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リグ・ヴェーダ 詩訳 ― 火の神が歌う世界の始まり  作者: はまゆう


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80/106

第1巻 第81讃歌 インドラ讃歌

1 人々はインドラを

高らかに担ぎ上げた

魔障ヴリトラを屠る彼を、

歓喜と力強さのために。

大いなる戦いであれ、

小さき戦いであれ、

我らは誠に彼を呼び求める

我らの剛勇なる営みの、

助けとなっておくれ。

2 英雄よ、汝は戦士であり、

溢れんばかりの

戦利品( spoil )の授け手。

弱き者をも力づけ、

汝は礼拝を捧げる者を助け、

供物を供える者に

広大な富を授ける。

3 闘争と戦いが始まるとき、

戦利品は

勇敢なる者の前に置かれる。

猛烈に突進する

汝の栗毛の駿馬を繋ぎとめよ。

汝は誰を屠り、

誰を豊かにするのか。

インドラよ、

我らをこそ豊かにしたまえ。

4 智慧によって強大であり、

己の望むままに、

恐るべき彼は、

その威力を増大させた。

栗毛の駿馬の主、

強きあごを持つ

崇高なる彼は、

栄光のために、

その両手で鉄の雷電の楔を

握り締めた。

5 彼は地上の大気を満たし、

天上の光り輝く場所にまで

押し迫った。

汝に並ぶ者は

かつて生まれたこともなく、

インドラよ、汝のような者は

これから生まれることもない。

汝は万物を超えて、

強大に育ったのだ。

6 供物を捧げる者に対して、

敵が持つ、人を育む糧を

奪って与えてくれる者。

かのインドラが、

我らにその助けを

貸してくれますように。

分け与えたまえ、

汝の富はあまりに潤沢だ

汝の慷慨こうがいの分け前を、

私にも預からせておくれ。

7 正しき心を持つ彼は、

神酒ソーマの歓喜のたびに、

我らに牛の群れを授けてくれる。

その両手いっぱいに、

数百にのぼる種種の宝を、

我らのために掻き集めておくれ。

我らを鋭く研ぎ澄まし、

富をもたらしたまえ。

8 英雄よ、汝の気前の良さと

力強さのために注がれた

この神酒ソーマで、

己を潤したまえ。

我らは汝が、

広大なる蓄えの主であることを

知っている

汝へと、我らの心の願いを

送り届けた

ゆえに、我らの守護者と

なっておくれ。

9 インドラよ、この民は、

汝の好みにふさわしき

すべてのものを

汝のために蓄えている。

供物を捧げようとしない

者たちの富を、

主として、暴き出してほしい

彼らのその富を、

我らのもとへ持ってきておくれ。



解説

この第81曲は、全9節という均整のとれた構成の中で、戦いの神インドラの絶対的な武勇と、彼を熱狂的に支持する信徒たちへ富(戦利品)をダイナミックに分配する「気前の良い主君」としての側面を讃えた一曲です。

* 1–3節:あらゆる規模の戦いにおいて呼び求められる、勝利の象徴としてのインドラがうたわれます。インドラは弱き者を強者へと変える力を持ち、戦場に赴く彼に対して「誰を豊かにするのか、我らをこそ豊かにしてほしい」と、部族の生々しくも切実な繁栄の願いが直接的に投げかけられます。

* 4–5節:インドラの神威の凄まじさが、視覚的な迫力をもって描写されます。栄光のために鉄の雷電ヴァジュラを両手で握り締める武骨な姿が描かれ、5節では、大気を満たし天に届くその巨躯を称えつつ、「過去にも未来にも、インドラに並ぶ者は存在しない」という、最高神への至上の賛辞が捧げられます。

* 6–9節:インドラが持つ「分配者」としての魅力が強調されます。インドラの富は潤沢であり、正しく供物を捧げて神酒ソーマで神を歓喜させる者には、両手いっぱいの宝や牛の群れが与えられます。最終節では、「不信心で供物を捧げない略奪者どもの富を没収し、我らに与えてほしい」という、当時の部族社会の実利的な正義観がストレートにうたわれて締めくくられます。

全体として、インドラの無敵の強さと、それに依って立つ民の熱狂的な信頼関係が、非常に勢いのある言葉で綴られた、躍動感あふれる讃歌です。

5節の「汝に並ぶ者はかつて生まれたこともなく、これから生まれることもない」というフレーズは、インドラの絶対的なヒーロー性をこれ以上ないほど決定づけています。


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