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婚約破棄された上に、追放された伯爵家三男カールは、実は剣聖だった!これからしっかり復讐します!婚約破棄から始まる追放生活!!  作者: 山田 バルス
第一章 剣聖、黒衣の騎士 カール=キリト誕生編

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第53話 剣聖、家を借りる

『闇を裂く剣』 ―剣聖、家を借りる―


 王都ルメリア。


 冒険者ギルド本部の最上階にある重厚な執務室に、カールとセリアは呼び出されていた。


「久しぶりだな、カール。セリアも元気そうで何よりだ」


 そう言って大きな笑みを浮かべるのは、ギルドマスター・バルド=グランダス。筋骨隆々の身体に、短く整えられた銀髪と鋭い眼光。王都ギルドを束ねる存在でありながら、飾り気のない言葉遣いは今も変わらない。


「で?今回はどういう用件で?」


 カールが簡潔に尋ねると、バルドはごそごそと机の引き出しから一枚の紙を取り出し、テーブルに置いた。


「家だよ、家。王都でのお前らの拠点な。ちょうどいい物件が空いたんでな、紹介しようと思ってな」


「……家?」


 カールが眉をひそめ、セリアも目をぱちくりと瞬かせる。


「王都に常駐するなら、宿暮らしより拠点があった方がいいだろ?

 それに今後は、あちこちから指名依頼が増えるだろうからな。個室付きの一軒家。庭付きだ。しかも破格の値段で借りられる」


 「……うーん、でも家って、掃除とか……」


 セリアが珍しくしおらしい声を出した。


「料理とか、掃除とか……そういうの、わたし、王族の頃からほとんどやったことなくて……」

 指先を突き合わせながら呟く姿に、バルドは苦笑した。


「まあ、予想はしてた。だから提案だ。人を雇えばいい」


「雇うって、使用人を?」


 「そうだ。住み込みで。ちょうど心当たりがある」


 バルドが取り出したもう一枚の書類に、カールとセリアの目が釘付けになる。


「これは……」


「そう、ティナとレーナだ。あの獣人の母娘。今はギルドの保護施設にいるが、最近本人たちから“働いて恩返しがしたい”という申し出があってな」


「でも、まだティナは子供だぞ」


「働かせろってんじゃねぇよ。住み込みで暮らして、日々の家事をレーナが引き受ける。ティナは勉強しながら、無理のない範囲でできることをすればいい。生活の安定と、彼女たちの心の再建にも繋がるだろう」


 カールはしばし無言になった。

 その提案は、あまりにも“温かすぎた”。


「……ふむ。でも、俺たちが断ったら……」


「その場合は、他のギルド支部へ斡旋することになる。だが、本人たちはお前らと一緒に暮らしたいって言ってたぞ?」


 セリアがそっとカールの腕を引っ張った。


「いいじゃない、カール。わたしたちだけじゃ不安だし、それに……ルゥのこともあるしね」


 その言葉に、カールはぎくりとした表情になる。


「そうだ、ルゥ。アイツ、もうすぐ完全に成長するだろ。庭付きの家じゃないと無理だぞ?」


 ──ルゥ。

 カールが森で救い、今では忠実な相棒となったフェンリルの仔狼。

 カールとの契約により人間の言葉を話すことができる。しかし、体は子狼のままだ?あとで謎を聞いてみたいところだ。いつまでも宿屋暮らしでは肩身が狭いだろう。


 「……わかった。借りよう。その家を」


 ようやくカールが折れ、バルドは満足げに腕を組んだ。


「そうこなくっちゃな!鍵と書類は手配しておく。お前たちの新しい拠点、王都ルメリア第三区の西端。静かで治安も良い。すぐに気に入るだろうさ」


 数日後、カールたちは引っ越しを終えた。


 広々とした敷地に、二階建ての家屋。

 石畳の玄関と、南に広がる庭には立派な柵があり、ルゥが嬉しそうに駆け回っていた。


「わあ……ほんとに、広い家……!」

 ティナが目を輝かせ、尻尾をふりふり揺らす。


「いいのかしら、私たちなんかがこんな場所に住ませてもらって……」

 レーナが感極まった様子で呟くが、カールは首を横に振った。


「俺たちの方こそ助かる。これからよろしく頼む」


「はいっ!」


 明るく元気に返事するティナに、セリアが微笑んだ。


「ふふ、じゃあまずは荷物の整理ね。……掃除は、レーナさんと協力して、わたしも覚えます」


「セリアが……掃除を……?」


「わ、笑わないでよ!」


 にぎやかなやり取りが、ようやく“日常”の音として広がる。


 家には、暖炉と広いダイニング、清潔なキッチン、そして二階には個室が三つ。ルゥには専用の犬舎も設置され、満足げにあくびをしていた。


「……こういうのも、悪くないな」

 カールが庭先で呟くと、ルゥが「この庭、気に入った」と返事をした。


 かつての放浪の剣聖は、ついに“帰る場所”を手に入れたのだった。

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