第1巻 第79讃歌 アグニ讃歌
1 彼は大気の中で
黄金の髪をなびかせ、
吹き荒れる嵐のように、
猛る大蛇のごとく進む。
清らかに輝き、
夜明けの光を熟知する彼は、
気高く、誠実に、
立ち働く佳き妻たちのようだ。
2 黒き雄牛(雨雲)が
我らの周りで咆哮するとき、
汝の翼ある閃光(稲妻)が、
それぞれの奔流を強くする。
祝福をもたらし、
微笑むような雫を伴って彼は来り、
雨は降り注ぎ、
雲は雷鳴を轟かせる。
3 礼拝の乳(供物)を溢れさせ、
秩序の
最もまっすぐな道を進むとき、
アリヤマン、ミトラ、ヴァルナ、
そして大気を巡る神は、
下方の圧搾石が置かれた
あの革袋を、満たしゆく。
4 牛の富を司る主であり、
力の御子たるアグニよ、
万象を知る者よ、
我らに高き誉れを
授けたまえ。
5 薪をくべられ、
善良で賢きアグニは、
我らの歌で称えられるべき存在。
多くの姿を持つ者よ、
我らの上で
眩いばかりに輝け。
6 夜の闇のなかでも、
夜明けが訪れるときにも、
自ずから光を放つアグニよ、
その鋭き歯をもって、
邪悪な魔障どもを
焼き尽くせ。
7 あらゆる儀礼において
崇められるアグニよ、
大いなる賛歌が
高らかにうたわれるとき、
汝の助けをもって、
我らに恵みを与けたまえ。
8 常に勝利をもたらす富、
我らが願い求めるに
ふさわしき富を、
アグニよ、我らのもとへ。
あらゆる戦いのなかでも
決して敗れぬ力を。
9 アグニよ、汝の慈しみにより、
我らの生涯すべてを支える
富を授けたまえ。
我らが生き抜くための、
汝の恩恵を。
10 幸福を求めるゴータマよ、
心を込めて編み上げた
汝の歌を捧げよ、
尖った炎を持つ
あのアグニに向けて。
11 近くから、あるいは遠くから
我らを襲う者がいるならば、
アグニよ、その者を打ち倒せ。
我らを成長させ、
繁栄させておくれ。
12 鋭く、そして速きアグニ、
千の目を持つ彼は、
魔障を
遥か彼方へと追い払う。
彼こそは賛美にふさわしき、
高らかにうたう使者。
解説
この第79曲は、全12節という豊かな構成の中で、大自然の圧倒的なエネルギー(嵐、雷雨、稲妻)と一体化したアグニの猛々しい姿と、部族を護る絶対的な守護神としての実利的な祈りが見事に融合した讃歌です。
* 1–3節:非常に躍動的で色彩豊かな自然描写から始まります。アグニの炎を「黄金の髪」や「猛る大蛇」に例え、雨雲(黒き雄牛)の咆哮とともに走る稲妻として描くことで、天の恵みである「雨」をもたらす宇宙の循環を表現しています。
* 4–6節:神としての本質への賛辞がうたわれています。夜も朝も自ら輝くアグニに対し、その「鋭い歯(炎)」で魔障を焼き尽くすよう求める描写は強烈です。
* 7–9節:戦いにおける勝利と、生涯を支える永続的な「富」への切実な願いがうたわれます。アグニの恩恵こそが、部族が生き抜くための生命線であることが強調されています。
* 10–12節:作者である「ゴータマ」の名が再び登場し、心を込めて編み上げた歌を捧げることが宣言されます。「千の目(無数の火花や星)」を持つアグニが、悪を追い払いながら高らかにうたう使者として機能し、最高潮の盛り上がりのなかで締めくくられます。
全体として、原始的な自然への畏怖が、そのまま部族の防衛と繁栄のエネルギーへと昇華していく、極めてスケールが大きくドラマチックな名曲です。




