微かな覚醒、力の一端Ⅱ
「っ!」
猛攻を繰り広げる紫苑と玲奈に続き、神無も果敢に攻撃を仕掛けて介入する。しかし、その数多の攻撃をウロボロスは笑みを浮かべたまま捌き続けていた。
受け流し、防御し、反撃する。ただそれだけしかしていないにもかかわらず、多対一である状況を嬉々としている。
「シオン!まだもっと速く動ける?」
「誰に言ってる!お前こそ、それで本気なんて言わねーよな!」
高速で動き続ける玲奈と紫苑の体力が激しく消耗している。このまま戦闘が続けば、いずれ敗北してしまう可能性があるだろう。
そう考えているのは何も彼女達だけではない。戦闘を注視し続けていたベルフェゴールも感じていたが、ただ注視しているだけではない。
彼女達の攻撃に対し、ウロボロスがどう反応し、どう対応しているのかを見定めているのだろう。
「『仲間割れか?貴様等にそんな余裕があるのか?我は反撃しないとは、一言も言っていないぞ』」
「「っ!」」
「同意見です。ワタシも、攻撃の手を緩めるつもりは無ぇです」
攻撃が止まったほんの一瞬、その僅かな隙を突いて動いていたウロボロス。それに対し、フランシェスカは狙いを定めていたかのように背後から斬り掛かる。
振るわれた大鎌を紙一重で回避したウロボロスは、回避行動を取った動きと連動させて反撃行動を繰り出す。
回し蹴りを放ったウロボロスだったが、空を斬った時点でフランシェスカは自身の身体を回転させて回し蹴りを咄嗟に防御した。
「隙有りや!──っ!?」
「『隙などあるはずがない』」
「(完全に隙を突いた攻撃やったのに、これにも反応するんか……化け物め)」
回し蹴りを放ったウロボロスの無防備な瞬間を狙ったにもかかわらず、ウロボロスは容易く介入してきた神無の攻撃を影を使用して防ぐ。
防がれたと理解した神無は、空かさず距離を取ってウロボロスを睨み付ける。その視線を受けながらも、ウロボロスは嘲笑うかのように左右から攻撃を仕掛けた玲奈と紫苑の同時攻撃を回避して肩を竦めて目を細めた。
「『貴様等は介入しないのか?我は貴様等も鍛えるようにと言われているんだが?』」
向けられる視線を受けつつ、ベルフェゴールは肩を竦めてながら口を開く。
「もう少し観察させてくれたまえ。君の力を観察し、分析している最中なのだから」
「『フッ、そうか。あまり待たせてくれるなよ?人間』」
「?」
ベルフェゴールの言葉に笑みを浮かべつつ、竜也へ視線を向けたウロボロスは溜息混じりに告げた。
「『貴様はともかく、小僧……貴様は何をしている?』」
「言われなくても、俺だってやってやる!」
「『では、見せてもらおうか?』」
「(速ぇ、一気に詰めて来やがったっ)」
竜也の言葉を聞いた直後、ウロボロスは彼女達の包囲網を無視して竜也へ距離を詰めた。
ベルフェゴールも反応が遅れ、ウロボロスは接近しつつ手刀に影を纏って鋭利さを向上させた突きを放とうとしている。
竜也の回避行動が間に合わなければ、致命傷は免れない攻撃なのは明らかだった。しかし、竜也を含めたその場に居る全員が完全に反応が遅れた状態によって援護は不可能。
それは、明らかな直撃コースだった。
「くっ」
「『まずは、一人目だな──死ね』」




