王子様は悪役令嬢をやっつけてくれました
「何をしている!」
会長の氷のように冷え切った声が響いた。
ひええええ! これはやばいやつだ。
流石の私も震え上がった。
周りの取り巻き連中もビクッとしていた。
「殿下!」
驚いてユリアナは会長を見た。
しかし、私と違ってユリアナはまだ余裕があったみたいだ。語尾も震えていないし悠然としていた。
「何をしていると聞いている」
「私は殿下が女性から近付かれるのがお嫌いだとお伺いしていたので、ニーナ嬢にその旨をお伝えしていただけですわ」
不機嫌な会長の前で平然とユリアナは言い切ったのだ。
「ほおーー、それを一人では言えないから集団でニーナ嬢に話していたということか」
「いえ、それは……」
会長の嫌味に思わずユリアナは視線をそらした。
「オルガ・ユロヤラビ嬢。どうなのだ?」
会長は横で唖然としていたおそらく伯爵令嬢と思われる令嬢に振っていた。
「恐れながら殿下。殿下の婚約者候補筆頭であらせられるユリアナ様を差し置いて、その平民の女と」
「オルガ嬢。君はこの学園の校則第一条を知らないのか」
会長は更に不機嫌になりオルガの言葉を遮っていた。
「いえ、その……」
もはや、その氷のような声にオルガは涙目だ。そうなるなら余計な事を言わなければいいのに……
「学園校則第一条、『何人も学園在学中は身分によって差別してはならない』だ」
「はい」
オルガはもはや頷くことしかできなかった。
「これを建前だと騒ぐ輩がいるとのことだが、この学園在学中はこの校則に従ってもらわねばならない。判るな」
「はい」
「君たちが相手を何と呼ぼうとも自由だが、呼び方の差別はいけない。一人を様付けすればもう一人も当然様付けしてほしい」
「しかし、殿下」
「もう一度言われたいのか」
会長がきつい口調で言ってきた。
「いえ、そのニーナ様とあまりにも一緒にいらっしゃり過ぎるのではないかと」
口を何とか開いてオルガは言い切った。
「なるほど。君は2つ勘違いしている」
「勘違いでございますか?」
「1つ目は私の婚約者候補の筆頭は決してユリアナ嬢ではない。というか、今は婚約者は決めていない状況だ」
「しかし、身分が一番高いのはユリアナ様では」
「それはこの学園の中の話であって、別に身分が一番高い令嬢と婚約する必要はなかろう。別に君でも構わないのだ」
「殿下、お戯れを」
真っ赤になってオルガは否定するが、
「それは事実だ」
冷静に会長が言った。
「そして、2つ目は私は別にこの学園に婚約者を探しに来ているのではない。仕事をしに来ているのだよ。将来のこの国を共に治めていく人材を探すのも仕事だ」
「ニーナ様はそれに値するとおっしゃるのですか?」
「今回の件は魔法師団長からの意向だ」
「カーリナ様の?」
「そんな、殿下。何故なんですか? 魔法の適性検査でその女は私よりも風魔法の力は少ないと出たのですよ。それを何故殿下が構われるのですか?」
不満をユリアナがぶつけてきた。
「ユリアナ嬢。それを判断するのは魔法師団長であって君ではないのではないか。いつから君は魔法師団長よりも偉くなったのだ」
「いえ、それは……」
さすがのユリアナもそれ以上は言い返せなかった。
「徒党を組んで他の生徒を虐める前にまず、自らを磨け」
会長はそう言うと、周りの生徒たちをも見渡した。
「君たちの成績やレポート、言動は全て陛下や私の手元にも上がってくるのだよ。心してもう少し勉学に励んだほうが良いのではないか」
「……」
会長の言葉に取り巻き令嬢たちは何も言い返せなかった。
「失礼します」
その沈黙に耐えきれなかったのか、ユリアナが頭を下げると立ち去って行った。
「失礼します」
慌ててその後を取り巻き連中がついて行った。
私はホッと盛大な溜息をついた。
それが間違いだった。
「何をほっとしているんだ」
不機嫌そうに会長が今度は私を睨んできた。
私はそのまま、生徒会室に拉致されて会長とライラから延々とお説教されたんだけど何故に?
私が会長に怒られている時のライラの嬉しそうな顔がまたムカついたし……
その後、貴族の令嬢に絡まれた時の対処方法を延々と二人に教え込まれてうんざりしたのは秘密だ。
ここまで読んで頂いて有難うございます。
王子様に助けられたニーナですが、このまま無事に済むのか?
続きは明日です。
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