第1話 町転がし ~前編~
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カロスタークは十七歳になった。
道普請は驚異的なスピードで進み、すでに十数か所の領地にまで及んでいる。
王国全体の三割から四割に達し、年内には王都と繋がる可能性すら見えていた。
このハイペースの背景には、旧リヴィエール伯爵領の『亜人の街』事件がある。
あの一件をきっかけに、王国中の亜人たちが動き出した。
人族に冷遇されていた彼らは、居場所を求めて移動を始めたのだ。
カロスタークは、そんな彼らを無条件で受け入れた。
人口が増えれば、当然生活の基盤が必要になる。
仕事は?
住まいは?
その答えとして、増えた労働力は道整備に投入された。
賃金は高くないが、亜人たちは気にしない。
他の町では仕事どころか、道を歩くだけで石を投げられることすらあったのだ。
普通に働けるだけで、彼らにとっては十分だった。
道ができれば収入も増える。
その四割が再び道整備に使われ、さらに道が伸びる。
もう四割はレッドルア男爵領内の開墾事業に回された。
領内の『行速』道路はすでに完成しており、今は他領との接続を待つ段階だ。
だが、道づくりが一段落したことで、作業員たちは稼ぎ場を失っていた。
日銭を稼ぐ彼らにとって、継続的な仕事の確保は死活問題だ。
開墾事業は、そんな彼らに新たな働き口を提供するものだった。
また、モンモラシー男爵領やミヌミエーラ男爵領では活躍していた『貴族軍』も、他領では活動できず手持ち無沙汰になっていた。
彼らにも引き続き土木作業に従事してもらうことで、体力維持と実戦訓練を兼ねた活動が可能となった。
ミヌミエーラ男爵が土木作業員のような顔で楽しそうに働いていたという話もあるほどだ。
残る二割の収入は住宅地の造成に使われた。
贅沢はできないが、定住して自活できる環境が整いつつある。
将来が見えることで、亜人たちは懸命に働いた。
半数は『行速』道路の普請に、残りは開拓と住宅地の整備に従事している。
各領地でも「銅貨数枚での日雇い」は行われており、宿場町に協力する五家では「貴族軍」も投入されていた。
レッドルア男爵領まで移動できない亜人たちも、これらの事業に参加していた。
中にはそのまま移住を決意し、引っ越しの準備を進める者も多かった。
さらには、五家以外の領主たちも税収増と王家への貢献度アップを狙って、同様の取り組みを始めていた。
これにより、工事はさらに加速していった。
そんな中、もう一つ、異常なスピードで発展している場所があった。
それは、オルトレオーネ伯爵領の外れにある町。
セザールを一旦は奪ったこともあるシャルルの家が治める町だ。
大きな道沿いに新たに設けられた宿場町が、雇用を生み、交易の中継地として急成長を遂げていた。
オルトレオーネ伯爵領と隣接する領地との間で流通が活発になり、税収も急増していた。
あまりの勢いに、カロスタークは慌てて近隣から人を雇い、『行速』道路の下地作りを始めさせた。
合流はまだ先だが、地図上のルートや設計はすでに完了しており、地均しや建材の運搬などは先行して進められる。
なぜそこまで急いだのか。
それは、この町の『管理権』が慰謝料の代わりとして一時的にカロスタークに預けられていたからだ。
慰謝料相当額を回収すれば、管理権は返還される約束になっている。
だからこそ、カロスタークは町の収益を自分の懐に入れず、公共予算として使いまくっていた。返還を少しでも遅らせるために。
だが、それが逆に町の発展を加速させてしまった。
もはや慰謝料額など、すぐにでも回収できそうな勢いだ。
そして、ついにその時が来た。
オルトレオーネ伯爵家からの使者が、カロスタークのもとを訪れた。
町の実質的な管理役として、カロスタークの代官のような立場にあったのは、オルトレオーネ伯爵の第二夫人。
彼女の登場が、また新たな波を呼び込むことになる――。
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