魔道大会 ⑦
おう、異世界恋愛するぞ
身体中酒に塗れ鼻をつく程に酒臭いじいや。私は彼の変わり様に戸惑い、振る舞い方が分からずに居た。
「ナターシャ傷は大丈夫か?」
「え、ええ……」
なんと強気な口調なのだろう。まるで人が変わったかのように、穏やかな彼とはまるで正反対の逆波だった荒々しさが見て取れた。
「コイツらはダーンの回し者だ。さっさとゲロさせるかココで始末しないと後々また狙われる羽目になる…………ヒック!」
じいやが魔法使いに歩み寄り頭に手を翳した。
「じいや!」
「大丈夫だ……記憶を覗いて二度と玩具で遊べなくするだけだ」
じいやの手から黄色い光が漏れ溢れ、魔法使いへと流れ込む。
「クク……ついでに三人とも善人に仕立ててやるか……ック!」
じいやの手から今度は薄緑色の光が三人へと流れ込む。そして三人が目を覚ますと口々に甲高い声をあげた。
「アラ!? アタクシったら何を!?」
「いけないわお姉様!! お買い物に遅れちゃうわ!?」
「イヤン! 二人ともアタシを置いてかないでーっ!」
三人はまるで女性に生まれ変わったかのようにクネクネと腰を動かし指で髪の毛を弄り倒している。そして内股で何処かへと走り去ってしまった……。
「ククククク……!!」
私はあまりの光景に開いた口が塞がらなかった。かつてこの様な魔法の数々は見たことも聞いたことも無い。何より…………
(じいやが魔法陣を使ってないのに魔法を使える……!!)
この世界の理を超えたじいやの奇行に、私の中で培った魔法が崩れ去っていく気がした…………。
──パチンッ!
「ヒック! ほれ、傷も治したぞ?」
(ウソ……!?)
自分の体をくまなく見渡すが、魔法使いにやられた傷がいつの間にか全て無くなっている。
「う~ん……服はそのままの方がいいな♪」
私は思わず切れた部分を隠した!
まさかじいやにその様な目で見られるとは……!!
「よっ……!」
「な、何を!?」
じいやが私をお姫様抱っこした。あまりの恥ずかしさに自分の顔が熱くなるのを感じ取れた。
「全く……よえーんだから無理するなよな?」
「じいや! 今まで隠してたの!?」
「あ? いや、俺は俺の中に潜むもう一人の俺だ。つまり…………ウ!」
じいやが突然私を降ろし民家の壁際に手を着いた。
「じ……いや?」
「お、お、お、お……」
「お?」
「オェェェェ!!!!」
じいやはまたもや粗相をした。慌てて魔法で見えなくするが、その勢いは果てしない。
「ぎ、ぎもぢわるい…………ナターシャ殿……助げで……」
「あ、戻った…………」
私は呆れ果て、酒臭いじいやの頭から魔法で水を注いだ。




