小鳥の歌
日の出と共に目を覚まし、じいやの部屋から本を捲る音が微かに聞こえてくる。まさかと思い、部屋をノックすると案の定じいやの声が聞こえてきた。
──ガチャ……
「もしかしてずっと起きて読んでたの?」
「ええ。すっかりのめり込みまして……」
見ると渡した本の山の半分が既に読み終わっており、じいやの目の下にはクマが少々見られた。
「それは良かった……で、どうかな?」
「…………こうですか?」
──キィィィィ
じいやの右の掌に程良い大きさの魔法陣が現れた。鮮やかな緑色の魔法陣からは小鳥が現れ頻りに囀っている。
「ほほぅ! これは凄い!!」
「ありがとうございます」
「まさかこんな短期間で使えるとは…………やはり以前魔法を扱えていたのではないかい?」
「いえ……記憶の方はまだ…………」
じいやは少し寂しそうな顔をするも、魔法を使えたことを素直に喜ぶじいやはやはり子どものように見えた。ここまで単純に魔法を楽しんでいる人を見るのは久々であり、少々昔が懐かしく感じられた。
「朝ご飯今から作るから」
「あ、お手伝い致します」
「大丈夫。魔法でチャッチャとやるからさ♪」
「ありがとうございます」
じいやは再び本に目を落とし、右手に魔方陣を展開しながら交互に睨めっこを始めた。
(ふふ、私も最初はああだったな……)
そして魔法でチャッチャと朝食の支度を済ませると、私はトレイに二人分のご飯を乗せ、再びじいやの部屋をノックした。
「出来たよ~」
「ありがとうございます。丁度今全て読み終わりました」
じいやに渡した本の山が全て綺麗に片付きじいやはスッキリとした顔をしている。
「……さっき半分じゃなかった?」
「覚えた魔法で【速読】と【暗記】を強化しました故……」
「!?」
私は愕然とした。
(速読や暗記の魔法については渡した本の中には書いては無かった筈だが……!?)
私は一瞬にして危惧を覚えた。もしかしたら、私はとんでもない化け物を拾ってしまったのかもしれない…………




