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社畜勇者を辞めて、そのあとは……  作者: 緑川
めくるめく休日は瞬くうちに

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1/5

半歩 ただの現実逃避です

A&B ✖︎


A

愛玩+産業×野生動物の品種改良=家畜


B

産業−人権×野生動物の品種改良=社畜


A=B ◎

 ぁぁ、あ。


「あ」


 ここは……。


 真っ昼間の灼ける日光が肌を照りつけ、絶えず滲み出る汗から小麦色に染まりやがる体に膜を生む。


 塩味の効いた(あか)は勝手に剥がれ落ち、幾度となく陰る視界に呼応して、唾液(だえき)を求める舌が(たる)んでく。


 頭ン中までカラッカラで、かんぺき干物気分。


「さっさと動け、ゴミどもっ」


 おかげで勇者のシンボル脱ぎ捨てて、そこいらの最っ低な自己紹介モブと変わらんザマに格落ちか。


 違うのは、精々離れん剣と仁王立ちくらいなモン。


 この、


 彩りだとかがお亡くなりになった……ハイ色の眺めには5代目勇者(60年余り)の歴史ン中でも一際ひでぇ、鎖に繋がれる惨憺(さんたん)たる敗者が重労働を強いられている。


 木陰じゃ、


 その()()ってのと同じ軌跡とやらを歩んだ()()()の野郎どもの女を雌にする、出荷寸前の豚擬き数匹が不似合いな絢爛豪華(けんらんごうか)を身に(まと)い、あざけり笑う。


 オレァ、不思議なことに、そこにいた。


 動けそうにねぇ、踏み出せそうにもねぇ。

憎いとさえ思う、眩む太陽と暗む日陰の真ん中で。


 いまは、本来だったら雪解けの季節だろうに。


 この国の、この(クライスター)の破壊を、ぽっと出の一神教様が裏でコソコソ引き連れてきた気持ち悪ぃ信者が、


「休むなぁ!」


 望まねぇ形でクソ親父の背を見て育っちまったヤツの前に、英雄という絶対的な象徴を振り翳して――。


 おれが、決めたんだよな。


 でも。


 春がくれば、春さえくれば、きっと全て。そう自然と、小鳥が自由に羽ばたく大空を見上げていた。



「グチャ」



 擬音だか断末魔なんだかわかりたくもねぇ悲鳴、猛禽類にあっさり地面に叩き落とされるまで、は。


 歪んでく、「っ」――ぐちゃぐちゃに。


 空っぽでも吐き出せそうな胃袋で身が縮こまり、俯きに噎せ返んばかりの喉に水と薬を流し込んだ。


「ッハァァ、ハァァ」


 多少マシになる程度の浅ェ呼吸に(つる)んだ苦しい動悸より、さっきの姿形が誰かにバレる方がずっと。


「おいっ!」


 ()()()の分際で、偉っそうに吠えて間も無く――野太い骨の叫びが、その場を包み込んだ。


 瓦解。


 爆発的な耳を(つんざ)く音立てて、新たなお城は救えん大衆見下ろす前にみっともねぇ最期を迎えました。


 めでたしめでたしの幕引き、その前、その真下。


 全身鎧でも極めて危うい鉄骨雨。ましてや無防備でもろにとなれば、絶対的な()は免れないだろう。


 それと、同義語。


 使命感のバカが丸腰(オレオレオレ)の背中を押して、全部押し殺した()()()を大きく踏みしめ、瞬く間に眼前へと。


 皮肉にも、


「――!?」


 奴隷の烙印を焼き付けた手の甲から迸る閃光が、埋もれゆく暗闇の中の一直線の道しるべとなって。


 オレは、必死に手を伸ばした。


「はぁっ」


 けど、


「はぁぁ」


 おそかった。


 ガラクタの残骸で築き上げられたなきあとには、ちっぽけな佇まいであろう男が空虚な掌を覗く様。


 それ以外に、何も見つかりやしねぇ。起き上がることも許されない場所に、呑み込まれたんだから。


 でもっ、


 外套(マント)すら背負っちゃいねぇで、こんな職業にも合ってねぇ仕事やらされて、大体誰かも知れんヤツを望んでもない役目をなさな、きゃ? ん? あれ?


 なんのために。


 徐に振り返れば、たくさんの揺らめく人の影が、

「ぁ」

眼差しが、奇跡的に無傷の至る所に注がれていた。


 俺を、


 オレをそんな目で、見るんじゃ……ねぇッッ!!





「いらっしゃいませ〜!」


 人混みに喧騒の交わる、飯処。


「ご注文の受付、会計はコチラからでーすっ!!」


 拝命した英雄の(バッジ)に唯一の汚点となる恩典――、


「これを」


「はい」


 爪弾く過去も、広げたお手製巾着の色あせた羊皮紙似の生地面積がますにつれ、一二を争う輝きに。


「あのお客様、コチラはいつものとは別物ですね」


「え?」


 古臭せぇサビを()びた、()()()身分証(ドッグタグ)()()()()()。刻まれた種族の名は――エルフとドワーフ、だった。


 あの、ふたりぃの。オレ、たちが。


「どうかされました?」


「いやっ」


 我に返ろうとも震えのやまない指先を包み込むようにもう一方の掌で覆い、そっと懐へ仕舞い込む。


「なんでもないです」


 大して歳の変わらねぇ受付嬢に小首を傾げられ、


「すみません、間違えていたみたいで」


 本命を、即座に空っぽな手元に差し出した。


「いえ、お預かりします。これは、またお返しに」


 ン、こりゃクソ親父とオレのが重なって。

どうにかなんないかな、このシステム。


 より一層、錆びつく栄光を柔な指先から受け取り、脳内に何かが走った。


「あの、どうされました?」


 艶やかで短な髪のなびく幼さの残った面差しに濁り気味な瞳で奥底が澄み、じっとオレを見つめて。


 なにか、なにかが。


「ぃいえ、()()()()()()()()()


 んなワケがない。


「はぁ……失礼ですが、ご確認のためにお名前を」


 疲れ、だったんだろうか。


「オルス・クライン」


「申し訳ありません。フルネームでお願いします」


 チッ。


「5代目勇者、オルス・クライスター・クライン」


「有難う御座います、では今回も無料になります!」


 毎回やるのか、このくだり。新手の公開処刑か。


「どうも」


 手に舞い戻った2枚は別々に大雑把にポッケの中に、


「ご注文の品は彼がアチラにお運び致しますので」


「ゴウッ」

配膳サービス係の緑の小せえおっさんの後に続く。


「ふぃー、夜更けになっと急に冷え込むんだから」


 ン?


 すれ違う、冒険者ご一行を横目に席に腰をおろす。


「あら、旧字じゃなくなってら」


 剣持ち青年がメニュー表の前で多角的な視点からイチャモン付けてるよ。


「王都だからな」


 すかさず、槍持ちのフォロー。


「無駄に最新式〜」


 耳長族の同調。


「どこぞの勇者様のせいでな」


 鉱石愛好家の愚痴。


「周りも真似して、文字は新しく切り替わったはいいものの、当然ながら全世界の識字率が急落――」


 いつの間にやら、無機質な胸に手を当てていた。

眠ってるモンが蘇りそうでならない。


「あぁ、酒も頼めるか」


 咄嗟の逃走が脳裏をよぎり、口走ってしまった。


「ア゙ヴッ」


「樽で」


「エ゙ッ」


 また、昨日と同じ。

 この、繰り返しだ。

豆知識、その1。

例の崩落事故の眼差しは奴隷仲間だけのモノで、それ以外の連中はチラ見ぐらいか、見向きもしていない。


その1のその後、

律を唱える思い出(リフレイン・メモリー)を編み出した偉大なる人物――、その者は同じくエリートの息子とともに王都に居住し、鎖に繋がれる側として、例の事故現場にいた。


そして、あの瓦解に呑み込まれたひとりであった。


運良く離れたところで巻き込まれずにいた息子は、不貞腐れてトボトボ歩きの勇者とすれ違いで、救出に。


今までまともに扱えずにいた、父の魔法である――律を唱える思い出(リフレイン・メモリー)を初めて使用し、再会を果たす。


だが、


建築材料の一部、銀白色の長く分厚い金属板からは、粘り気のある真っ赤な鮮血が一面ベッタリと広がり、肉から無理やり剥がされた薄皮が引っかっていた。


魔法のチカラにより元のカタチに戻っていくにつれ、さっきまで食べていた残飯を撒き散らす腸やオモチャだと疑いたくなるような同じ目の色の紐付き目玉が。


また、能力発動を知らず、奇跡的に生存・救出に遅れて乗り込んだ者たちは、巻き添えを喰らって、死亡。


勇者は、周囲の重要人物の保護に当てがわれ、不在。


噎せ返るくらい多種多様な鉄の匂いが充満し、誰が誰なのかもわからない骸と呼ぶべきかも怪しい肉塊に、


放心状態で只管に立ち尽くしていた息子の足元に、

手を握りしめたままもげた父の腕が転がってきた。


その日、青年は記憶魔法のずば抜けた技術力の高さを買われ、凄惨な事故処理の一切を単独で命じられた。


傷一つなく、再利用が可能とされる材料のために。


青年のその後を知るものは、誰もいない。


ただ、現場に奴隷の烙印を押された手を捨てて……。




豆知識、その1の派生。


奴隷の手の甲に施された烙印。

これにはレベルがある。

簡単に分けると青、赤、紫に。


問題を起こす度に、一番最初から最後に変色。

どんどん警戒度やら危険度が上がっていくとか。

もちろん、役職も色々と中心から遠ざかっていく。


そして、紫を超えば、烙印の術が強制発動して、肉体とリンクする魔素ってのが循環する臓器が、全身に巡る魔力全てを結晶化し、肉体から引き剥がすんだと。


それが、赤と青に分かれるからなのが、所以らしい。


言っとくと、その結晶化したのは純度と総量によっちゃ、末代まで食うに困らん金が手に入るんだってさ。




豆知識、その2。

ギルドは酒場の合併することで収益に大きく貢献し、なんとかやってけるが、夕方から深夜にかけてはっちゅーしゃ(依頼人)とアルバイト(ぼーけんしゃ)、


この両方が目に見えて減ってしまう。だから近年では夕方から飯処に、深夜に居酒屋に大変身するそう。昼間の酒場との明確な違いは確か税金? だったかな。


従業員も、ギルドの受付嬢以外は変更しないらしい。

(ギルドは24時間営業中で、業務は続いているから)


ちなみに、一番給料が高いのは受付嬢。労働時間も受付嬢。一年で、高等学園の学費を稼げるくらいには。




豆知識、その3。

飯処のアイドル・料理人のお手製、大雑把レシピ

旬の採れたて野菜[根菜がお勧め]や、きのこを、

出来るだけ切らずにそのまま形を保ったまま、

尚、微量魔素・無農薬の野菜の皮は残した上でと、

肉は羊か牛の{部位おまかせ}やや塊のままに、

その地域の香り逃げぬ出汁と調味料と共に煮込み、

あとは火が通るのをじっくり待つだけ。


寒い日に心まで温まる絶品料理、ぜひご賞味あれ!

占めて、銅貨6枚。仕事終わりの客には格安で販売?




その3、の続き、

飯処の新鮮な食材。

新感覚の魔法・術を用いた冷凍食材に依存せずに、大国の王都ならではの流通網で取り寄せは一瞬だそう。


魚は海が近くになく輸入で鮮度に難あり、他の店じゃ肉は神聖なモノで場違いだといい、主に雑穀や豆類、他、主食など腹持ちの良いものを入れるそう。


でも、ココは日によってパンや粥などと合わせ、

満足のいく言わば定食メニュー。




その3、の続きの派生。

《あのパンと視線の謎》

その日は運悪く、パンの材料が尽きていて、

奴隷用のしか無かった。


だが、メニュー表も見ずに「いつもの」を貫く、勇者様御用達の無茶な要望に已む無く応えた結果だった。




その3、の、続きの派生の寄り道。

例の飯処に在籍するゴブリン、

今ではホールスタッフ役を担当しているが、

昔はコックでかなりの腕前で評判も良かった。

実は現在のアイドル受付嬢に料理を教えたのも、彼。


特に周りからの命令があったワケでは無く、

食材を台無しにする行為と成長を求める受付嬢に、

プライドが昂ったからとされ、周りはそれを知らず、一刻も早く解雇の口実を得ようとして役職を変更。


だが、肉体に奴隷の烙印を宿している者には珍しい、当の本人は現状に満足しており、割と人生を謳歌。




その3、の、続きの派生の寄り道の原点回帰。

尚、受付嬢は逆に今の在り方に不満を抱えており、


無事に学園を卒業したは良いものの、訳アリの家出の身でかなり費用がかさんでしった結果、まかないや住み込みの好条件の理由でココへ帰ってきてしまった。


早く独り身を脱却、あるいは生きがいを求めている。


主にクソ客の対応に限界を感じ、いつか見せしめに誰かしらぶっ殺してやりたいと心の底から願っている。




豆知識、その4。

歴史的快挙を残した人物の身分証には二つ名を刻む。

そして、一個人の称号&異名は、異常者に値する。

初めのうちは勇者もその一つだとか。




その4の派生。

冒険者が持つ身分証、これはギルド創設者が元々、戦争経験で、夢だけ見る連中とは別に、先を見越して。だから、所属の手続きんとき、2枚もらえる。




(めちゃめちゃメタ枠)

今後、タイトル上のタグが邪魔だと思ったら、号泣されてるマークで不満を表してくれると、とってもありがたいです。


それが面倒だったら、寝て忘れてください。


あと投稿は基本的に1日1話、

時間(23.36)も、固定です。多分。

今日は(2026/05/11)はまだ、あと一話あります。

上記の時間に。長かったので、割りました。

ただ手動なので、多少のズレは悪しからず。


ココまで見てくれてありがとうございます。

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