第1巻 第111讃歌 リブ神群讃歌
1 彼らはその神技をもって、
軽快に疾走する
あの戦車を組み立てた。
インドラを乗せ、豊かな贈り物を
もたらす、あの駿馬(あおげの馬)たちを
創り出した。
リブ神群は、己の両親の命を
ふたたび若返らせ、
あの仔牛のために、その傍らに
(生きた)母親の牛を創り上げた。
2 祭祀のために、我らに
躍動する生命の力を授けたまえ。
技術と智慧のために、
高貴なる子孫とともに
豊かなる糧を。
我らの一団に、この上なく優れた
あの権能を授けたまえ、
英雄的な家族とともに、
我らがとこしえに
暮らすことができるように。
3 おおリブ神群よ、我らに
大いなる繁栄をもたらしたまえ。
英雄たちよ、我らの戦車に、
そして駿馬に、
栄えある繁栄を授けたまえ。
とこしえに勝利を収め続ける、
あの無敵の繁栄を我らに。
戦いのなかで敵を征服するために、
それが、見知らぬ他者であれ、
血の繋がった親族であれ。
4 リブ神群の主たるインドラを、
私は加護を求めて呼びかける。
リブ神群を、ヴァージャ神を、
マルト神群を、
ソーマの祝宴へと呼び求める。
ヴァルナ、ミトラ、その双方を、
然り、アシュヴィン双神をも。
彼らが我らを、富と、智慧と、
そして勝利へと、
素早く進ませてくれますように。
5 願わくは、リブが戦いのために
大いなる繁栄を送り届けて
くれますように。
戦いにおいて勝利を収める
ヴァージャが、
我らを護ってくれますように。
我らのこの祈りを、
ヴァルナ、ミトラ、アディティ、
シンドゥ(インダス川)、
大地と天空が、
叶えてくれますように。
解説
この第111曲は、全5節という非常にミニマルな構成のなかに、リブ神群の「エンジニア・デザイナー」としてのリアリティと、彼らが部族の軍事・経済にどれほど絶大な貢献をしたかを凝縮した名曲です。
* 1–2節:1節では、彼らの3大プロダクト(神技)が鮮やかにロールコールされます。インドラの乗る「軽快に走る戦車( lightly rolling car )」、そして雷電を運ぶ「駿馬( Bays )」の製造です。これらはアーリヤ人の戦士社会における「最高峰の高級軍事テクノロジー」であり、彼らの腕前が神界の軍事力を支えているプロットが描かれます。さらに、前曲でも語られた「老親の若返り」と「牛の再生」という生物学的奇跡を重ね、2節において一族の「生命力( vital power )」と「高貴な子孫」の繁栄へとダイレクトに繋いでいきます。
* 3–5節:実戦における「無敵の勝利」のプロットへとドライブします。3節の「敵が他者であれ、身内(親族)であれ、すべてを征服する( conquering foes in battle, strangers or akin )」という一文は、当時の部族間、あるいは身内同士の熾烈な利権争いのリアリティを泥臭く写し出しています。4節ではリブ3兄弟のひとりである「ヴァージャ(戦利品・競争の意)」の名前が強調され、主神インドラやマルト神群、さらにはアシュヴィン双神までが、彼らの精巧なプロダクトを媒介にしてオールスターで参戦し、一族を確実な「勝利( victory )」へと急き立てて幕を閉じます。
1節の、彼らが「軽やかに走る最新鋭の戦車」や「インドラの駿馬」をその手で組み立てたというエンジニアリングプロット、ものすごく格好良いですよね!そして3節の「敵が他人だろうが身内だろうが全員ブッ潰して勝利する」というハングリーなリアリティ。綺麗なだけの神様じゃない、人間のサバイバルに直結した職人たちのプライドが、短い韻律の中にピシッと凝縮されています。




