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10 励ましベタ……

 

 リムリスの街に着くと豚車と別れ、さっそくギルドへ向かう。

 冒険者ギルドは、街の中央に位置していて、簡素な二階建ての建物だった。

 なんか、外から見た印象は普通である。

 昼から騒がしい荒くれ者が集う場を想像していたが、意外と静かだ。

 

 と、入り口から丁度ゴドスが出てくるところだった。 



「あ、探したぜ」



 ゴドスはこちらに気づくと、懐から袋を取り出してユフィーに手渡した。



「この間の報酬だ。報告は済んでる」



「ありがとう」



 そういえば、ゴブリン討伐の報告は翌日するとか言ってたな。

 俺が拉致られたせいで、そのままだったのだ。



「また機会があったら頼むぜ。ユフィーがいると、楽出来るからな」



 ゴドスはそう言って豪快に笑うと、俺に目を向けた。



「お、聖獣様もいたか。元気そうだな」



「喰おうとするようなヤツは、お前ら以外いないからな」



「ん? 確かに。パッと見、ピンク色の気持ち悪い生き物だ。そうそう喰おうなんて物好きはいねえだろうな」



 嫌みで言ってやったんだが、ゴドスはそれもガッハッハッハと豪快な笑いで受け流す。

 案外さっぱりしていて嫌いではないが、「じゃあ、またな」と街の中へとさっさと消えて行った。

 そういうところもさっぱりしている。まあ、俺たちがこの街からいなくなるとは思っていないからだろうが。

 少なくともユフィーとは一緒に依頼を受けられるぐらいには顔馴染みだから、消えるとなれば残念がるだろう。



「行きましょう」



 ユフィーは、こちらはゴドスに対する思い入れは特にないのか、受け取った袋を腰の白皮ポシェットへ入れると、見送るでもなくギルドの扉を開いた。



 中は、右手に待合所のようにイスとテーブルが並び、左手に受付らしいカウンターが三つあった。

 なんか暇な市役所みたいだな……。やっぱりイメージと全然違う。


 ユフィーは開いていたカウンターへ腰掛けると、変形メイド服のような制服姿の受付嬢にカードのようなものを手渡す。

 ちなみに受付嬢は、ほんわかした雰囲気の巨乳だ。

 今日しか会えないと思うとちょっと残念。



「おはようございます。ユフィーさん」



「おはよう」



 受付嬢はカードを読みとり機のようなものに差し込む。



「先日のゴブリン討伐の依頼は、報告を受けていますので完了の記録になります。報酬はゴドスさんへお渡ししてあります」



「ええ、受け取ったわ。それで新しい依頼を受けたいんだけど何か一人で出来そうなのある?」



「そうですね。夢幻草の採取というのがありますが、オーガが出没する地域なのであまりお推めはできませんけど」



「ちょうどいいわ。それにする」



「ちょうどいい、ですか?」



「あ、ええと。ちょうど私も欲しかったの。ほら、夢幻草って高級食材だけど、エキスを塗るとお肌がスベスベになるじゃない」



 オーガって名前からして強そうだし、きっとユフィーは死んだことにするには丁度いいと思ったのだろう。

 焦った顔で取り繕っている。



「最近、ちょっと寝不足ぎみで」

 


「……なるほど」



 受付嬢はユフィーの顔を凝視すると素直に納得した。



「確かに、目の下にクマができてますね」



「え!? クマ? うそ!」



「え!? そのせいじゃないんですか?」



「あ、そ、そう! そうなの。もうクマがすごくて、オーガどころじゃないの」



 ……なんだろう。このやりとり。

 ユフィーって嘘つくの下手なのな。

 まあ、クマとか気にしちゃうところは可愛いけど。


 

「でも、いくらユフィーさんでもオーガには本当に気を付けてくださいね」



「もし遭遇したら逃げるわよ。それより早く帰ってパックするわ」

 


「アハハ、そうですよね。そのクマでは」



「えっ!?」



「あ、なんでもないです。──それでは夢幻草の採取、お願いします」

 


 受付嬢……悪気はないんだろうけど、ユフィーなんかドヨンドしちゃったぞ。

 俯いて落ち込んでるぞ。

 

 よし、ここは昨日何もできなかった俺が、名誉挽回にせめて励ますしかない。



「ユフィー」



「……なあに」



「ドンマイ!」



「……」



 オオオオオッ!

 俺はアホなのか!

 なんだドンマイって! 

 まったく慰めてねえじゃねえか。親指まで立てちまったよ!

 けど、なんて言っていいの分からんのだよ。

 やっぱダメだよ。落ち込んだ女の子元気づけられないよ。

 普通には話せるけど、こういうのはマジで苦手だ。



「フフ、なあにそれ」



 あれ、けどユフィー、表情が和らいだぞ。

 なんか間違ってる気はするけど、結果オーライってことでいいだろう。

 俺の頭に頬をスリスリしてるし。



 ん? なんだ?



「……かわいい」



 手続きを終えた受付嬢が、ふと俺を見てなんか呟いたが、気のせいだろう。



 俺はぶさいくだ。

 

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