ライラに真夜中に人気のない所に呼び出されてしまいました
土曜日はそれからカーリナ魔法師団長と会長の前で徹底的に魔法の練習をさせられたのだ。
カーリナさんは火の攻撃魔法が得意で会長の土魔法のゴーレムと戦って見せてくれたりした。
でも、その後やらされて、散々な目に遭ったけれど……
結局その日は一日中、王宮にいて、帰ってきたら本当にへとへとだった。
そのまま夕食を食べるた後にバタンと寝てしまったのだ。
日曜日は起きたら昼回っていた。
慌てて飛び起きて、宿題を始めた。
宿題で、判らないところがあったので、ライラに聞こうとしたけれど、ライラはいなかった。
そう言えば最近あまり話していない。
ダンジョンから帰って来て、しばらくは休んでいたみたいだし、金曜日に会った気もするけれど。
考えたらライラは少し変だった。
私達とほとんど話もせずに、何か抜け殻みたいになっていたのだ。
でも、その時は私も明日王宮に行かなければならないという事でとても緊張していて、ライラの事なんて考える余裕もなかった。
そう言えばダンジョンで魔物に襲われてから、ライラとまともに話した事なんて無かった。
どうしたんだろう?
図書館を覗くとハッリがいたので少し聞いてみた。
「なんかライラは魔物の襲撃の後から少し変だったよ」
「変?」
「殿下が血まみれになって、ニーナが駆け寄った時に、ライラもニーナのすぐ後ろにいたんだ」
「そうなんだ。会長が血まみれなのを見て驚いたのかな」
私が素朴に聞くと
「うーん、何か一生懸命ニーナの後ろで魔法か何かを使おうとしていたんだけど、ニーナが癒し魔法を使った後から変だったよ」
ハッリが言ってくれるんだけど。
「変って?」
「うーん、何かショックを受けたみたいで、ぶつぶつ呟いていた」
「なんて呟いていたの?」
私が聞くと
「さあ、そこまでは。殿下が医務室に運ばれた後も様子がおかしかったよ」
「おかしかった?」
「うん。なんて言っていいかよく言えないけれど。
しばらく、休んでいたけれど、金曜日出て来た時も心ここに無いみたいな感じで。でも、アクセリ様に捕まって、強引に連れて行かれていたけれど」
「そうなんだ」
ハッリの言葉だけでは良く判らない。
夕食を終えて、取り敢えず、寮の部屋に帰ると隣のライラの部屋に明かりが見えたのだ。
私は慌てて、ライラの部屋の扉を叩いた。
「何!」
そこにはめちゃくちゃ不機嫌なライラがいた。
思わず私が、後ずさるほどの……
「えっ、いや、ライラが元気かなって」
私は恐る恐る声を駆けた。
「元気なわけ無いでしょ。今、忙しいんだけど」
ムッとしてライラが言う。
「いや、それなら」
「良いわ。私もあなたに話すことがあるから、2時間後に渡り廊下で、良いわね!」
「はい」
私は頷くしか無かった。
バタンと扉が目の前で閉められてしまった。
あれは完全に怒っている!
何を怒っているんだろう?
それもなんで渡り廊下に二時間後なのか全然判らなかったけれど。
それも、2時間後って夜も大分更けているんだけど、それも渡り廊下って人通りも殆どないところじゃん。
おばけが出そうなところだし。
考えたらここ一週間、会長がウィル様であったことが判ったり、会長が死にかけたり、王宮に行って王妃様に会わされたりで、いろんなことがあってライラのことは全く忘れていたのだ。
そう言えば、ライラの想い人って会長だった。
私はウィル様と会長が別の人だと思っていたから、ライラの事は応援すると言っていたんだった。
でも、私が癒やし魔術を発動してから医務室に会長と一緒にいたのは私だった。
帰ってきてからも会長とはいろんな件で絡んでいる。
私としては一介の平民が王子様である会長の横なんて決して並び立てないと判っている。私の想いは封印するしか無い……
そう、思っているんだけど、会長を想っているライラからしたら許せないことなのかもしれない。
人通りのないところに呼び出すなんて、私にナニするつもりだろう?
男だったら決闘かもしれないけれど、女だったらナイフで刺される?
いやいやいやいや、まさかライラはそんなことはしないはずだ。
何しろライラは天下のハナミ商会の看板娘なのだから。
でも、暗がりの中に呼び出すってどうするつもりなんだろう?
私は不安だらけで、渡り廊下に歩いて行ったのだ。
でも、真っ暗な渡り廊下には誰もいなかった。
その日は月も出ていなかったのだ。
それに空は曇っていて何か幽霊でも出そうな空だった。
「ライラ、どこ?」
私はおっかなびっくりで明かりであたりを照らしながら聞いたのだ。
「ライラ、隠れていないで出てきてよ」
考えたら私は昔から怖がりだった。一人で夜に外をうろついたことなど無かったのだ。
「いないの?」
及び腰で周りを見る。
もう帰ろうかと思った時だ。
いきなりドンと後ろからぶつかられたのだ。
「えっ」
慌てて後ろを振り返った私はそこに顔を血まみにしたライラの幽霊を見たのだった。
「ギャーーーーー」
次の瞬間、私の大声が学園中に響き渡ったのだ。
続きは明朝です。





