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エピローグと怪電波

「闇の森を抜けてノルトライン領、いや魔女の国に入るというのかい。じゃあこれ以上は案内できないね。」


 ルテティア王国の北限、旧皇国との国境付近にある、とある鉱山街に荷馬車が辿り着いた。ルテティア王都から続く道は、さらに国境、そして旧皇国の中へと向かって伸びるが、ここから先の道は手入れされておらず、『この先危険』『許可証を持つもの以外立入禁止』などといった、人を威圧する看板が来るものを拒んでいる。

 皇国は数年前に発生した政変からしばらくして、全土を魔女と呼ばれる女とその配下たちが支配する荒廃した恐怖制国家へと変貌してしまった。鳥は飛ばなくなり、虫は声を潜め、商売人はかの国を迂回した。

 荷馬車の主である商人も、ここまで乗せてきた旅の女に向かって、この先、すなわち魔女の国にはいかずに、王都へ折り返す旨を告げた。


「何のようで行きたいのかは知らないが、ここから先は命知らずしか行かない土地だよ。」

「知ってるわ。ありがとう。それでも、私には確かめないといけないことがあるから。」


 旅の女は、ふわりとした翠色のクラシカルドレスを纏っている。そんな出で立ちとアンバランスな長い剣を肩にかけた女は、にっこりと商人に礼をして、いくらかばかりの銀貨を渡して荷台から降りた。


「稀に命知らずの商人も居るから、まぁ、探してみるんだね。もう夕暮れだから、一晩止まって、朝になってからにしな。なにはともあれ、気をつけて。」

「ええ、商人さんも。」


 道の先の国境地帯は、闇の森と言われ、鬱蒼と生い茂る木々で覆われているが、完全なる自然というわけではなく、馬車が定期的に通ったのであろう轍が見てとれる。


「魔女の国、ね。」


 古傷を庇うように歩く彼女は、昔を懐かしむようなまなざしで、森の向こうを見つめる。


「ヨハル。あの時、確かに私には首を落とされ死んだ感覚があったのに、私はこうして生きている・・・。きっと、あなたが身代わりになったんだね・・・。」


 とりあえず、日が落ちてきた。酒場にでも行って、国境を超える商人を探すとしよう。


「なんだい、あんた、魔女の国に行くのか。よしておくれよ。」

「やめときな、お嬢さん。あんたみたいなのが行くところじゃない。あの国は、若い女はみな魔女の城に連れていかれて生贄にされちまうって噂さ。」

「ふーん・・・・。」


 やはり、そんな商人は見当たらない。仕方なく、きつい酒を頼んで夕食をとしよう。こんな山の中じゃあんまり新鮮な料理にはありつけない。干し肉のスープと、野菜炒めを魚に酒を飲み干す。


「ふうん、お姉さん、いい飲みっぷりっスねえ。」


 前髪に目が隠れたそばかすの女が話しかけてきた。


「あなたは・・?」

「あたいはポーリア。ウィローズ商会の理事代理さ。国境を越えられる商人を探してるんだろ?じゃあ、あたいを雇いなよ。・・・って、あんたはたしか・・・」


 お互い、どこかで見たことある顔だなと感じる。


「私はエレナ・ヴィジランテ。ちょっと、羞明の魔女とその魔法少女って奴に用があってね。」

「奇遇だね。あたいもずっと、そいつらを探してんだ。突然消えちまったオフェリア様の唯一の手掛かりだからね。」

「オフェリア・・・ええ、覚えているわ。あの煩い・・失礼、愉快な商人ね。」

「これも何かの縁だよ、姉さん。お代は負けとくぜ!一緒に行くかい?」

「ええ、もちろん。」


 エレナとポーリアは、酒を酌み交わし、ふたりで、これから始まるであろう旅の終着点を思い描いた。それは、失ったときを取り戻すため、忘れてきた過去を拾い集めるため。


 ーFinー


***


ザザザ・・・


ザザザザ・・・・

 あー・・

 あーあー・・・聞こえておりますか?


 よかったです。やっと、皆さまに電波が届く宇宙距離まで帰ってこれたようです。


 さて、皆さま。この物語は、ここで唐突に終わりを迎えるわけですけれども、魔女の執念というものは、決して衰えるものではありません。宇宙の果てで、ヨグ=ソトースのごとき一瞬の永遠を味わってきたわたしが言うのですからきっと間違いではございませんよ。


 こんな、カタルシスのかけらもない終わり方は、皆さまからしても、許せないでしょう?


 ずる賢い悪しき羞明の魔女にはきっと鉄槌を食らわせないといけないですし、饗宴の快楽をむさぼる白き魔法少女には絶望を与えないといけませんよね。


 でも、この後の顛末は、皆様のご想像にお任せすることにします。彼女たちが、一体どんな悲惨な末路を迎えたのか、どんな混沌とした世界になったのか。とてもとてもここでは書けないくらい、筆舌に尽くしがたい愉悦・・失礼、恐ろしいものですので。


 ですから、賢く知性のあふれる皆さまにおかれましては、いろんな未来を考えてみてくださいね。きっとそのなかに、しっくりとくる結末があるはずですから。



 さ、縁もたけなわなところではございますけれど、わたしばかりが長々と喋ってしまいましたから、そろそろお開きにしましょうか。ではまた、どこかの荒野でお会いしましょうか。





 退屈を持てあます皆さまへ、愛を込めて。

 混沌と矛盾の魔女ミオ・サラサトゥリエ 拝

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