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商人の男と貴族の女ーー婚約破棄から始まる成り上がり――  作者: 葉月奈津・男
【ラヴァル】編~蝙蝠の選択は友人を二人得るか、敵を二人作るかである~

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第5話 食料の出どころと行先 ②

5/5

 


 こうして、各村へと食料が配られることとなった。

 大きめの村に拠点を置いてのことだ。


 一度荷物を下ろしたのち、必要分だけを荷馬車に載せて運ぶ。

 少量運送で、速度と距離を稼いでいた。


 ただし、帝国兵站部隊から奪ったものをそのまま配るというわけではない。

 実を言えば、『亜人の町』からの補給物資が届き始めているのだ。


 第一便は『翼人族』が四人で運ぶ『空輸』。

 十便くらいからは『蛇足族』が背負って運ぶ『飛脚便』も加わった。

 一度の数は多くないが、それを補って余りある頻度がカバーしている。


 そして、そうして運ばれているのは『オオキビ』だけだ。

 これを小麦と5対5で割って配っている。


 なので、配った量は実質的に半分でしかない。

 どんどん送り出しても、減っていく感じがしないほどだった。


「困窮しているところへ随時運ばせるとしよう」

 半月ごとに2弾、3弾と輸送を行えば、困窮も収まるはずだった。


「それはよいですが、帝国軍がそろそろ追いついてきますよ?」

 お忘れですか?

 そう問う雰囲気で、セザールが軽く睨んだ。

 気を抜き過ぎではないかと言いたいらしい。


「まだ、戦う意志が残っていると?」

 二手に分かれたことと、その一方が壊滅していることは知らせを受けて知っている。

 食糧はほぼ0――兵站部とは別に自分たちで運び込んだ食料もあったらしい——の状態から歩き詰め、体力もメンタルも限界を超えているだろう。


「残っていないと決めつけるのは危険です!」

「それはそうだろうが・・・ネルケ」

 数秒考えをめぐらし、カロスタークは道案内をさせている元第五皇女副官を呼んだ。


「は、はい」

 スチャッ!

 音がしそうな勢いで跪き、ネルケが下命を待つ。


「第五皇女の名で、休戦を持ち掛けて来てくれ。休戦が成れば、食料も分け与えるとな」

 降伏勧告をしてもいいが、ここは休戦としておこうとカロスタークは考えた。

 ヘタに降伏などさせると、管理しなくてはならなくなるから面倒なのだ。


 休戦という名目で戦闘を避けつつ、彼等には自力で帝国へ帰っていただきたい。

 カロスタークはそう考えたのである。

 放っておいて餓死されるというのも目覚めが悪くなるし、片付けが大変だから。


「休戦ですね。わかりました」


 ◇


 半日後、休戦協定受諾の返答をもってネルケは帰ってきた。

 内容は帝国軍がリューイン州を出るまでは一切の戦闘を行わない。

 人道的見地から、食料は充分に分け与える。

 領外へ出たのち、戻るようなら戦闘が再開される。

 ——というものだ。


 明記はしていないが、この『』領を王国が占領・実効支配することを認めよ、ということだ。

 リューイン州を出るまで、そして、戻れば再開という表現が、そう示している。


 もっとわかりやすく言えば、リューイン州を王国の領地とする。

 お前らは邪魔だからさっさと出て行け。

 出て行きやすいように食糧は分けてやる。

 外へ出て戻る——取返しに来るなら——再戦だ、となる。


 それが受諾された。

 少なくとも帝国軍の一部に、リューイン州は王国の領地と認めさせたことになる。


「よし、よし。そうとなれば、王国臣民のためだ。救援を急ぐとしよう」

 リューイン州だけではない。

 困窮は周辺にまで波及している。

 影響を拡大していくべきだった。



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