。



「あっ! なにやってるの!」



 現れたのは、先ほど緑生物から助けてくれた美少女だ。



「うがっ!」


「うごっ!」


「うげっ!」



 天使は颯爽と駆け寄ると、バカ男どもに一発ずつ蹴りをお見舞いし、我を救いたもうた。


 膝をつく男から木を奪い取り、縄を解いてぬいぐるみのように俺をキツく抱きしめた。

 服越しではあるが、そのふくよかな胸が顔面を包み込んでいく。

 見た目以上にかなりデカイ。



「信じられない! こんなかわいい子を焼くなんて! まさか食べるつもりだったの!?」



 状況を把握するため、胸は名残り惜しいが頭だけ振り返ると、男たちは正座していた。



「いや、だってそれ聖獣だろ。喰ったら不老不死になるっていうヤツだ」



 代表して俺を炙っていた男が答えると、他の二人もコクコク頷く。

 やっぱバカっぽい。



「そんなの迷信じゃない。第一、この子がまだ聖獣様だって決まってもないのよ」


「けど、話す魔物なんて古竜エンシェントドランゴンとか人魚とか、それこそ喰ったらなにかしら力に目覚めるものばかりだぞ」


「あなたねえ……」



 男の言葉に美少女は残念と言わんばかりに首を振る。



「そんなのただの噂じゃない。そんなこと信じてるなんて……」



 彼女の言う通りである。

 そんな都合のいいものある訳がないし、少なくとも人を食って手に入れるなんて断固拒否するべきである。コアラだけど。



「兎に角! この子は私のだから、手を出さないで!」



(わたしの?)



 若干気になる部分はあるが、言うと、彼女は男たちから少し離れた位置に腰を下ろした。

 そして、



「大丈夫?」



 腕の中にいる俺へ目を向けた。

 美少女だとは思っていたが、間近で見ると大きくて濁りのない瞳と、キメの細かい白い肌が更に彼女を際だたせていた。



「ま、まあなんとか」



 問いに答えると、今度はぶん投げられることもなく、彼女はほっとした表情を浮かべる。



「ごめんなさいね。彼らも根はいい人なんだけど」


「いや、君が謝ることではないから」


「ううん。さっきのこともあるから。まさかしゃべれると思わなくて、私も放り投げちゃったし」


「あ、あれね……。まあでも、さっきも今も助けてくれたから気にしなくていい」


「そう言ってもらえるとありがたいわ」



 まあ、本当のことだし。

 二度も命を救われて、ふざけんなし、なんて言うほど俺は愚かではない。

 あの男たちはまだ少し怖いが、この娘がいれば安全そうだ。……まだ皆正座してるし。


 それにやっと、まともに話が出来そうなのだ。

 あの男たちとのやり取りを含め、疑問は目白押しだ。

 それは彼女も同意見のようで、



「あなたにはいろいろ聞きたいことがあるのだけど──あ、まずは名前よね。私はユフィーリア。ユフィーって呼んで」


「俺はコアラ……の一条望。呼び方は好きにしていい」


「コアラノイチジョウ? じゃあ、コアラって──」


「一条、もしくは望でお願いします」



 まずは自己紹介。



 そしてやっと本題。



「さっそくだけど、ここってどこ?」



 そこから? とか今更? とか思うなよ。確認大事!

 ともあれ、こうして、ようやくある程度の疑問が解けることとなるのだった。



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