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婚約破棄された上に、追放された伯爵家三男カールは、実は剣聖だった!これからしっかり復讐します!婚約破棄から始まる追放生活!!  作者: 山田 バルス
第一章 剣聖、黒衣の騎士 カール=キリト誕生編

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第74話 フェンリルの子狼ルゥ おかえりを待つ日々

【新作始めました】プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!レベル99になってシナリオをぶち壊す!

「おかえりを待つ日々」

――フェンリルの子狼ルゥの視点より


あの人がいなくなってから、家の中は少し静かになった。


朝になっても、玄関の扉が開く音がしない。


カールも、セリアも、リアナもいない家は――ちょっとだけ、さみしい。


もちろん、ぼく一人じゃない。メイドのレーナと、その娘のティアがいてくれる。レーナは朝早くから台所でぱたぱたと動いているし、ティアはお掃除のほかに、ぼくのブラッシングもしてくれる。ぼくはティアのブラシが好きだ。優しくて、あったかい匂いがする。


でも、それでも――あの人の手とは違うんだ。


カールの手は、大きくて、たくましくて、でも不思議と優しかった。なでられると、心の奥まで温かくなるような気がした。


「ルゥ、おなかすいた?」


ティアの声で、ぼくは耳をぴくりと動かす。


「うん……すこしだけ」


ぼくは返事をする。でも、それはきっとティアには伝わらない。ただ、彼女は微笑んで、ぼくの前にごはんのお皿を置いてくれた。ふわふわのお肉と、野菜がたくさん入ったスープ。カールがいなくなってからも、ぼくたちのために毎日、レーナがちゃんと作ってくれる。


……でも、やっぱり、味がちょっとだけ違う気がする。


「今日も、帰ってこないね……おじさんたち」


ティアがつぶやいた。


ぼくは耳をぺたんと伏せて、こくんと頷いた。うん、帰ってこない。もう何日も、あの玄関が開かない。


森の奥で、危ない任務だって聞いた。グリーンドラゴンっていう、緑の大きな魔獣を倒しに行ったんだって。ぼく、ドラゴンの匂いは知らないけど、きっとこわくて、つよくて、カールだって本当は危ないはずなのに。


でも、あの人は「すぐ戻る」と言ってた。


頭を撫でながら、「ルゥはティアとお留守番頼んだぞ」って。


だから、ぼく、まってる。ちゃんと。


昼下がり。日差しがぽかぽかしてきたから、ぼくは庭に出ることにした。芝生の上でごろごろすると、少し気分がよくなる。お日さまのにおい、風のにおい。春の訪れを感じる空気。


ティアが洗濯物を干している。


レーナは中で掃除をしている。


ぼくはその間に、あの人がいつも剣の手入れをしていた縁側の場所に座る。そこにはまだ、カールの匂いが残ってる。皮の手袋のにおい、油のにおい、そしてほんのり木の香り。


くんくん、と鼻を鳴らして、ぼくはそこでくるりと丸くなる。


「……はやく、かえってきてよ……おじさん」


風が吹いた。ぼくの毛が揺れて、どこか遠くで鳥の声が聞こえた。


この風の向こうに、カールたちはいるのかな。


セリアは、ちゃんと笑ってるかな。


リアナは、またあのツンとした顔で怒ってないかな。


ぼくは、あの三人が大好きだ。


帰ってきたら、たくさんなでてもらうって決めてる。おなかもいっぱいすりすりして、ぐるぐる鳴きたい。フェンリル族のプライド? そんなの、知らないもん。ぼくはただ、うれしいときはうれしいって、伝えたいだけ。


夜になると、家の中はますます静かになる。


夕食のあと、レーナが灯りをともして、ティアが本を読む時間になる。ぼくはその横でうとうとしながら、時々ぱちりと目を開けて、玄関の方を見つめる。


……まだ、帰ってこない。


カールがいるときは、夜でも剣の手入れの音が聞こえたり、リアナの本のページをめくる音がしたり、セリアの鼻歌が聞こえたり――そういう「にぎやかさ」があった。


いまは、しん……としてる。


さびしいよ。でも、ぼくが泣いちゃったら、ティアも泣いちゃう気がする。


だから、がまんする。


がまんして、ぼくは夜空を見上げる。


星が、きらきら光ってる。


どこかで、カールたちもこの空を見てるのかな。


「……カール、無事でいてください」


そっと、レーナがつぶやいた。


その声に、ぼくもこっそり心の中でうなずいた。


……うん、無事でいて。はやく、かえってきて。


その夜、夢を見た。


大きな森の中。ドラゴンの吠える声。剣の光。カールの声。セリアの魔法。リアナの怒鳴り声。ぼくは遠くから、それを見てる。


怖かった。でも――みんな、生きてた。


だから、目が覚めたとき、ぼくはふっと微笑んだ。


もう少しだけ、がんばれる気がした。


――きっと、帰ってくるから。


――あの玄関の扉が、がちゃりと開く日が、また来るから。


その日まで、ぼくは、ここで。


フェンリルの子としてじゃなく――あの人の家族として、ただ、待ってるんだ。


「おかえり」って、ちゃんと言えるように。











【新作始めました】プリン食べたい!婚約者が王女殿下に夢中でまったく相手にされない伯爵令嬢ベアトリス!前世を思いだした。え?乙女ゲームの世界、わたしは悪役令嬢!レベル99になってシナリオをぶち壊す!

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