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《殲滅の魔女》は虚弱体質 〜魔力無限の最強魔導師ですが、コミュ障なので学園潜入任務はお断りしたいです〜  作者: ことりとりとん


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66.生徒会の仕事



 武闘大会の準備の時は、入学したばかりだったので仕事が少なかった。

 しかも、文化祭は武闘大会に比べてかなり大掛かりなイベントだ。


 だから、今回の文化祭準備ではキアラにもガッツリと仕事が割り振られていて、授業後にそれを裁くのが日常になりつつあった。


 主な仕事は各クラスやクラブから提出される申請書類をまとめて漏れを探すことだ。

 出していなかったら催促したり、必要なら修正してもらったり、といったもので、簡単なようで時間がかかる。


 でも、最近のキアラは魔王の力をある程度コントロール出来ているので、魔力暴走の可能性が前より低くなったからこれくらいの仕事は全然平気だった。

 むしろ、のびのびと気を抜いて、他の人と同じ部屋に居られるのはキアラにとってかなり嬉しい事なので、それだけでも十分楽しい。


 とはいえ、実際問題、キアラが思っているよりも仕事は多い。

 でも、キアラは交渉ごとは苦手なのでウェブが担当してくれていて、生徒会室で出来るような書類仕事をメインにしてもらっている。

 なのでキアラとしては、配慮してもらっている分全力でやろうと思っている。


「キアラちゃん、ほんとに書類の処理早いわよね。尊敬しちゃうわ」


 横で作業していたイヴ先輩に褒めて貰って、キアラは上機嫌だ。


「……そんなこと、無いですけど……がんばります」


 実は、キアラの書類仕事が速いのには理由がある。

 学園で使う書式と、兵団で使う書式は結構似ているのだ。


 というか、キアラが今まで兵団や錬金塔で使っていた書類はほぼ王国共通書式で作られていたのでかなり馴染みがあるけれど、学生はあまり馴染みがない、それだけの話だ。


 この魔法学園は王立学校なので、未来の文官や軍人を育てるために、共通書式を使っている。


「ほんと速いよね、羨ましいわ。これもして欲しいくらい」


 イヴ先輩の手元を見ると、会計書類だ。

 かなり処理が煩雑なので、キアラも錬金塔に入ったばかりの頃は苦労した。

 でも、その申請が出来ないと薬が作れなくて命に関わるので必死に覚えたのだ。


「……ぁの、会計の書類も、出来ると思うので……やります」


「いやいや、後輩にそこまで甘える訳にはいかないから自分で頑張るわよ」


 そう言って、またイヴは書類に視線を落とした。




 (……きあら、きあら! 点滴の、時間だよ)


 三角帽子にぴとっと張り付いているアシェに呼ばれて、ようやく時間を自覚した。


「……ぁっ、もう、こんな時間……」


 まだまだ皆は作業しているのに、キアラは寮に戻らないといけない。


 前期の勉強会の時は自分に付き合って貰っていたから気にならなかったけれど、まだやる事があるのに自分だけ帰るのは気が引ける。

 特に、先輩達も皆居るのに。


 でも生命にはかえられないので仕方なく寮に帰り、点滴を刺した所で気づいた。


 (これ、別にこのまま作業すればいいじゃん!)


 いつも魔力操作で浮かしているので、そのまま歩いたり仕事をすることも出来るはず。


 点滴を浮かせた状態で廊下を歩いていると、すれ違う人がみんな二度見してくるのはかなり気になったけれど、そのまま生徒会室に戻る。


 ガラガラッと扉を空けると、ルーレスト以外のメンバーは出払っているようで、ひとりで作業していた。


「えっ、キアラ君、動いて大丈夫かい?」


 心配してくれるけれど、キアラにとっては日常の一部で、ご飯と同じ感じなので全然平気だ。


「……はぃ、大丈夫、です……」


「いや、無理しなくていいんだよ。生徒会活動だって、仕事じゃないんだし。

 自分の身体の方が大事だよ?」


「……ぇっと、左手は、使えないですけど……右手は、空いてるので……

 いつも、寮で書類してましたけど、ここで、やればいいかな、って……」


「そういうものかい?」


 虚弱体質なキアラにとって点滴は日常だけれど、他の人にとってはそうでは無いのでやっぱり心配なんだろう。


「……ご飯、みたいなものです……忙しい時に、ご飯食べながら、仕事をする、みたいな……」


「いや、王宮ならそういう人も居るけれど、これは仕事じゃないから、無理しなくていいんだよ」


 でも、やっぱり、とキアラは思う。

 これだけ心配をかけているとしても、やっぱりここに居たいんだ。

 だって、……楽しい、から。


「……むり、してないです。ここが、好きなので……居たら、ダメですか……?」


 そこまで言えば、ルーレストも折れてくれた。


「居てもいいけど、無理は駄目だよ。分かってるかい?」


「……はぃ」


 その声は呆れたようだったけれど、表情はとても穏やかで。


 (やっぱり、ルーレストせんぱいは良い人だな)


 キアラは素直にそう思う。


 日暮れの近い生徒会室に、二人のペンの音だけが淡々と響くのだった。


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