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俺はラノベが大嫌い  作者: 壬生京太郎
第二部:魔王子襲来編
9/18

第一話『剣の乙女(新キャラ登場)』

 暑い。

 開け切った窓からは、校庭から掛け声が入ってくる。

 高校にもクーラーが必要なのではないか。

 なんて、俺がこうして学校生活を続けていられることが奇跡的なのだが。

 3か月前のあの事件。

 事情聴取は何回かあった。もちろん、正直に回答した。同じことを違う人間に何度も説明させられてうんざりしたものだ。

 だが、それがピタリとやんだ。

 こちらが気味悪く思うほどに。

 読の方もそうだったらしい。

 マスコミは未確認巨大生物出現と報道したが、その衝撃にしては扱いは小さかったように思う。そのため、眉唾という人と隠ぺいという人がアンダーグラウンドで騒ぎ続けてはいるものの、燃料不足で停滞気味。

 謎のヒーローについては、鮮明な画像も警察発表もなく、ネタ扱いだ。

 いくつかの仮説は立てられる。

 政府規模の秘匿、すでに世界同士の取り決めが存在するなど。

 しかしまあ、それについて調べる気にはなれなかった。

 俺はもう、のんびり暮らせればそれでいい。


「お忘れ物です、ソードさま!」


 教室の扉が開き、場違いな幼い声が響いた。

 まだ年端もいかぬ金髪碧眼の少女が弁当の包みを手につかつかと歩み寄ってくる。

「言ったではありませんか。今日からこのニムエがお昼をお作りいたしますと」

「いや、だから、いらないって」

「なぜです!」

 ニムエはずいっと俺に迫った。


「弁当を作るのは家内の務め! ソードさまはニムエに恥をかかせるおつもりですか!」


 察してほしい。クラスからの痛いほどの視線。

 これまで目立たぬよう(それでも容姿的に仕方がないのは分かっているが)務めて生活してきたのに、入学当初に逆戻りだ。

「なあソード、この御仁は」

 聞いてくれるな、佐竹山くん。

「ニムエと申します。ソ-ドさまとは契りを結び、一つ屋根の下で暮らす関係です」

 にっこり笑って答えるニムエに、クラス中が大きく湧く。

「あのさ、読……」

「大丈夫」

 大騒ぎの教室で、一人静かにラノベを読んでいた読が顔を上げる。

「ソードくんの話だと、一緒に来た人はいなかった。契りとは契約。ソードくんがこちらに持ち込めたものと言えば……」

 そのままふっ、と小さく笑う。

「美少女が聖剣――よくあるパターンね。今更驚くことでもないわ」

「ソードさま、なぜでしょう。ニムエ、あの方と仲良くできる気がしません」


 俺はニムエを引っ張り出した。

「いやです。せめて、ソードさまと昼食をご一緒に」

「お前食事とかしないだろ。帰れ」

 そのままずるずると廊下を引きずっていく。

「お待ちを、お待ちくださいソードさま」

「校内は部外者立ち入り禁止なの」

「違います。感じませんか、この気配」

「気配?」

 俺は足を止めた。

 確かに違和感がある。

 竜眼が反応しないから気付けなかった。

 しかも、過去にも感じたことがあるこれは……

「ニムエ」

「はい」

 ニムエは頷いた。

「魔族ですね。それも高位の。魔力を消している辺り、厄介です」

 右目で周囲を探る。

 やはりなにも見つけられない。

 そうこうしているうちに、気配もまた、この学校から消えてしまった。

「また来る、かな」

「ソードさまの学校に、偶然に、なんてことは考えられません」

 まいったな。

 何事もない、とは思えないけれど。

 何事もありませんように、と俺は祈った。

第二部開始です。

多分文章量的には第一部と同じくらいで完結すると思います。

コメディとシリアスのバランスも第一部準拠のイメージですので、お気に召してくださった方はまたお付き合いいただけるとありがたいです。


大体週ペース更新の予定ですが、私事で一日二日前後することがあるかもしれません。

そんな時のためのブクマ……ブクマです……(ステマ

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