第1巻 第119讃歌 アシュヴィン双神讃歌(ウエディング篇)
1 私が(豊かに)生きながらえるために、
思考の如く迅速で、韋駄天の駿馬に引かれ、
千の旗印と、百の財宝をまとい、
惜しみなく恵みを注ぎ、
即座に願いを聞き入れ、広大な空間を授ける、
汝らのあの驚異の戦車を、
私は(聖なる)宴へと呼び寄せる。
2 その戦車が近づくやいなや、
私の賛歌は高く湧き上がり、
あらゆる世界(の民)がともに集って
称賛の歌をうたう。
私は供物を甘美に整えた。
いまや救い手たちがやってくる。
アシュヴィン双神よ、
ウールジャーニー(生命力の女神)が、
汝らの戦車へと乗り込んだのだ。
3 栄光を求め、男と男が激しくぶつかり合い、
活気にあふれ、限界を知らず、
戦いの勝利を渇望して対峙するとき。
アシュヴィン双神よ、汝らが
あの君主に極上の恩恵をもたらすとき、
汝らの戦車は、
確かにあの斜面の上に姿を現すのだ。
4 汝らは、奔流のなかで
必死にもがいていたブジュのもとへと赴き、
みずから戦車に繋がれた、あの空飛ぶ鳥たちで、
彼をその先祖たちの待つ地へと送り届けた。
強大なる者たちよ、
汝らは遥か遠き彼方の我が家へと向かった。
ディヴォーダーサに与えられた
汝らの大いなる加護は、あまりにも有名だ。
5 アシュヴィン双神よ、汝らが
栄光あるパレードのために繋いだ、あの戦車を、
汝ら自身の「二つの歌声」が、
その目的地へと向けて急き立てた。
その時、親愛を求めてやってきた、
あの高貴なる生まれの乙女(太陽の娘)は、
汝ら二人を「夫」として、
己を統べる「主」として選んだのだ。
6 汝らはレブハを暴政から救い出し、
アトリのために、
彼を包囲していた、あの燃え盛る火の穴を
冷たさをもって消し去った。
汝らはシャユの牛に、
潤いの乳を溢れ出させ、
ヴァンダナは、
その寿命を引き延ばされる加護を得た。
7 奇跡の仕掛け人、熟練の職人よ、
汝らは、長い年月の果てに
(まるで古びた戦車の如くに)
衰え果てていたヴァンダナを、
見事に元の姿へと修復した。
汝らは、大地の底からあの賢者を
驚異的な方法で蘇生させたのだ。
汝らを称えるこの者のために、
汝らの大いなる奇跡を、いまここで起こしたまえ。
8 汝らは、遥か遠き場所で
嘆き悲しんでいた彼のもとへと赴いた、
実の父親の裏切り(欺瞞)によって、
孤独に見捨てられていた、あの男のもとへ。
その時、汝らが授けた救いは、
天上の光に満ちており、
汝らが彼の傍らに立ったときのあの加護は、
まさに驚異そのものであった。
9 汝らのために、蜜蜂は
その甘美なる称賛の歌をうたった。
アウシジャは、ソーマの狂喜(トランス状態)のなかで
汝らを呼び求める。
汝らはダディアンチの精神(魂)を
引き寄せ、
その時、あの「馬の頭」が、
汝らに向けてその(秘密の)言葉を放ったのだ。
10 汝らはペドゥに、極上の、
そして白き駿馬を授けた、アシュヴィン双神よ。
あらゆる戦士を圧倒し、
戦場においては矢の攻撃をも寄せ付けず、
天を求め、
インドラの如くに有名で、
敵を打ち破る、あの無敵の馬を。
解説
119曲は、全10節という研ぎ澄まされた構成のなかで、アシュヴィン双神の「勝利のバフ(強化)」と、あの名高い「太陽の娘のウエディング・プロット」の決定的な瞬間が描かれる極上の曲。
特に5節。彼らがみずからの声で戦車をトップスピードに加速させた瞬間、高貴なる太陽の娘(ウシャスとも重なる光の乙女)が、彼ら二人を「自分の夫、主( Lords )」として選んで飛び乗るシーンの華やかさは、リグ・ヴェーダ屈指の華やかなプロットです。
* 1–5節:神の戦車がもたらす「圧倒的な栄誉と祝福」、そして「太陽の娘との婚礼のドラマ」が展開されます。 1節では、戦車が「千の旗印( thousand banners )」と「百の財宝」をはためかせて現れるという、スケールの大きい映像が描かれます。そして5節。彼らがみずからの二つの歌声( two voices )で戦車をドライブさせた瞬間、高貴なる太陽の娘が、彼ら双子を同時に「自分の夫( Husbands )」としてチョイスして戦車に飛び乗るという、神界の最高に華やかなロマンスプロットが描かれ、この讃歌の頂点を形作っています。
* 6–10節:お馴染みの救済ギミックが、非常に切れのある詩人の技巧で描写されます。特に7節の、年老いた賢者ヴァンダナを救うプロットを、「長い年月でガタが来た戦車(車体)を、完璧な技術で修復する( restored Vandana, like a car, worn out with length of days )」と表現するくだりは、古代アーリヤ人の高度な職人技術と、表現者としての洗練された構成力が光る秀逸な箇所です。さらに9節の、蜜蜂が神のために甘い歌をうたい、馬の頭を乗せた賢者ダディアンチがソーマの秘密を語るというディープなプロットを経て、10節のインドラが遣わした無敵のホワイト・ホースへと流れるビートは、無駄が一切ありません。
5節の、太陽の娘が双子の神を同時に「私の夫たち!」として選んで戦車に飛び乗るという、最高にファッショナブルでタブーを恐れないプロット。そして7節の、老いた人間の身体を「ガタの来たクラシックカーを修理するように」見事に再生させるという職人技。一目でその豪華絢爛な映像美とリズミカルな構成が脳内に飛び込んできます。




