15 ん? いや、巻き込まないでください
「なるほど。それでユフィー殿と旅に出たのですか」
「そういうことだね」
焚き火の炎を見つめながら俺はアルバートや他の騎士たちの質問に答えていた。
夜になったので、野営をしているのだ。
街道から少し逸れて、森と道の間に開けた場所を見つけ、豚車を止めて夕飯を食った。
その後、女性二人はアナスタシア用のテントで就寝。
騎士たちは交代で見張りをしながら仮眠を取るらしい。
俺もユフィーに「一緒に寝よう(ハート)」って誘われたが、さっきまで寝てたので眠くない。それに狭いテントにユフィーのみならずアナスタシアもいるので、なんか添い寝したくない。
朝起きて目の前にあの凶悪顔があったら軽く死ねる気がするから。
少なくとも一生トラウマになりそうなので遠慮しておいた。
ユフィーは心なし寂しそうな顔してたけど仕方がない。昔テレビで見たPTSD特集が脳裏を過ぎっちゃったからね。
それで満点の星空の下、騎士たちと雑談がてら質問に答えているという訳です。
彼らのもっぱらの興味は、俺の存在そのもの。人語を理解する珍妙生物についてなんだけど、元人間に関してはこれまで同様誰も信じてくれない。
唯一理解したっぽいのは俺を召喚した張本人のスレイヴぐらいだな。
ドラゴンとかいるらしいファンタジー世界なのに、どうやらここでは転移とか転生とかは夢物語りらしい。
説明はしたんだけど、彼らの中でもやっぱり俺はパオパプの聖獣ってことで落ち着いた。ようは伝説級の珍しい生き物ってことだな。
まあ、いずれ人間に戻るから危害さえ加えられなければいいけどね。
夕食の時、喰ったら不老不死になるのか? ってあの噂を口にした騎士も一人いたけど、ユフィーに無言で剣突きつけられて、ビビってたから大丈夫でしょう。
「それで、聖獣殿」
「ノゾミでいいよ。俺もアルバートって呼ばせてもらうから」
「それではノゾミ殿。貴殿はこのハロウズ島の現状をどう思われますか? やはり危機が迫っているのでしょうか」
「危機? なんで?」
雑談も一区切りついたら、アルバートがなんか真剣な顔を向けてきた。
「最近、ローバル帝国の南に浮かぶ魔の島の住人たちが不穏な動きをしているという噂が各地にあります。そんな中、伝説の聖獣であるノゾミ殿が現れたということは、なにか繋がりがあると思うのは必然かと」
「いや、まったく無関係だから……」
「ですが、ラミス地方にある伝承では、ハロウズ島の危機には必ずパオパプの聖獣が現れ、人々を救うとあります」
「なにそれ!」
喰ったら不死になるとか、願い叶えるとか、なんだ、聖獣って噂多くね? 一人歩きどころか猛ダッシュで島中駆け巡ってんのか??
まあ、どっちにしろ俺は違うからね。
どっかのアホ親父が娘可愛さに暴走して召喚失敗で呼び出された存在。それが俺だ!
うん。自分で言ってて悲しくなってきた。そこはかとなく惨めな存在だ……。
「ええとね、言っとくけど、俺はそんなんじゃいからね」
「ですが、ある時には島を半壊させた竜族の怒りを鎮め、ある時は未曾有の飢饉を救い、またある時は、島を襲った暗黒の軍団を討ち滅ぼしたとあります。毎回その姿は違えど、すべてに一致するのはハロウズ島の危機には必ずパオパプの森に見たこともない生物が現れるのです」
ああ、だからパオパプの聖獣って聞いただけで、変顔のコアラでも信じるのか。なるほどー。
──とか納得してる場合じゃない。
このままだと面倒に巻き込まれる予感しかしない。
こちとらチートどころか一般人並みの腕力すらないんだからやめてよね。
だから俺は咳払いをして、わざと溜を作って教えてやることにした。
騎士くんたち全員に。
「いいか、アルバート、そっちの君たちもよく聞けよ」
「はい」
ありのままの真実を。
「俺は弱い!」
「は、い?」
「しかも、さいっこーに激弱い! あと頭も結構悪い。以上だ」
むなしい……。が仕方がない。
だって、なに? 魔の島って! なに、竜族って! バカなの死ぬの?
敵が暗黒の軍団なら、チューバッカさんがいるんだからフォースの名の下に勝手に立ち上がって、ダースベーダーでも名前を言ってはいけないあの人でもなんでも倒したらいい。
俺は死にたくないからね。怖そうなことに巻き込まないでくれる?
アルバートはポカンとしてるけど、分かってくれたのか。
いや、これ分かってねえや。
「……今は仮の姿ということですか」
とかぶつぶつ言ってるし。他の騎士もその言葉にうんうん頷いてるよ。
ダメだこりゃ……。




