設定資料 小ネタ考察
本編年表(ポーランド解放編)
1812年 晩春〜初夏(深夜)ヴェルサイユ宮廷厨房にて。
マリー、エリザベート、カレームの3人が、他国の味をリスペクトした芋料理を徹夜で開発。
迫り来る東方の不穏な影を前に、静かなる食の連帯が産声を上げる。
1812年 6月(昼)
地下書庫で引きこもる最高農政官ナポレオンの元へ、煤まみれのルイ16世や泥イモを持ったマリーが乱入。カレームに窘められる中、ロシア軍がポーランド国境(ネマン川)を越えて侵攻を開始したという悲報が届き、軍神が不敵に立ち上がる。
1812年 7月〜8月(夕)ポーランド平原の西端。
ブリュッヘルの神速の開墾陣とルイの蒸気鉄獣が、襲いかかるロシア先遣隊を圧倒。
遅れて現れたナポレオンが、ダヴィッドの名画さながらに白馬の上で剣ではなく「じゃがいも」を掲げ、全欧州連合に向けて『各個撃破(胃袋の各個救済)』と「前進!」を号令。
1812年 9月(決戦序盤)カルパティアの隘路にて。不敗の老将クトゥーゾフが放つ氷塊の巨砲(冬将軍の先触れ)にダヴーやネルソンが窮地に陥るも、ベルティエの秒刻みの軍令と、カレームの『濃縮肉塊ポテトスープ』の力ずくの配給により、ロシア五万の死狂いを無血で無力化。
1812年 10月(決戦中盤)フランス事前会議にて。
物資と時間が枯渇する中、ナポレオンが「拠点を絞る籠城」を提案。ルイから「フランス本国のジョセフィーヌ(正妻)にチクるぞ」と脅され、軍神が本気で青ざめるほんわか宮廷劇が勃発。
1812年 11月〜12月(決戦終盤〜グランドフィナーレ)
後がなくなったクトゥーゾフが「ナポレオン本陣への一点集中特攻(逆ユリアン特攻)」を仕掛けるが、ルイの『鉄甲の駆動大釜(戦車の概念)』の爆走と、マリーの泥まみれの笑顔、そして19歳のベートーヴェンが奏でる『運命』『英雄』『月光』の爆音の前に完全瓦解。
ナポレオンの「剣を鍬に、大砲を道に」の演説が響き、マリーによる名言の究極の回収「パンがなければ、ケーキを食べればいい(未知の豊穣を探しましょう)」が炸裂。
天からの黄金の光のなかに350年前の聖女ジャネット(ジャンヌ・ダルク)の幻影が重なり、全欧州の胃袋と心が温かく救済されて大団円を迎える。
史実とIFのクロスオーバー小ネタ(歴史オタクへの解説)
1812年の大反転史実ではフランス軍が寒さと飢え(ロシアの焦土戦術)によって数十万の命を失い、ナポレオン没落の契機となった「1812年ロシア遠征」。
本作ではその年号をそのまま使い、逆に「フランスの飯の温もりが、ロシアの寒さと飢えを丸ごと溶かして完全無血降伏させる」という、究極の歴史IFの快感を描き出しています。
ベートーヴェン(当時41歳)と「19歳の青年」のIF史実では1812年当時、すでに『英雄(3番)』『運命(5番)』は完成していましたが、本作では「19歳の若きベートーヴェンが、じゃがいもを掲げて民を救うナポレオンの背中を見て、頭の中に『英雄』や『運命』の旋律を爆発させる」という、時代を前倒しにした贅沢なIFの熱量へと昇華されています。
(※のちに1824年に発表される『第九・歓喜の歌』の大合唱が、この1812年のポーランド平原で人類融和の歌としてフライングで響き渡るカタルシス)。
編集後記:歴史の円環と“魔術師”の影(メタ考察)最後に、歴史の悪戯とも言える奇妙な一致について触れておこう。遥か未来の宇宙、某スペースオペラの世界線において、「魔術師」と呼ばれた、あの自称歴史家の黒髪の男。
彼の弾き出す不敗の戦術(各個撃破や要塞籠城戦)の基本の多くが、この最高農政官ナポレオンの算術から強く影響を受けているのは、戦術史における必然である。
しかし、「天才的な頭脳を持ち、歴史の特異点として世界を救いながらも、本音では退職金をもらって、田舎の書庫に引きこもって静かに歴史の研究がしたい」という、あのどうしようもなくめんどくさがりで人間臭い性質までが、この1812年の世界のボナパルト閣下と生き写しのように酷似しているのは、果たして単なる歴史の偶然なのだろうか?あるいは、時空を超えて美味しい珈琲(あるいは紅茶)の湯気の向こう側で、二人の天才書庫番が「やれやれ、これだから現場の脳筋どもは……」と、互いに苦笑いを交わし合っているのかもしれない。




