余白の夢 ~ユーリィとジーヤ~
彼はいつも机に向かい、私はその背中を見ていた。
「少し休憩したら?」
「ああ。ありがとう」
手軽に食べられるようにパンに肉を挟み、ベタベタとマスタードを塗った軽食を彼に手渡した。彼は難しい顔をしながらそれを頬張っている。
「順調?」
「…………う~ん……」
彼はいつも『う~ん』しか言わない。説明が難しいのか言いたくないのか……。
「ちょっと聞かせて? 私にもその研究を手伝う権利があっても良いでしょう?」
今日は少し深く聞いてみることにした。一人だけのけ者扱いはなんだかむず痒いから。
「……長くなるけどいいかい?」
「ええ、紅茶のおかわりはいくらでもあるわ♪」
私はウキウキと彼の隣へと座った。ぐらついた椅子は相変わらずの座り心地だ。
「今は【資質】と【気質】の観点から【空間魔法】にトライしているんだ。僕は基本七属性のどれにも属さない資質だから、気質次第で何か見えないかと思ってね」
難しそうな顔で語る割りにどこか嬉しそうな彼。やはり魔法が好きなのは昔から変わらない。そんなあなたが好きなのも……昔から変わらないんだけどね♪
「実は、小さな虫程度なら右手から左手へ転移させる事に成功しているんだ」
「えっ!? それって凄いじゃない!!」
「ただ疑問があってね……その転移した虫は、本当に同じ虫なのかなって……」
「……『別人』かもしれないってこと?」
「それは分からないけど、もしかしたらそうかもしれない。ただ、もう少し大きな、それも個体差が大きな生き物で試すにはまだ研究が足りないんだ」
「それでも凄いじゃない! よーし、今日はお祝いよ♪ ちょっと買い物へ行って来るわね~」
私は祈願だった彼の夢の第一歩を祝うべく、駆け足で街へと繰り出した―――




