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魔道大会 ⑥

 気晴らしに酔ったじいやと共に景色の良いカフェテリアへと来ていた。


「……はぁ」


 もはやこれで何度目のため息か分からない。折角の景色を楽しむ余裕すら無い私の横で、じいやはオレンジジュースをブクブクと泡立てている。……子どもかな?


 道行く人達が私を指さして何やらコソコソと話している。やはりダーン家の名はココでもかなりのものらしい。たまに知らないオッサンが「姉ちゃん次も頑張れよ!」と肩を叩いてくる。正直影で言われるより真っ向から言ってくるオッサンの方が100倍マシである。


 魔法陣はいつも通り使えるようになったが、次の試合は出る気にならない。それくらい彼との試合は精神的にキツかった。


 魔法陣が使えなくなったのは彼の仕業で間違いなさそうだ。ジュースを買った売り子を問い詰めたら私の飲み物に薬を入れたと白状した。


(そこまでして私を蹴落としたいとは……つまらない人だ)


 もう一度ため息をつき、じいやを見る。するとじいやは青ざめテーブルに突っ伏していた。


「あ……」


 私は水を貰いじいやに手渡した。酒を飲む度コレじゃあ世話が大変だ。これからはじいやが間違って酒を飲まないように気を付けないと…………


(まるで子どもの世話だな、これは)


 フフ、と何故か笑みがこぼれ、私は今にも吐き戻しそうなじいやの背中を摩った。


「うう……すみませ……オェェェ!」


「!」


 慌ててじいやの粗相を魔法で見えなくする。何処かに消せれば楽なのだが空間魔法は禁忌とされる程に難しい。だから透明にして見えなくした。ついでにオレンジの香りを漂わせてごまかしておこう。


「じいや大丈夫?」


「オェェェ…………!!」


 ダメだこりゃ。大人しく宿に戻るとするか……。


「肩を貸すから立って……」


 足下が覚束無いじいやに肩を貸し、宿へと進む。道すがら途轍もない注目を浴びる羽目になったが仕方ない。



 ──ゲシッ!!


「おわおわわ……!」


 人目を避け裏道をじいやと歩いていると突如後ろから蹴りを位二人とも地面に転げてしまった!


「な! 何をするんですか!?」


 見ればガラの悪い輩が3人ほど。二人はチンピラ風、一人は魔法使い特有の帽子を被り顔が見えない。ローブの特徴からこの辺りの魔法使いではなさそうだが……。


「お前さんが二回戦に進んでもらっちゃあ困るんだよ!!」


「先生! 御願いします!!」


「…………」


 チンピラ風の男達が道を開けると、先生と呼ばれた魔法使いがスッ……と指先を上げる。私は素早く対魔法用魔法陣を展開し事に備える。


「彼の回し者か!? じいや! 起きて!!」


「……う、うあうう…………」


「何だコイツは!? あっちいけ!!」


 ──ボカッ!!


 チンピラ男がじいやに強烈な蹴りをお見舞いした!


「じいや!?」


 ──ガコンッ!


 じいやは宙を舞い、向かいの酒場の前に置いてあった酒樽へと頭から突っ込んだ。足がガクンとぶら下がり、ビクともしない。


「…………」


 そして間髪を入れず魔法使いの指先から魔法陣が展開された瞬間、稲妻の矢が五月雨の如く私に向かって放たれる!


(早い……!!)


 対魔法用魔法陣で衝撃を和らげるがビリビリと手が痺れ、じいやにまで手が回らない。このままでは……!!


「ヒッヒッヒ! 先生は遠路遙々お越し頂いた大魔法使い様なんだぞ!! お前みたいなポッと出の女魔法使いなんかゴミクズさ!!」


「ケケケ! 死ねー!!」


「…………」


 稲妻の女に混じり、凍てつく氷の刃が吹雪の如く放たれた!!


「もう……ダメ……!」


 私の服は稲妻で焦げ付き、氷の刃で切られ体の至る所から血が出ている。魔法陣は光を失い力ももう僅かしか出ない。




「……誰か……ゴミクズだって?」


「!?」


 見るとじいやが樽から頭を引き抜き、滴る()()をポタポタと垂らしながら鋭い目付きで手を伸ばす…………


 ──ヴゥン……


 私の前に薄い膜の様な物が張られ、魔法使いの魔法を全て吸収し始める。魔法使いは驚き、その凄まじい魔法に私はじいやと魔法使いを交互に見る。


「何処までも腐りきったネズミ共め…………」


 じいやは伸ばした手を徐々に握り締めると、チンピラ風の男達が押されたように魔法使いの方へと近付いてゆく……!


「おわ! な、なんだ!?」

「せ、先生助けてくれ!!」


 じいやが握るその手を少しずつ強め、一歩ずつ静かに私の方へと進む。その目は今まで見たじいやとはかけ離れており一抹の恐怖すら感じるほどだった。


 三人がピタリとくっつき、魔法使いはギチギチに身動きが取れず魔法は既に消え失せたを


「この酒とやらの作り方を調べたら……こうやって果実を搾るそうだな?」


 ──ギリ、ギリ……


「うががが……!」

「あ゛あ゛……!!」

「……ぐ……っ!!」


 その手が閉じる頃には三人は密着して押し潰されており、息も出来ないほどの圧力を感じているようだった。


「…………彼女の痛み……1000倍にして返してやるぞ!!」


 じいやが強く握り締めた手を横に―――!!


「ダメェーー!!」


「!?」


 咄嗟にじいやの腕にしがみつき押さえ付ける!


 想像に難くないが、きっとこの後……三人は見るも無惨な姿に変わり果てるのだろう。じいやを私のために人殺しにはしてはいけない!!


「ナ、ナターシャ……!?」


「お願いじいや! 止めて!!」


 震える手でじいやの腕を押さえ続ける。するとスッとじいやの手が緩み、三人は拘束が溶けその場に崩れ落ちた…………

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― 新着の感想 ―
[一言] こういう時に「先生」と呼ぶ者と「先生」と呼ばれる者は大抵ろくなものではないのです。
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