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婚約破棄された上に、追放された伯爵家三男カールは、実は剣聖だった!これからしっかり復讐します!婚約破棄から始まる追放生活!!  作者: 山田 バルス
第一章 剣聖、黒衣の騎士 カール=キリト誕生編

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第82話 ちっちゃな牙と大きな波──フェンリルの子ルゥ、海に行く

【ちっちゃな牙と大きな波──フェンリルの子ルゥ、海に行く】



 ボクはルゥ! フェンリル族の末っ子! カールおじちゃんに命を救ってもらってから、ずっと一緒にいるんだ!

 今日は特別な日。だって、おじちゃんがこう言ったから!


「魚、食べたいな。炙って、塩ふって……ああ、いいなぁ」


 魚? それ、うまいのか!? ボク、食べたことないぞ!?

 だからボクはこう言った!


「いく! ルゥもいくのだっ!!」


 そうして、カールおじちゃん、セリアお姉ちゃん、リアナお姉ちゃん、エミリーゼお姉ちゃん、そしてボクの五人(四人と一匹)は、港町エスパーダへやって来た!


 港ってところ、すごい!

 潮の匂い、しょっぱい風、でっかい波!


「海……でかっ!? でっかすぎるのだー!!」


 走り出す足が止まらない! 波と遊ぶ、鳥と追いかけっこする!

 セリアお姉ちゃんが苦笑いして追いかけてくる。


「ルゥ、こら! 海は危ないのよ!」

「でも、楽しいのだー!」


 町の人たちはちょっと元気がなかった。

 理由はすぐわかった。「シードラゴン」っていう、でっかい魔物が海で暴れてるんだって。


 だからボクたちは決めた。

 そいつを、やっつけるのだ!


 次の日の朝。小さな船で、海の真ん中に出た。


 風が止まった。波が静かになった。

 おじちゃんの手が剣に伸びた。


「来るぞ」


 ボクも鼻をくんくんして、わかった。変な匂い。重たい魔力。空気がピリピリする。


 海の底から、それは現れた。


 でっっっっっかい!


 まるで山が海の中から出てきたみたい! 青くて、ヌルヌルしてて、ビリビリしてる!


「うわっ! あれ……お魚なの!?」 「いいえ、魔物です!」リアナお姉ちゃんが叫んだ!


「カール、行くわよ!」

「やってやろうぜ!」


 おじちゃんが剣を抜いた。セリアお姉ちゃんが風の中を跳び、リアナお姉ちゃんが魔法を詠唱して、エミリーゼお姉ちゃんが炎をまとう。


 ……でも、ボクは悔しかった。だって、何もできない気がしたから。


 みんなすごい。強くて、かっこよくて。

 ボクなんか、ただの小さな狼だ。


 でも。


「ルゥも……戦うのだ!」


 ボクは跳んだ。おじちゃんの肩を踏み台にして、竜の顔めがけて!


「がうううっ!!」


 ボクの小さな牙が、シードラゴンの目をかすった。

 ちょっとだけ、だけど痛そうにしてた! よしっ!


「ナイスだ、ルゥ!」


 おじちゃんがそう言ってくれた。

 それだけで、胸の奥がぽっと温かくなった。


 でも、戦いはまだ続いた。


 雷が空を裂いた。

 エミリーゼお姉ちゃんの炎とリアナお姉ちゃんの雷がぶつかって、空が赤と青に染まる。


 セリアお姉ちゃんは風と共に舞い、剣が竜の鱗を削っていく。


 そして、海が怒った。

 全てを飲み込もうと、シードラゴンがうねりを起こした。


「いけない、あれは……っ!」リアナお姉ちゃんの声が震える。


「ルゥ! 下がれ!」おじちゃんが叫んだ。


 でも、ボクは走った。怖くても、足が動く。

 だって——みんなが、ボクを信じてくれたから!


「がうううううっっっ!!!」


 ボクは吠えた。全身の力をこめて。

 その声が、魔法陣を呼んだ。雷と炎と風と魔力、そしてボクの咆哮が、空に響いた。


 その中心で、おじちゃんが剣を振り下ろした。


 ——ドンッ!


 空が割れた。海が光った。

 ボクの目の前で、シードラゴンが、ゆっくりと倒れた。


 港の人たちは喜んでくれた!

 魚が戻ってきて、ごはんが山盛り!


 カールおじちゃんが炭火で焼いてくれた魚は、すっごく美味しかった!


「ルゥ、よくがんばったな」

「えっへん! ルゥ、かっこよかったのだ!」


 セリアお姉ちゃんが頭をくしゃくしゃにしてくれて、リアナお姉ちゃんがちいさく笑った。


「あなたも、もう立派な“冒険者”ね」

「ほんと。私も見直したわ。……少しだけね」エミリーゼお姉ちゃんはちょっと照れくさそう。


 みんなで輪になって、焚き火を囲んだ夜。

 潮の香りと笑い声が、空いっぱいに広がっていた。


 ボク、わかったんだ。


 ボクはまだ小さいけど、

 この仲間の中で、生きていける。


 そして——いつか、もっと強くなって、

 カールおじちゃんの“右腕”になるんだ!


「その時まで、ルゥ、がんばるのだっ!」


 夜空に向かって、ちっちゃな牙で、そう誓った。

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