表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
商人の男と貴族の女ーー婚約破棄から始まる成り上がり――  作者: 葉月奈津・男
【クロエ】編~前途洋々、時々多難~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/103

第9話 トラブルの落としどころ ~前編~

4/5

 


 翌日、宰相府へと全員で訪れた。

 門前払いも覚悟してのものだったが、到着するとすぐに執務室へ通される。

 事前に『報告』が行われていて、待ち構えていたセらしい。


「断頭台の用意ならすぐにさせるぞ」


 のっけから物騒な先制攻撃が飛んできた。


 宰相の執務室。

 重厚な扉が閉じられた瞬間、空気が一変した。

 カロスタークの返答一つで、首が一つ飛ぶことになる。


「それはご容赦ください。命を取っても、得るものはありません」

 カロスタークは一歩も引かず、静かに応じた。

 口元にはかすかに笑みがある。


 最初から断頭台を引き合いに出す。

 これは、宰相にも命を奪おうという意思はないということ。


 宰相ならわざわざ口に出さずとも、しれっと王都の広場に断頭台を出しておくくらい軽いことだからだ。

 カロスタークたちが王都へ来た瞬間に、いやでも目に付くように仕向けられる。

 これは単なるジョークでしかない。

 やろうと思えばいつでもやれる、そんな宰相ならではの。


「ほう? では、どうするつもりだ?」

 宰相が顎に手を当て、興味深そうに身を乗り出す。


「昨晩、考えました。私は現在王国中に道を敷設しています。いずれジョルジュ殿とクロエ嬢の家が領主を務める土地にも、道を通すことになる。そこで、提案があります」


 カロスタークは一枚の地図を広げた。

 そこには、既存の道に沿って新たに整備される予定のルートと、その周囲に印がつけられている。


「この道沿いに、宿場町を建設します。必要な土地は、両家の領地から譲渡していただく。そこから得られる税収は、私の管理とし、その半分を国庫に納める形でいかがでしょうか」


「ふむ……」

 宰相は地図を覗き込み、目を細めた。


「宿場町か。道が通れば人も金も動く。悪くはない。だが、それだけか?」


「いえ。アンヌ嬢、エマ嬢、ニコラ殿の家にも同様の提案を。もっとも、こちらは譲渡ではなく賃貸で。税収の半分は国庫へ。残りの半分のうち四割を賃料として領主に納める形で」


「……ふっははははっ!」


 宰相が笑い声を上げた。

 清々しいほどのあくどい笑みだ。


「貴様、なかなかの悪党だな。気に入った。よかろう、男爵。これで手を打とう」


「ありがとうございます」


 礼儀上頭は下げるが、この結論は確信していた。 

 誰も損はしない話なのだ。


 王国にとっては税収が上がる話。

 貴族家からすれば国と関わりを持つ事業の開始。

 悪くない。

 アンヌたちには、家へのいい土産になるだろう。


「……それが、落としどころか」

 ニコラが小さく呟いた。


「悪くない。むしろ、うちの父も喜びそうだわ」

 エマが肩をすくめる。


「私の兄も、これで納得してくれると思います」

 アンヌが静かに頷いた。


 そして、全員が理解する。

「これが、『商人出身の貴族』の強みか」、と。


「悪くない、悪くないぞ。男爵よ。この件で、準子爵は確実だ。しっかり働け!」

「やっぱり。そこへ繋がるのですね」

「当然だろう。道整備の終わった地域が軒並み増収になっておるからにはな!」

 経済の活性化が著しいらしい。


「全力を挙げて、取り組んでまいります」

 冷や汗をかきながら、カロスタークは頭を下げた。


 この結果も、予想で来ていたことではあったけれど。



読了・評価。ありがとうございます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ